「いま見解を述べないで、何がLGBT議連だと思います」 元首相補佐官が声を上げた理由

    LGBT議連幹事の一人で、元首相補佐官の寺田学衆議院議員が7月26日、杉田水脈議員寄稿をめぐりBuzzFeed Newsの取材にこたえた。

    自民党の杉田水脈・衆議院議員が月刊誌「新潮45」への寄稿で、「(LGBTは)生産性がない」ため、税金を使って支援するべきではないと主張したことを受け、批判の声が高まっている。

    超党派の国会議員約20人でつくる「LGBTに関する課題を考える議員連盟」(LGBT議連)の幹事で、民主党時代に首相補佐官を務めた寺田学・衆議院議員(無所属)も、異議を唱えた一人だ。

    人間のあり方を「国家の視線」で判断

    寺田議員は2003年に当時最年少で衆議院議員に初当選し、5期目。民主党政権で首相補佐官を務めた。民進党や希望の党を経て、今年4月に希望の党の解散とともに、無所属になった。

    「杉田さんの記事を読むと、彼女が決めつけた一つのあり方からはみ出ている人間を『不幸な人間』や『普通じゃない』と呼んだり、多様であることが社会を乱す要因であると言っていたり、国会議員がそうした考えを公に表明したことが信じられませんでした」

    「国にとって役に立っているかどうかを、子供を授かる授からないで判断すること自体おかしいですが、それ以前に、人間が生活を営む上でどうあるべきかということを国家の視線だけで判断している」

    「しかも、それを国の運営を預かる国会議員がということが、恐ろしくもありました」

    7月26日にBuzzFeed Newsの取材に応じた寺田議員は、問題の寄稿をそう評す。

    「いま見解を述べないで、何がLGBT議連だ」

    「LGBTだからといって、実際そんなに差別されているのか」「彼ら彼女は子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」「同性愛でいいんだ、と不幸な人を増やす」ーー。

    そう論じた杉田議員に対して、当事者団体のLGBT法連合会は23日、「当事者の人権を侵害するだけでなく、現実に存在する『性の多様性』を無視し、国会議員としての資質に疑問を抱かざるを得ない」と訴える抗議声明を発表。

    野党からの批判も強まる一方、2015年の設立以来、性的マイノリティの課題に取り組んできたLGBT議連からは、公式な見解が示されていない。

    寺田議員によると、23日の時点で「LGBT議連としての公式見解を示すべきだ」と議連の幹部に訴えたものの、26日現在まで、主だった動きには繋がっていないという。

    自身のTwitterには「超党派のLGBT議連の一人として、議連の見解を示すべきと幹部に訴えてますが未だに動かず。いま見解を述べないで、何がLGBT議連だと思います」と厳しい意見を投稿した。

    超党派のLGBT議連の一人として、議連の見解を示すべきと幹部に訴えてますが未だに動かず。いま見解を述べないで、何がLGBT議連だと思います。 https://t.co/2Q6BVIqKSB

    なぜ個々の議員や政党だけではなく、議連としての見解を示すことが重要なのか。

    寺田議員は党派性を超えた意見を表明できる議連だからこそ、杉田議員との立場の違いを明確にするべきだと話す。

    「政党間のせめぎ合いを抜きに、色んな党の人間が一つの共通の価値観を持って活動するのが超党派の議連です」

    「特定の党を批判する目的ではなく、ある意味普遍的な意見として、政党の影を消した形で意見を出す意味は大きい。そもそも、そういう目的のために作られたのが、この議連のはずですから」

    「杉田さんのような考えを内心で持つことは自由ですが、国会議員の公的な発言である以上、国会として、我々が目指す国の形は杉田さんの考え方に沿ってはいないことを示すべきだと思います」

    「目指すのは人それぞれのあり方をできる限り包摂し、多様性を認めて、それぞれが生きやすい世の中。実現手段は各政党で違うかもしれないですが、根底にあるのはそういうものだと、はっきり示すことが重要です」

    馳浩会長らはコメントせず

    BuzzFeed Newsは7月23日、LGBT議連の会長を務める自民党の馳浩・衆議院議員に書面で取材を申し込んだが、コメントできないとの回答があった。

    事務局長の公明党・谷合正明参議院議員は25日、Twitterに「ある自民党議員の『生産性』がないとの誌上での発言は、LGBTだけでなく、共助社会・共生社会を構築する上で相容れない」と投稿

    だが、西日本豪雨で被災した地元・岡山県に帰任していることもあり、取材には応じなかった。

    顧問を務める無所属の細野豪志衆議院議員からは26日現在、回答が得られていない。

    訂正

    「国民民主党・細野豪志衆議院議員」としていましたが、「無所属」の誤りです。訂正致します。