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「女性は世界を変えるために働くのよ」と教わった留学生。彼女がいま、次世代に伝えたいこと

「いつの時代も、世界をよくするための大きなうねりは、身近な最初の一歩からでした」

「いつの時代も、世界をよくするための大きなうねりは、身近な最初の一歩からでした」

BuzzFeed Japanは3月6・7日にかけて、オンラインイベント「私たちは2021年の日本をどう生きる?」をYouTubeで配信しました。

イベント1日目のキーノートスピーチに登壇したのは、国連事務次長・軍縮担当上級代表の中満泉さん。学生時代にアメリカへ留学した際に「女性は世界を変えるために働くのよ!」と言われ、初めてロールモデルを得たそうです。

新型コロナウイルスのパンデミックによって世界が岐路に立たされるなか、これからの世界を牽引していく「リーダーシップ」が問われています。

「『リーダー』とは、必ずしも政府や大きな組織を指導する人のことではありません」と語る中満さん。世界を前進させる力は、どこから湧いてくるのか。スピーチの全文を掲載します。

「“リーダー”とは、必ずしも政府や大きな組織を指導する人のことではありません」 「私は若い女性たちの自由で創造的な行動こそが、私たちの社会、日本と世界を変えていくのではないか、と期待しているのです」 国連事務次長・軍縮担当上級代表の中満泉さんから贈るメッセージです。 #国際女性デー

Twitter: @BFJNews

BuzzFeed Japanオンラインイベント「私たちは2021年の日本をどう生きる?」に参加の皆さま、こんにちは。NY国際連合本部より中満泉です。今日は、日本と世界、地球の未来を作っていく皆さんにメッセージをお送りする機会をいただき、とてもうれしく思っています。

世界は新型コロナウイルスパンデミックで大きく変わりました。コロナ禍によって、それまで見えにくかった私たちの周りの大きな課題や問題点が、はっきりと見えるようになったと言うべきかもしれません。

パンデミックが始まってしばらくして、コロナ後の世界について考えるために国連事務総長が主催した国連のバーチャル会議で、有名な歴史学者のユヴァル・ノア・ハリルさんがおっしゃった以下の言葉が大変印象的でした。

「私たちは今、人類の歴史上の分岐点にある。コロナ後の世界がどのようなものになるのか、これから数か月、長くても2~3年の間の私たちの行動にかかっているのだ」

そんな、歴史の大転換期とも言える今、皆さんがこの1年をどう生きるかを考える機会があるのは素晴らしいことです。私も、皆さんと一緒に考えたいと思います。

そして、私は日本語で15歳の私に手紙を書きました。(15歳の頃、私は日本語しか出来なかったし)。セーラー服の私です。 #国際ガールズデー

Twitter: @NakamitsuUN

日本で生まれ育った私は、初めてパスポートを手にしたのが大学3年生の時でした。

私が10代の頃は、当時の若者らしく海外で起こっていることや、宇宙の起源、などというとてつもなく大きなことに興味はもっていたものの、ごくごく普通の学生だったと思います。

中学高校6年間を女子校で過ごした私は、大学に入って初めて周りのほとんどが男子学生という環境で、今に続く多くの友人・仲間を得たと同時に、男性と同等に肩を並べて女性が活躍することが難しい日本社会の現実にも初めて直面しました。

そんな私が、大学3年の時に交換留学生として初めて日本を離れてアメリカの大学で勉強したことが、私にとって大きな転機となりました。

多くの方々との出会いによって、性別も、国籍も関係なく努力することによって道が開ける、夢を追求することができる、と考えられるようになりました。

英語がまだ流暢に話せなかった私に、アメリカ人学生と同じような機会とチャレンジを与えてくれた大学の先生方。インターンシップ先のアメリカ議会で「女性は世界を変えるために働くのよ!」と言ってくれたパトリシア・シュローダー議員。

そして彼女のオフィスを取り仕切る、スーザンさんという30代女性は、ものすごく有能で頭が切れる人であるのに、全く偉そうにしておらず、おそらくあまり役には立たなかったであろう学部生のインターンである私に、色々なことを丁寧に指導してくれたのでした。

考えてみれば、私はその時に初めて、当時の日本では持ち得なかった、女性のロールモデルを持ったのだと思います。そしてその頃には、将来は国際機関で働きたいという夢を現実に追求したいと心が固まっていました。

日本で大学を終え、すぐにアメリカの大学院に再び留学し、それを終えて幸いにも国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に入ることができました。1989年のことです。

それから人道支援、平和維持活動、開発支援、と国連のさまざまな分野で働き、今は軍縮と国際安全保障問題を担当しています。

私が国連に入った1989年は、アメリカとソ連、そして東西冷戦が終結した年です。今と同じように、冷戦期からポスト冷戦期へと世界の構図が大きく変わり始めた転換期でした。

私がイラク・トルコやボスニア、その他の現場で行ってきた人道支援やPKO活動は、冷戦終結によって新しく生まれてきた宗教、民族などのアイデンティティーをベースとする紛争に対応する仕事でした。

このような紛争は、シリア、イエメンなど様々なところでいまだに多くの犠牲者を生み出しています。

そして、アメリカ、ロシア、そして中国などの大国関係の冷戦時代のような緊張関係が再び起こっていること、さらに各地でテロ組織による活動が活発化していることと絡み合い、紛争の構図はさらに複雑化しています。

そのような中で、核兵器や化学兵器などの軍縮を進めることによって国際社会の安定化を図り、小型武器などの軍縮・管理を進めることによって実際の紛争の現場でできるだけ人命を救い、さらにはサイバー空間や宇宙空間で戦争が行われないよう、また人工知能AIを使った兵器が実際に作られることのないように規制方法を考えることなどによって、未来の皆さんが住む世界も安全にしよう、というのが、今私が担当している軍縮、と言う分野なのです。

折り鶴は世界中で平和の象徴。メアリー・ロビンソン元大統領をはじめ、多くの元政府高官などが参加する@TheElders の呼びかけで、#PeaceCrane2020 に参加、広島と長崎から核廃絶のメッセージを送ります。核兵器のない、皆が安全で誰も取り残さない世界を作るために皆で努力しましょう。

Twitter: @NakamitsuUN

今、世界を見渡してみると、私達の住む身近なところでもコロナ禍で困窮する人たちが増え、気候危機が深刻化して地球が悲鳴をあげつつあります。

そして、サイバー、AI、バイオ技術など様々な技術が私たちの社会に大変革をもたらしつつあります。私たちは、まさに歴史の分岐点に立っているのだ、と感じます。

ただ大きな変化に流されていくか、それともそれぞれの行動によって、この変化を私たちの世界をより良いものにすることができるか、の分岐点です。

コロナ以前から存在していた様々な問題に対応し、SDGsが示す、皆が安全に、誰も取り残されないような世界。

そして、その「世界」とは、まさに皆さんが暮らしていく未来の世界です。

転換期にいるからこそ、私は近頃リーダーシップについてよく考えます。

「リーダー」とは、必ずしも政府や大きな組織を指導する人のことではありません。

むしろ、社会のさまざまな場所で、色々な組織やコミュニティー、グループで、変革のための「行動」をまとめていくような人たちが、リーダーと言えるでしょう。

私は今の時代のリーダーには4つのことが求められていると思います。

まず、不確実で混沌とした世界だからこそ、しっかりとした歴史観と知力を持ち、未来をどのような世界したいのかへのビジョンを持つこと。

2つ目には、大変化・パラダイムシフトを恐れず、それを可能にする勇気と決断力を持つこと。この大変革の時代に、これまで通りのやり方で良いはずはありません。新しい考え方をどんどん試していく必要があると思います。

3点目として、多様な意見の存在や自分と異なる考え方する人の存在をプラスに捉え、それらに耳を傾ける自信と柔軟さを持ち、ボトムアップを可能にし、社会変革へのプラスの力とすることができること。これは多様な考え方から、新しいビジョンやアイデアを生み出していく力とも言えるでしょう。

そして4点目に、特に分断の世界の今だからこそ、真に誠実さや最も弱い立場にいる人々に心を寄せ共感する力、他人と地球や自然に対して謙虚さを持つこと。

私は、実は若者たち、特に若い女性たちが、そんなリーダーになれるのではないかと期待しています。

日本社会は、いまだに女性蔑視など古い慣習や物の考え方に囚われて、多様なバックグラウンドを持つ人々の様々な才能を見出し最大限に活用し、そこから活力を見出すことができないでいます。

先日の女性蔑視発言は、その発言をした人個人の問題、と言うよりは社会全体の問題だと思います。発言者が責任を取って辞任すれば良い、という問題ではありません。

私たちの身の回りで、例えば職場で、学校で、サークルで、沈黙せずに皆で発言し、行動して変革していかなければなりません。

私たちの社会と文化に根強く残る差別意識に、時々落ち込むこともありますね。

同時に、私たちは、大きな組織にとらわれずにダイナミックに、そして自由に起業したり、社会変革のグループを自発的に立ち上げる若い女性たちのニュースもよく耳にするようになりました。

私は、そういう若い女性たちの自由な、そして創造的な行動こそが、私たちの社会、そして日本と世界を変えていくのではないか、と期待しているのです。

Women serve as Heads of State or Government in only 22 countries, and 119 countries have never had a woman leader. We👏 need👏 more👏 women👏 leaders👏 #IWD2021 #GenerationEquality

Twitter: @UN_Women

私が皆さんに送れるメッセージがあるとすれば、それは皆さんがご自分を信じて欲しい、ということ。

それぞれパッションを持っている分野で、自分が必ず満足いくような活躍ができるだろうと信じること。そして皆さんが世界を変えられる、ということ。

そのために皆で協力しあい、支え合って、一緒に頑張りましょう、というメッセージです。

いつの時代も、世界をよくするための大きなうねりは、そういう身近な最初の一歩からでした。

2021年を、自分を信じて行動する1年に、そして私たちが世代や性別、立場を超えて協力し合える、そんな1年にしたいと思います。皆さんと一緒に。


私たちは2021年の日本をどう生きる?

新型コロナウイルスの影響で暮らしが大きく変わった今だからこそ、じっくり考えたい「ジェンダー」「環境」「働き方」のこと。

BuzzFeed Japanはイベント「私たちは2021年の日本をどう生きる?」をYouTubeで配信しています。

第一部はこちら

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▶︎ウチらZ世代

能條桃子(NO YOUTH NO JAPAN代表)

ミチ(モデル・タレント)

中里虎鉄(フォトグラファー・エディターetc.)

▶︎キーノートスピーチ

中満泉(国連事務次長・軍縮担当上級代表)

▶︎私たちは2021年の日本をどう生きる?

犬山紙子(エッセイスト)

富永京子(立命館大学産業社会学部准教授)

みたらし加奈(臨床心理士 / mimosas)

▶︎Z世代にとっての「働きやすさ」を考える(sponsored by 日本マイクロソフト)

辻愛沙子(arca CEO / クリエイティブディレクター)

仁禮彩香(TimeLeap代表)

小川嶺(Timee代表)

森下諒(日本マイクロソフト カテゴリーマネージャー)

第二部はこちら

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▶︎キーノートスピーチ

下山田志帆(女子サッカー選手 / Rebolt代表)

▶︎クイズ王に挑戦!激ムズSDGsクイズ

林輝幸(クイズ王)

やしろあずき(web漫画家)

横山由依(AKB48)

マリエ(デザイナー・ラジオパーソナリティー)

▶︎100%リサイクルペットボトルで未来をつくろう!(sponsored by 日本コカ·コーラ)

飯田征樹(日本コカ·コーラ サスティナビリティー推進部 部長)

▶︎私たちがつくる未来と環境の話(sponsored by 積水ハウス)

大島由香里(フリーアナウンサー)

りゅうちぇる(タレント・アーティスト)

マリエ(デザイナー・ラジオパーソナリティー)

石田建一(積水ハウス 常務執行役員 環境推進担当)

(※出演者敬称略)