• lgbtjpnews badge

「国の主張には差別感情が存在する」同性婚訴訟が東京でも判決へ。これまでの裁判のポイントは

同性婚の実現を求める「結婚の自由をすべての人に」訴訟で、東京第1次訴訟が5月30日に結審した。判決は11月30日に言い渡される。これまでの国側と原告側のポイントをまとめた。

法律上の性別が同じふたりの結婚を認めないのは「憲法違反」だとして、日本各地の当事者が国を訴えた「結婚の自由をすべての人に」訴訟。

全国5地域の地裁・高裁で裁判が続くなか、東京地裁で行われている第1次訴訟の審理が5月30日、すべて終結した。判決は11月30日に言い渡される。

札幌地裁の「違憲判決」に続いて、東京・大阪も判決へ

「同性婚訴訟」とも呼ばれるこの裁判は、東京・大阪・名古屋・札幌・福岡の5地域で続いており、東京では2019年2月に提訴した「第1次訴訟」と、2021年3月に追加提訴した「第2次訴訟」という2つの裁判がそれぞれ行われている。

昨年3月には札幌地裁が、同性カップルのみ結婚によって得られる法的な効果を享受できないのは、憲法14条に反する「不当な差別」だと認めた違憲判決を下し、「画期的な判決」だとして注目を集めた。

しかし、婚姻の自由を保障する憲法24条には違反していないと判断するとともに、国が必要な法整備を怠る「立法不作為」があったとまででは言えないとして、原告の請求は棄却した。

6月20日に予定されている大阪地裁の判決や、今回結審した東京地裁の判決では、原告のこうした主張がどこまで認められるか、注目が高まっている。

国側の主張「差別とは言えない」

5月30日に行われた最終口頭弁論では、原告側と国側の双方が最終準備書面を提出し、これまでの主張を総括した。

国側の主張の中で、特に注目すべきポイントは次の5点だ。

・憲法における「婚姻の平等」は異性カップルのみを対象としていて、同性カップルは「想定していない」

・同性カップルは「自然生殖の可能性が認めらないこと」や「社会的な承認が存在しているとは言い難い」ことから、異性カップルと同じようには扱えない

・現行の法律は、結婚の要件として「特定の性的指向であること」を求めているわけではなく、同性愛者も異性と結婚できるので、性的指向に基づく差別があるとは言えない

・男性でも女性でも異性同士であれば結婚ができて、同性同士であれば結婚できないので、性別に基づく差別があるとは言えない

・結果として、同性愛者が望む相手と結婚できなくても、それは「事実上の結果ないし間接的な効果」に過ぎず、差別的取り扱いとは言えない

「到底正当化される余地はない」

一方、国側のこうした主張に対して、原告側は次のように反論している。

・「婚姻の自由」とは、結婚を望むふたりがお互いの合意だけで結婚できる権利であり、「すべての人が個人として尊重され、その人らしい幸福追求をする上で不可欠」

・性的指向や性自認といった自らコントロールできないものを理由に「社会の重要な制度から排除することは、その人の人格そのものの否定」であり、個人の尊厳を著しく毀損するもの

・国が主張するように、結婚制度の目的は「子を産み育てながら共同生活を送るという関係に対して法的保護を与えること」ならば、同性カップルも子どもを産み育てながら暮らすことはでき、すでにそうした家族は存在し、これからも増え続けていく

国の主張は「非論理的」

原告側の東京弁護団共同代表の寺原真希子弁護士は、期日後の報告会で、国の主張は「非論理的」だと批判した。

「国は自然生殖の保護を強調していますが、それであれば生殖の意思や能力のない異性カップルも結婚ができないと主張するのが筋。でも国がそうした主張はしていないのは、それが異性カップルへの許されない差別と批判されることを理解しているからです」

「なのに同性カップルには躊躇なくその主張をできるのが、異性カップルは結婚で差別されることがあってはならないけれど、同性カップルならいいという差別感情が根本に存在するからだと、私たちは主張しました」

「国が足掻こうとすればするほど、その主張は論理性を失われて、その根底にある差別感情があらわになる。その悪循環を断ち切るためには、同性カップルが婚姻できないことは憲法が認めない差別だと正面から認める他ありません」

実生活にあった法律、判決を

また、法廷では原告8人のうち4人が意見陳述し、提訴から約3年3ヶ月経った現在の心境や、それぞれが日々している葛藤、どのような判決を望むかなどについて改めて思いを語った。

裁判後、陳述した廣橋正さんは「性的指向や性自認によって結婚できないことで、たくさんの不利益を被っている人たちがいる。平等の権利を求めたい」と語った。

同じく小野春さんは「『同性婚』というものがほしいわけではなくて、婚姻の平等がほしいと思っています。もちろん結婚しなければいけないということでは全くないし、あくまで選べることが大事なんだと思っている」と強調。

「私たちは今家族としてずっと暮らしてきていますけど、家族だというふうに法的には扱われない。実生活にあった法律を作ってほしい。そうした判決を裁判官が出してくれることを信じています」と期待を込めた。