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私も、誰かが「嘘をつかなければならない社会」の一員だった。同性婚訴訟、新たに8人が国を提訴

同性婚の実現を求めて、法律上同性のカップルが一斉に国を提訴した「結婚の自由をすべての人に」訴訟。8人の原告が新たに東京地裁で裁判を起こした。

法律上、同性同士のカップルの結婚を認めない現行の制度は憲法に反するとして、全国各地の当事者が計5地裁で国を訴えた「結婚の自由をすべての人に」訴訟。

同性カップルのみ婚姻制度を利用できないのは「憲法違反」だと判断した札幌地裁の判決に続き、新たに8人の原告が3月26日、東京地裁で裁判を起こした。

新たな原告の中には、トランスジェンダーやパンセクシュアル(全てのセクシュアリティを恋愛対象とする人)の人も、初めて加わった。

同性婚の問題はゲイやレズビアンなどの「同性愛者」に限らず、性的マイノリティとして日本で生きる多くの人の人生に関わる問題だとして、国に訴えていく予定だ。

トランスジェンダーやパンセクシュアルの原告も

Saori Ibuki / BuzzFeed

今回新たに裁判を起こしたのは、40~50代の8人。レズビアンの人やゲイの人、パンセクシュアルの人もいれば、自分のセクシュアリティをそうした言葉で表現しないことを選択している人など、様々だ。

しかし、全ての原告に共通しているのは、人生を共にしているパートナーが法律上「同性」のため、日本では結婚が認められていないということだ。

これまで原告側は、東京や大阪など全国5地裁で続いている裁判において、同性婚を認めない現行の制度は「婚姻の自由」や「法の下の平等」などを保障する憲法に違反していると主張してきた。

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札幌地裁(武部知子裁判長)は、原告側のこうした主張に対して、性的指向は「人の意思によって選択・変更できるものではない」と認め、同性カップルのみ婚姻制度から得られる法的効果を享受できないのは、「合理的な根拠のない差別」だと判断した

原告の請求自体は棄却されたものの、司法による違憲判断を求めて、国を相手取った裁判を始めた原告たちにとっては、実質的な勝訴とも言える判決だ。

札幌地裁の判決を「追い風に」

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「法律上、同性同士の人にも婚姻を認めるべきだとの声は、これまでにないくらい強まっています」。弁護団の沢崎敦一弁護士は、3月26日の提訴後に開いた記者会見でそう語った。

「札幌地裁が法律上、同性同士の結婚を認めない現行の民法・戸籍法は憲法に違反すると断じた、画期的な判決を言い渡しました。けれども、法改正がいつになるかは全く見通しが立っていません」

「現状、ふたりがどんなに強く望んでも、愛する相手が法律上同性の場合は、婚姻を認めないという対応を国は続けています」

「札幌地裁の判決を追い風に、法律上同性同士のカップルの結婚を認める法改正が1日でも早く行われるよう、8人の新たな原告とともに、第二の訴訟の提起に踏み出すことにしました」

異性愛カップルなのに結婚できない

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今回、東京地裁で新たに始まる裁判では、これまで続いてきた裁判と同じ主張をしていくと共に、同性愛か異性愛かという「性的指向」に基づく差別だけでなく、「性自認」に基づく差別についても主張していく。

例えば、原告に加わったトランスジェンダー男性の一橋穂さん(40代)と女性パートナーの武田八重さん(40代)の場合、ふたりは異性愛カップルだ。

しかし、一橋さんの戸籍上の性別が出生時に割り当てられた「女性」のままのため、法律上は「同性カップル」と見なされてしまい、結婚ができない状況が続いている。

トランスジェンダーの人が戸籍変更をする場合、日本では性別適合手術を受けることが要件の一つとなっている。手術は身体的・金銭的負担も大きく、手術を受けない、あるいは受けられない人も少なくない。

一橋さんは「手術は身体に大きな負担がかかるもので、受けるかどうかは自分で決めたい。それなのに、戸籍変更の要件とされている現状は、手術を強制されているように感じる」と言う。会見ではこう語った。

「日常生活の些細なことはもちろん、家のローンのこと、税金のこと、社会保障のこと、病院での付き添いのこと、相続のこと。法律上の配偶者であればできることを数え上げればキリがありませんが、その一つの一つの権利が私たちにはありません」

「ですが、私たちふたりの生活は、戸籍上同性同士であるというだけで、それ以外はごくありふれた夫婦としての生活です」

「トランスジェンダーである私にとって、パートナーと作る過程は、心の底から安心できる場所であり、私が自分らしく生きるために必要不可欠な場所です。私が、幸せになるために選び取った、大切な居場所です」

「このような関係を『婚姻』と呼ぶのではないでしょうか」

嘘をつかなければならない社会

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原告に加わった福田理恵さん(40代)は、同性パートナーの藤井美由紀さん(46)と生活を共にしている。

福田さんは「長い間、女性に恋愛感情を抱く自分を隠して生きてきた」。しかし、40歳の時にがんを患ったことが転機となり、残りの人生はパートナーと結婚して、自分らしく生きたいという思いが込み上げたと語る。

「がんを患った私を(パートナーの)藤井は全力で支えてくれました。全身が痛くて動けない時は、身の回りの世話を笑顔でしてくれましたし、長く生きられないのではないかと不安に駆られた時は、大きな笑いと元気いっぱいの励ましで、暗闇から救ってくれました」

しかし、福田さんが治療を続ける間も、ふたりは病院に対して互いの関係を隠し、「いとこ」同士だと嘘をついた。病院から、家族しか手術に付き添えないとの案内を受けたからだ。

「伴侶という言葉以外では言い表せない絆があるパートナーのことを、病院にはずっと『いとこ』と嘘をついてきました」

「嘘をつくことで、私自身もセクシュアルマイノリティが嘘をつかなくてはならない社会の一員となっていることに息がつまりました」

当たり前の幸せを求めて

同じく原告のケイさん(40代)は、家族や職場で自身のセクシュアリティやパートナーとの関係を公にしていない。

「早く結婚しないのか」という圧力から逃れるために、同じ悩みを持つゲイ男性と婚姻関係を結んだ経験もあるが、「両親など自分の大切な人たちに嘘をついているという罪悪感」に苦しめられたという。

「私は人生の半分以上、大切な人のことを隠し、多くの不本意な嘘を重ねて生きてきました。それだけに、これからの世代には、私のように窮屈な人生を歩んでほしくありません」

パートナーの河智志乃さん(49)と共に原告となった鳩貝啓美さん(55)は「私の願いは、人生で直面する様々な場面で、パートナーを守り、守られたいということです。人生の伴侶と、安心して生活できるという当たり前の幸せを求めたいのです」と語る。

アジア最大級のLGBTQイベントである「東京レインボープライド」の共同代表理事を務めていた山縣真矢さん(54)も、今回の裁判で原告に加わった。会見では、性的マイノリティではないマジョリティの人へ向けて、こう呼びかけた。

「この裁判を通じて、私たちの置かれている状況や、抱えている不安を知ってください。そして、私たちの『アライ』に、味方になってください。力を合わせて、より平等で公正な社会を築いていきましょう」

Contact Saori Ibuki at saori.ibuki@buzzfeed.com.

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