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「私にもおめでとうと言いたい」 46歳の“新成人”が初めての成人式で語ったこと

“新成人”として初めて出席した成人式。同じように悩みながら進む人に贈った言葉とは。

「今日私は、私にも『おめでとう』と言いたいと思います」

小野春さん、46歳。30代で自分がバイセクシュアルだと気付き、同性のパートナーとお互いの連れ子3人を育てるお母さん。多様な家族のあり方を支援する団体「にじいろかぞく」の代表も務める。

彼女は1月13日、様々なセクシュアリティの人やその友人、家族が集う「LGBT成人式」で、約200人の“新成人”を代表する1人として式辞を述べた。

人間はいくつになっても決意ができる

2011年度にNPO法人ReBitが始めたLGBT成人式では、セクシュアリティや年齢を問わず、「ありのままの自分を誇り、『成りたい人』への一歩を踏み出す」すべての“新成人”の決意を祝福する。

「私は(20歳の)倍ほどの年齢ですが、人間はいくつになっても決意ができるぞということで、今日は新たな決意を皆さんと共にしようと思っています」

笑顔でそう切り出した小野さんは、30歳を過ぎるまで自分のセクシュアリティを自覚しておらず、男性と結婚し、子どもを出産。

その後離婚し、現在のパートナーと出会ってバイセクシュアルだと気づいた時は、「足元が崩れ落ちるような気がしました」と話す。

「自分を受け入れることはとても難しく、受け入れられるまでに何年もの時間がかかってしまいました。その一方で、ようやく自分が何者かわかって、安堵したことを覚えています」

生きていられる今が奇跡なら

小野さんに転機が訪れたのは2年前の冬。乳がんが見つかったのだ。

仕事を休職し、抗がん剤治療と片胸を全摘出する手術を受けた。薬の副作用で涙腺はふさがり、味覚を失った。髪の毛は全て抜けて坊主頭になり、階段が上れないほど体力が落ちた。

長年見て見ぬ振りをしていた自分のセクシュアリティと向き合い、また一から積み上げてきた人生。それが再び「バタンと崩れてしまった」ような感覚だった。

だが、その経験がなければ、“成人式”で決意を語ることもなかったかもしれない。

「私は病気をするまで、人生はずっと続くものだと思っていたし、死ぬということは遥か遠くにあると思っておりました。けれど、あの日から人生には限りがあるということを学びました」

「生きていられる今が奇跡なら、失敗することなど大したことではありません。試してみたら良いのです。失敗したらやり直せる。それが生きていることだと思いました」

「競技場に立つ人」

小野さんは式辞で、自分と同じようにセクシュアリティに悩み、「成りたい人」の姿を模索する“新成人”たちにある言葉を贈った。セオドア・ルーズベルト米大統領のスピーチ「競技場に立つ人」だ。

ただ批判するだけの人に価値はない。強い人のつまずきを指摘し、やり手ならもっと上手くできたはずだと、ただあげつらう人だけには。

賞賛されるべきは、実際に競技場に立つ人だ。埃と汗と血にまみれながらも、勇敢に戦う人だ。

ある時は間違いを犯し、あと一歩のところで届かない。そんなことが何度あるかもしれない。

何をするにも間違いや欠点は付きまとう。それでもなお、ことを成し遂げようと、もがき苦しみ、情熱を燃やし、力を尽くし、大義のために身を粉にして、励む人こそ偉大なのだ。

順風満帆ならば、最後に勝利が輝くだろう。最悪の場合、失敗に終わるかもしれない。だがそんな人たちは少なくとも、果敢なる挑戦をしたのである。

小野さんは3カ月前に職場に復帰した。経過観察中のいまも再発の恐怖と戦いながら、これからどう暮らしを組み立てていくか、試行錯誤の真っ只中にいる。勇気を奮い起こす時に胸に刻むのが、この言葉だという。

自分が20歳の時は、地元に友達がいないからと出席しなかった成人式。来年には、パートナーと暮らし始めた頃はまだ保育園に通っていた子どもが、成人を迎える。小野さんは言う。

「勝者になることでも、成功することでもなく、そのフィールドに立って挑戦し続けることが大切なんだなって。だから、尻込みしやすい私ですが、競技場の人でいられるように、ささやかであっても、挑戦を続けていきたいと思います」

BuzzFeed JapanNews