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「私たちが抱えてきた困難や葛藤が、“余計なもの”ってどういうこと?」同性婚訴訟、原告らが東京地裁に抗議

同性婚の実現を求める「結婚の自由をすべての人に」訴訟。原告の思いを直接、法廷で聞く必要はないという判断を東京地裁が示していることに、原告側が抗議している。

同性同士の結婚を認めない現行の法律は、「法の下の平等」や「婚姻の自由」を保障する憲法に反しているとして、全国各地の同性カップルが国を訴えた「結婚の自由をすべての人に」訴訟。

東京、名古屋、大阪、札幌、福岡の5地裁で裁判が続くなか、原告の思いを直接、法廷で聞く必要はないという判断を、東京地裁(田中寛明裁判長)が示していることに、原告側が抗議している。

原告と弁護団は12月8日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開き、「同性同士の結婚が認められていないことで、原告個人の尊厳が傷つけられたか否かを、原告がこれまでの人生でどのような苦悩を抱えてきたかを聞かずに判断することは、絶対にできません」と訴えた。

これまでの訴訟の経緯

本人尋問とは、裁判を起こした原告本人が、法廷で当事者双方の代理人弁護士や裁判所からの質問に答えるもの。

話した内容は、法的な証拠として判決を決める際の判断材料となる。原告が法廷で話す機会として、他には「意見陳述」などがあるが、時間は数分と短く、話した内容は証拠にはならない。

弁護団によると、提訴から約2カ月経った2019年4月、裁判の進め方について話し合う「進行協議」の中で、田中裁判長から「原告の個別事情は、本件を判断する上で夾雑物(余計なもの)である」という発言があり、尋問を実施しない方針が示された。

その後も、原告側が本人尋問の必要性を繰り返し主張したものの、12月2日に開かれた期日で改めて、「尋問の必要性が認められない」との見解が示されたという。

裁判長は、今回の裁判では「同性婚が認められていないことが憲法違反であるかどうかという、法律のあり方が一般論として問題になっているため、原告の個別の事情は関係しない」などと説明したという。

法律の「立法事実」を問う

一方、原告側はこれに強く反論している。

原告側弁護団の説明によると、日本の憲法訴訟は、ある法律が違憲かどうかを、具体的な事件抜きで抽象的に判断する方式を採用していないとされ、原告となる当事者の具体的な被害や訴えを通じて、判断する仕組みをとっている。

今回の訴訟でも、原告側の主張は「同性同士の結婚を妨げられたことで、権利を侵害され、損害を受けた」という内容で、国に対して損害賠償を請求している。

こうした被害の有無を認定するためには、原告個人の経験の検証を避けることはできないはずだと、原告側は訴えている。

弁護団の上杉崇子弁護士は、法律の基礎となる「立法事実」は、その法律が必要とされる個々人の事情や社会的・経済的事実を指しており、ある法律が合憲か違憲かを争う裁判では、その検証が重要だと指摘する。

「例えば、同性を好きだと初めて気付いた時に、周囲に知られたら拒絶されるのではないかと恐怖を抱いて、性的指向を隠して生きて続けていたこと。結婚できないゆえに『親に申し訳ない』『死にたい』という思いを抱き続けたこと。周囲に同性パートナーとの関係を認めてもらえなかったこと」

「各原告の実体験から、現行民法がいかにして多くの同性愛者を傷つけ、その傷がどれだけ深いものであるかという社会的・経済的事実を、裁判所に伝えたいのです」

普通の家族としての生活が…

「結婚の自由をすべての人に」訴訟が行われている東京以外の裁判所では、通常通り尋問が行われる見込みだという。

札幌地裁ではすでに8月に実施され、裁判官から原告に対して「性的指向を変えることはできないのか?」という質問が出る場面もあった。

次回の東京地裁での裁判は、2021年2月24日。この日、尋問の必要性の有無が決まる見込みだ。

この日に向けて、原告側はオンラインで署名活動を行い、尋問の必要性を訴えていくという。

【拡散希望】 東京地裁は、#結婚の自由をすべての人に 訴訟の審理において、原告の本人尋問を「必要ない」とする姿勢を示しています。 そこで、原告本人の声を聴いてから判決するよう裁判所に求める署名活動を始めました!ご協力お願いします! #本人の声を聴け https://t.co/4fQyMKl1Cc @change_jp

会見に出席した原告の西川麻実さんは、パートナーの小野春さんやそれぞれが異性と結婚していた時に生まれた子どもたちと、10年以上にわたり家族として共に暮らしてきた。

「私たちには、普通の家族としての生活が日々あるばかりなんですけど、私と小野の結婚が法律で認められていないために、法的な保証がない生活を送っています」

「ひっそりと私たちと同じように暮らしている人が、日本人何千人、何万人といるでしょう。それなのに、私たちが抱えてきた困難や葛藤が『夾雑物』である、邪魔もの、余計なものだとは一体どういうことなのでしょうか?」と、西川さんは会見で怒りをにじませた。

「変わってほしい社会の現実があることを、自分たちの声を、届けさせてください」