今年も高校野球の季節がやってきた。
7月8日に開かれた東・西東京大会の合同開会式では、早稲田実業の清宮幸太郎主将(3年)が選手宣誓を務めました。

「宣誓。私たちは野球を愛しています。私たちは野球に出会い、野球に魅せられ、野球によって様々な経験を重ねてこの場所に立っています」
「いよいよ今日から夢の舞台へのたった一枚の切符を得るための戦いが始まります。私たちは東東京・西東京の頂点を競うライバル同士ですが、同時に同じ夢を追いかける同志でもあります」
「青春の全てをかけて戦うことができる幸せと喜びを、支えてくれる全ての皆さまに感謝しながら、野球の素晴らしさが伝わるよう、野球の神様に愛されるように全力で戦うことをここに誓います」
朝日新聞によると、「愛しています」という言葉を選んだ理由について清宮選手は、「『好き』より思いが伝わると思いました。また、(がんで亡くなった元キャスターの)小林麻央さんが最後に言っていた言葉として印象に残っていたのもある」と話したそうです。
これまでも、多くの名言を生んできた選手宣誓。
近年の甲子園を飾った選手宣誓を、全文で振り返りました。
2017年春 作新学院・添田真聖主将(栃木)

前年の夏の甲子園で全国制覇を果たし、史上5度目の「夏春連覇」へのプレッシャーがかかる中での宣誓。「自覚と責任」の言葉を選びました。
「ここにいる私たちは、高校野球のひたむきさと高校生らしさを認められ、選抜されました。仲間とともにいくつもの困難を乗り越え、今この場所に立てることを誇りに思います」
「選ばれた自覚と、最後まで全力を尽くす責任を持ち、支えてくれる地域の方々への感謝を忘れず戦います。先輩方が築いてくれたこの素晴らしい大会を私たちが継承し、人としての力を高めていく大会にすることを誓います」
2016年春 小豆島・樋本尚也主将(香川)

21世紀枠で初出場し、大会の翌春には別の高校との統合が決まっていた小豆島。「最初で最後の甲子園」への思いを宣誓に込めました。
「今から92年前、第1回全国選抜中等学校野球大会が開催されました。その翌年に創部された僕の野球部は来年の春、高校の統合にともない新しく生まれ変わります」
「当たり前にあった景色がなくなる。その重みを僕たちは忘れたくありません。当たり前にある日常のありがたさを胸に、僕たちはグラウンドに立ちます。そして支えてくださる方々を笑顔にできるよう、気迫を前面に出し、全身全霊でプレーすることを誓います」
2015年夏 鳥羽・梅谷成悟主将(京都)

「高校野球100年」の節目の年。広島へ原爆が投下された8月6日に開かれた開会式で、平和と野球ができる喜びを語りました。
「1915年8月、第一回全国中東学校優勝野球大会が始まりました。それから100年間、高校野球は日本の歴史とともに歩んできました。この100年、日本は激動と困難を乗り越えて今日の平和を成し遂げました」
「このような節目の年に聖地・甲子園で野球ができることを誇りに思い、そして支えていただいた全ての方々に感謝し、全力でプレーをします。次の100年を担う者として、8月6日の意味を深く胸に刻み、甲子園で躍動することを誓います」
2011年夏 金沢・石田翔太主将

東日本大震災が起きた2011年。金沢高校の石田翔太主将の宣誓は簡潔で、力強いものでした。
「春から夏にかけて、どれだけの時が経っても忘れることのない様々なことが起きました。それでも、失うばかりではありません。日本中のみんなが仲間です。支え合い、助け合い、頑張ろう」
「私たちは精一杯の笑顔で、全国の高校球児と思いを白球に込め、この甲子園から消えることのない深い絆と勇気を、日本中の仲間に届けられるよう、全力でプレーすることを誓います」
2012年春 石巻工・阿部翔人主将(宮城)

震災から1年経った春、選手宣誓を務めたのは自身も被災した石巻工業の阿部翔人主将。
「東日本大震災から1年。日本は復興の真っ最中です。被災をされた方々の中には、苦しくて心の整理がつかず、今も当時のことや亡くなられた方を忘れられず、悲しみに暮れている方がたくさんいます」
「人は誰でも、答えのない悲しみを受け入れることは苦しくて、辛いことです。しかし、日本が一つになり、その苦難を乗り越えることができれば、その先に必ず大きな幸せが待っていると信じています」
「だからこそ、日本中に届けます。感動、勇気、そして、笑顔。見せましょう、日本の底力、絆を。我々高校球児ができること、それは全力で戦い抜き、最後まで諦めないことです。今、野球ができることに感謝し、全身全霊で正々堂々とプレーすることを誓います」
1994年夏 光・杉村衡作主将(山口)
高校生らしいさわやかな言葉で、高校野球ファンに根強い人気があるのは、光高校の杉村衡作主将による宣誓。
「野球を愛する私たちは、憧れの甲子園球場から全国の仲間にメッセージを送ります」
「ファイト、フェアプレー、フレンドシップの頭文字『F』のマークをあしらった高校野球連盟の旗のもと、私たち選手一同は、苦しい時はチームメートで励まし合い、辛いときはスタンドで応援してくれている友人を思い出し、さらに全国の高校生へと友情の輪を広げるため、この甲子園の舞台で、一投一打に青春の間隙を噛み締めながら、爽やかにプレーすることを誓います」