新型コロナウイルスによる影響が続くなか、LGBTなど性的マイノリティの当事者も様々な不安を抱えている。
5月14日には、支援団体が国に要請書を提出し、救急医療の現場や行政の支援制度において、性的マイノリティを差別せず、権利を守った対応をするよう訴えた。
当事者の抱える不安をアンケート
要請書を提出したのは、同性婚の実現に向けて活動する一般社団法人「Marriage For All Japan」。同性婚の法制化を求めて、国を一斉提訴した集団訴訟に携わる弁護士などを中心に活動している。
同団体では4月6日~30日にかけて、新型コロナウイルスの影響で性的マイノリティの当事者が直面している不安や困難について、ネット上でアンケート調査を実施した。
調査には236件の回答が寄せられ、中でも「入院や(救急搬送などの)緊急時に連絡が取れるか、(医療機関などで)家族として扱ってもらえるか不安」という声が87件(約36%)に及んだ。
日本では同性カップルの結婚が認められていないため、同性パートナーやパートナーの子どもと家族として暮らしていても、法律上は「他人」とみなされてしまうケースが多々ある。
自分や家族に症状が出た場合に、「法的には家族ではないから」という理由で付き添うことができなかったり、検査の結果の説明や治療方針の同意・決定の場に参加できなかったりするのではないか、という不安を抱えている当事者が多くいることがわかった。
さらに、新型コロナウイルスの治療や対策における医療機関や行政の発表、メディアの報道などによって、思わぬ形で家族や職場、学校に自身の性自認や性的指向について知られてしまう「アウティング」を恐れる声も多く寄せられた。
政府に4つの要請
こうした声を受け、要請書では大きく次の4点について政府に対応を求めている。
1. 救急搬送、PCR検査の実施や結果の告知、入院や治療方針の説明・同意・決定などの場において、同性パートナーを法律上の夫婦と同じように家族として扱うこと
2. 政府や地方自治体が行う援助や助成制度において、同性カップルの家族が性的指向や性自認を理由に、不利益を受けることがないようにすること
3. 新型コロナウイルス対策として、感染者や感染ルートの調査・情報の公表などをする際には、プライバシーの侵害や差別・偏見を助長しないよう配慮すること
4. 日本社会で根強い差別や偏見に直面している性的マイノリティやその家族が、差別されたり、人権を侵害されたりすることのないよう、内閣総理大臣がメッセージを発信すること
要請書は安倍晋三・内閣総理大臣、加藤信勝・厚生労働大臣、高市早苗・総務大臣に宛て、総務省と厚労省の担当者に手渡しで提出した。
同団体理事の松中権さんは「カミングアウトしていない当事者が多くいる中で、例えば濃厚接触者になった時に、自分の行動範囲や誰と一緒にいたかが公表され、自分が望まない形で、自分の性的指向や性自認について知られてしまうのではないかと、多くの人がとても不安に感じています」と訴えた。
同団体の時枝穂さんは「各自治体が同性カップルを法的に家族として認めるパートナーシップ制度が広がっていますが、実際にどう対応するかは医療機関任せになっており、パートナーシップ制度がある自治体とない自治体の間にも明確な差が生まれてしまっています」と指摘。
「子育てしている同性カップルの場合は、子どもの治療のために血縁のないパートナーが病院に行った場合に、『親を連れてこい』と言われて対応してもらえない場合があります」
「新型コロナ以前からもこうした問題は続いていることですが、この状況下で一層不安を抱えている当事者が多いということが、今回のアンケートで浮き彫りになりました」と語った。
「法的な裏付けがないと…」
要請書を受け取った総務省の高原剛・自治行政局長は「給付金に関しては不利益がないような制度になっているはずだが、改めて担当課に周知する」と回答した。
厚労省の日下英司・結核感染症課長は、「医療現場における同意や、どこまでが親族なのかというのはより厳格になりつつあるので、その関係でやっぱり法的な裏付けがないとなかなかつらい面はあると感じている」とコメント。
感染者やその周囲に関する情報の取り扱いについては、「感染症はその人の属性に関係なく、偏見やいわれのない差別にさらされることが多いので、公表する際は気をつけている。その人の性的指向や性自認に関係なく、取り組んでいかないといけないと考えている」と語った。
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(サムネイル:時事通信)
Marriage For Allのアンケートで「入院・緊急・万一の時に連絡が取れるか不安」と答えた件数は、正しくは87件(約36%)でした。資料に修正があったため、訂正いたします。