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「生産性あるものとないものを同列に扱うのは無理がある」 自民・杉田水脈議員がこれまで主張してきたこと

寄稿を掲載した「新潮45」編集部は7月24日、BuzzFeed Newsの取材に「個別の記事に関して編集部の見解を示すことは差し控えさせて頂きます」と回答した。

自民党の杉田水脈・衆議院議員(比例・中国ブロック)が月刊誌「新潮45」2018年8月号(新潮社)への寄稿で、「(LGBTは)子供を作らない、つまり『生産性』がない」などと主張し、批判の声が上がっている

杉田議員はこれまでも複数回にわたって「新潮45」に寄稿し、「セクハラで社会はおかしくなった」「シングルマザーをウリにするな」「いまも続く『慰安婦』誤報の弊害」などと題した記事を発表している。

今回問題となったのは、LGBTの人たちを「生産性がない」と評し、支援に反対する主張だった。「LGBTは生産性がない」という指摘だけでなく、そもそも支援対象を「生産性」という尺度で判断して良いのかと批判の声が上がった。

それ以外の投稿で繰り返し出てくるのが「普通」という言葉だ。「普通」を強く肯定する一方で、多様性に対しては否定的に感じとられる表現が目立つ。

以下、新潮45の記事から引用する。

「生産性のあるものとないものを同列に扱うのは無理がある」

「『LGBT』支援なんかいらない」と題した2016年11月号の寄稿では、渋谷区、世田谷区、宝塚市で当時整備が進んでいた同性パートナーシップ制度をはじめとする「LGBT支援策」は不要だと考える理由を列挙している。

そのうちの一つが、今回も批判が集中した「LGBTは生産性がない」という主張だ。

渋谷区の(同性パートナーシップ)条例案では男女同権とこの(同性婚やパートナーシップの)問題を同列に扱っていました。そのこと自体に違和感があります。が、敢えて同根の問題として扱えというのであれば、まず、差別と区別は違うということです。

(中略)男性に向かって「子供を産みなさい」と言っても無理です。この事実がある以上、子供を産み育てるという場面において、いくら男女を平等に扱おうとしてもできないわけです。そこには物理的に無理なことがたくさん存在します。これは差別ではなく区別です。

国や自治体が少子化対策や子育て支援に予算をつけるのは、「生産性」を重視しているからです、生産性のあるものとないものを同列に扱うのは無理があると思います。これも差別ではなく区別です(「新潮45」2016年11月号 P.59より)

さらに、この内容を自身のブログに書いた時のことを振り返り、「ツイッターをはじめとするネットは大炎上。問題は『LGBTの人たちには生産性がない』と書いたこと」と記述。

その上で、「男性が子供を産めないのと同等に同性愛のカップルがいくら性行為をしても生殖にはつながりません」と再び強調した。

一方、「男女カップルでも子供ができない人がいる」という指摘があることにも触れ、「『不妊カップルの支援』はもっとしっかりやるべきだというのが、私の主張です」と記している。

「『多様な家族』より普通の家族」

2017年3月号の特集「『より良い社会』の泥沼」に寄せた「『多様な家族』より普通の家族」では、子供時代を振り返り、自身の考える「普通の家族」が失われることへの危機感を述べている。

子供の頃から私は「普通」というものをかなり意識していました。好きになるもの、興味を持つものなど、「普通の女の子」からちょっと(かなり)ずれていたのです。そんな私に母はいつも「普通ほど難しいものはない」と言い聞かせました。

母の言う「普通」とは、学校を卒業し、就職し、結婚し、子供を産み育てること。でもそれは日々のたゆまぬ努力の上に成り立つもので決して簡単なものではないと後になって気づきました。

ところが、平成30年を目前とした現在、この「普通」を普通に語ることができない日本になってしまいました。(「新潮45」2017年3月号 P.44より)

さらに、「男の子らしく」「女の子らしく」という言葉を教育現場で使うべきではないとされることなどを例に、「普通よりも個性を大切にしないといけない」「普通を否定する」風潮があると指摘。

将来的には、夫婦別姓や同性婚が認められ、事実婚やシングルマザー、シングルファザーの家庭も増える可能性があることを危惧し、「『多様な家族』が溢れる日本は、果たして幸せな国なのでしょうか」と問いかけた。

「例外をスタンダードにするから混乱する」

2018年6月号の特集「朝日の論調ばかりが正義じゃない」では、この春から道徳が教科化されたことに対して否定的な朝日新聞を批判。

ここでも「道徳教育というのは、世の中の常識や『ふつう』を教えることだ」と「普通」の概念を引き合いに出し、次のように論じている。

いま日本は「ふつう」を規定することをすごく怖れる社会になっています。家族というものは、お父さんとお母さんがいて、子どもたちがいる。それをふつう」の家族だというと、親がいない家庭もある、LGBTの人たちもいるのだから、”差別”になるという。

「ふつう」を規定せずに、例外の方をスタンダードにしているから混乱状態になるのです。

道徳教育というのは、世の中の常識や「ふつう」を教えることだと思います。大切なのは、まず「ふつう」とは何かを規定して、例外も認めるということ。世の中に「ふつう」という”定規”がなければ、何を基準にして判断すればよいのかわからなくなります。

そういう意味でも、社会はこうあるものだという「ふつう」を道徳という教科できちんと教えるべきです。(「新潮45」2018年6月号 P.75より)

新潮45「見解を示すことは控える」

多様性を直接的に否定する言葉はないが、多様性を推進しようとする意見に対しては否定的な意見を繰り返している。

BuzzFeed Newsは杉田議員に取材を申し込んでおり、回答を得られれば記事に追記する。

また、寄稿を掲載した「新潮45」編集部は7月24日、BuzzFeed Newsの取材に「個別の記事に関して編集部の見解を示すことは差し控えさせて頂きます」と書面で回答した。

杉田議員は2012年に初当選し、2期目。日本維新の会や次世代の党を経て、2017年の総選挙で、比例中国ブロックから自民党の比例単独候補として当選した。