「自分だけハッピーになっても意味ないなって」元ブルゾンちえみの藤原史織が、政治や社会を語る理由

    今年3月に「ブルゾンちえみ」を卒業し、本名で活動を始めた藤原史織さん。社会問題や政治について発信を続ける理由を聞いた。

    男をはべらせ、余裕たっぷりの表情で人生を説くキャリアウーマンのネタで、一世を風靡したお笑い芸人「ブルゾンちえみ」。

    その芸名を今年3月に卒業し、本名で活動を始めた藤原史織さんのInstagramには、社会問題や政治について学びながら、「一緒に勉強していこう」と呼びかける等身大の姿が投稿されている。フォロワーは220万人を超える。

    7月7日には、若者と政治家がインスタライブで語り合うイベント「Instagramで政治家と話そう」(Facebook Japan主催、イチニ株式会社企画協力)で進行役を務め、若い世代と政治を近づけるためにできることを議論した藤原さん。

    積極的に発信を続ける理由を聞いた。

    芸人になって変わった感覚

    ーーイベントの中で、政治や社会問題に関心を持つようになった時期は、「ブルゾンちえみ」として活動を始めた時期と重なると話していました。それはどうしてですか?

    私も「ブルゾンちえみ」としてバーンと行くまでは、お笑いでお金を稼ぐってことはなくて、アルバイトで稼いで生活していたんですよね。

    それが、2017年からお笑いでお金を得られるようになった時に、自分の生活とかお金の感覚が、地元の友達や幼馴染の生活とは違うものに変わっていくのを感じました。

    一生懸命働いている人が「こんだけ働いても、これだけしかもらえないんだ」という話とか、子育てしている人には待機児童の問題とかもある中で、「自分はお笑い芸人の道を選んで、自分は楽しんでるんだからいいでしょ」とは思えなかったというか…。

    自分だけハッピーになっても意味ないなって思ったんです。

    悩んでる人に対して、「じゃあ、あなたもお笑い芸人になって、ブレイクを目指したらいいよ!」なんて話でもないじゃないですか。主婦になっても、会社に勤めても、それぞれが選択した人生で、それぞれ幸せを得られるべきだよなと。

    でも実際は、みんなどこかアンハッピーで、胸を張って「幸せです!」とは言い切れない、何かモヤっとした感じの人が多いなと思ったんです。それは多分、たまたま私の周りだけがそうだったわけじゃないと思うんですね。

    前にタクシーに乗った時に、運転手さんが「何十年もタクシーの運転手をやってきましたけど、街の人たちも雰囲気が変わってきました。みんな暗いんですよ、下向いて歩いているというか、元気がないね」と言っていて。

    確かにSNSなどを見ていると、みんなが人の不幸をちょっと栄養にしているというか、みんなでそこに群がって、この人より自分はマシだ、自分はまだいい方だってことで、元気を出しているような気がして。

    DMで嫌なメッセージを送ってくる人たちも「ストレスが溜まってるんだろうな」って思ったり。

    みんながそれぞれハッピーにならないと、どんどん悪い循環に入って、日本がどんどん暗くなっちゃいそう…と考えた時に、やっぱり社会全体の仕組みを変えるためには政治に参加することが大事なんだ、という考えに行き着きました。

    私も「結局、政治とか国会ってお金の話しかしてないんでしょ?」と思っていたりしましたが、そのお金をどこに、何のためにあてるかで、色々な人が抱えている問題を解決していくことができるから、おろそかにしちゃダメだと思うようになりました。

    DMで「藤原さんはどう思いますか?」

    ーーイベント内で紹介されたアンケート(回答者1000人)では、67%の人が政治は「身近でないと思う」と答えていました。「若者の政治離れ」という言葉も度々持ち出されていますが、藤原さんはどのように感じていますか?

    私のInstagramには、政治や国のこと、社会問題に関心のある若い子たちからのDMが結構多いです。

    インスタを使っている世代なので、10~30代の女子が多いのかな?と思うんですが、そういう人たちの思いは、私にはビシビシ届いています。政治を身近には感じられなくても、リアルに考えている人はたくさんいると思います。

    届くメッセージの内容はもう本当に人それぞれです。

    主婦で子供がいて、やりたいことがあるけどお金の問題があってできません…という相談とか、環境問題やジェンダー、教育、難民問題などそれぞれ関心があるテーマについて、「藤原さんはどう思いますか?」という質問とか、本当に色々です。

    そうやって、身の回りにある自分が関心のあるテーマに着目することが、政治や選挙への関心を持つ一歩にもなるのかなと感じています。

    緊張感を持ちながら発言

    ーー芸能人にとって政治的な発言をすることは、ファンから批判を浴びたり、仕事に影響したりするリスクがあると言われることもあります。「ブルゾンちえみ」を卒業したことで、発信しやすくなった部分もあるのでしょうか?

    「ブルゾンちえみ」の時と「藤原史織」になってからとで、大きな違いはあまり感じていません。

    藤原史織になってからは、環境問題をはじめとする様々な現場に行って、そこで活動している人たちの話を聞いてみたいなとか、自分で取材して、YouTubeに動画を上げたり、文章にまとめて発信してみたいなと考えていました。

    新型コロナウイルスの影響でまだ実現できていませんが、ブルゾンのままで今みたいに時間があれば、そういうことをやってたかもしれないです。でも、時間がなかったので。

    なので今、比較的自由に発信できているのは、時間の余裕のおかげだと思います。

    とはいえ、何かを発言する時はたくさん情報を調べ、自分の考えはこうだっていうことを整理してから発信するようにしています。何か反論されたり攻撃されたりしても、自分の意見を言い返せるように。

    だから、何か自分の意見を言う時は、緊張感を持ちながらやっています。

    まずは何ごとも「知ること」から始まると思っています。私も勉強中です。なので、「一緒に勉強していこう!」という気持ちで、伝えていけたらと思っています。

    イベント「Instagramで政治家と話そう」の様子はこちらから

    藤原史織(ふじわら・しおり)1990年生まれ、岡山県出身。2017年にお笑いユニット「ブルゾンちえみwith B」としてブレイクし、「35億」というフレーズで同年の新語・流行語大賞トップテンにランクイン。2020年3月で芸人を卒業し、本名で活動を始めた。SNSを活用し、環境問題やSDGsに関する情報発信などを続けている。