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性同一性障害の経産省職員に「女性用トイレの使用を認めない」のは「違法」。国に賠償命令

戸籍上の性を変更しなければ、女性用トイレを使うことを認めないとした経産省の対応が、職員の人格権を否定する不当な差別であるかなどが争われた。

性同一性障害で、在職中に女性職員として働き始めた経済産業省の職員が、「戸籍上の性を男性から女性に変更しなければ、女性用トイレの使用は認めない」などとした同省の対応は、人格を否定する不当な差別だと訴えて、国に損害賠償を求めた裁判が12月12日、東京地裁で判決を迎えた。

江原健志裁判長は、性同一性障害の職員が「真の性自認」に基づいて生活するためには、女性用トイレを自由に使用することは必要不可欠だとして、経産省の処遇は「違法」だと認定。国に約130万円の損害賠償を命じた。

「職場でも女性職員として働きたい」

時事通信

判決後に会見を開いた、原告の経産省職員

陳述書や原告側の弁護団によると、裁判を起こした職員は、1990年代中頃に経産省へ入省した。

その数年後に性同一性障害と診断され、ホルモン治療を開始。

女性として支障なく社会に適応できていると実感した2010年ごろに、「職場でも女性職員として働きたい」と、当時の上司や人事に申し出た。

裁判では、戸籍上の性を出生時の「男性」から「女性」に変更しなければ、女性用トイレを他の職員と同じように使うことは認めないとした経産省の対応が、職員の人格権を否定する不当な差別であるか、などが争われた。

国側の主張に「合理性はない」

Saori Ibuki / BuzzFeed

国側は当初、準備書面において「性衝動に基づく性暴力の可能性が否定されているわけではなく、いまだに女性に危害が加わる危険性が完全に払拭されたとはいえない」と主張していた。

性別適合手術を受けて、戸籍上の性を変えるまでは「障害者用トイレ」を使ってもらう、あるいは事前に同僚の女性職員に対して「カミングアウト」し、女性用トイレを使うことへの同意を得る必要があるとした対応は、合理性があると主張していた。

一方、原告側は「性別適合手術を受けていなければ、(職員が)女性用トイレで女性職員に性暴力を犯す可能性があるという主張自体が、性同一性障害者に対する悪質な偏見に他ならない」と反論。

女性用トイレの利用を制限することは、職員の人格権を侵害し、憲法が掲げる「法の下の平等」や、障害者差別解消法に違反していると訴えた。

経産省の対応「合理性を欠く」

裁判長は判決で、他の女性職員への「相応の配慮は必要」ではあるものの、原告職員が女性用トイレを使用することを直ちに制限することは不当だと判断。

原告職員が、女性として認識される可能性が高いことや、トイレ内で性器を露出する状況が考えにくいことから、経産省が想定していたトラブルが生じる可能性は「客観的に低いことを、経産省も把握していたはずだ」と述べた。

その上で、施設を管理する経産省に一定の裁量を認めたとしても、戸籍を変更せずに女子トイレを使用するならば、同僚職員の合意を得る必要があるとする処遇も、「合理性を欠く」とした。

性別適合手術を「要件」とする制度に批判

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日本で戸籍上の性を変更するためには、卵巣や子宮、睾丸を摘出する「性別適合手術」が必要な要件の一つとなっている。

裁判を起こした職員は、健康上の懸念から手術が受けられず、結果的に戸籍変更を断念した。

国際的には、性別適合手術を受けるか否かは、本人の意思が尊重されるべきだという考え方が広がっており、日本でも手術を戸籍変更の要件から外すよう求める動きが進んでいる

ヒューマン・ライツ・ウォッチは昨年、戸籍上の性を変更する条件として、性別適合手術を当事者に課すのは「日本が負う人権上の義務に違反するとともに、国際的な医学基準にも逆行する」と強く批判する声明を発表している。

原告「社会情勢を鑑みると妥当」

原告はBuzzFeed Newsの取材に、「喜ばしくもありますが、民間企業では性同一性障害のある社員を、他の女性社員と同様に扱うことは、ずっと行われてきたこと。社会情勢を鑑みると妥当な判断だと思います」と話した。

経産省は「一審で国の主張が認められなかったと承知しています。控訴するかどうかは判決を精査した上で、関係省庁とも相談の上、対応することとしたい」とコメントした。

Contact Saori Ibuki at saori.ibuki@buzzfeed.com.

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