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命を絶つまで自分を追い込まないで。本田圭佑がツイートした「自殺対策白書」に書いてあること

若い世代の死因は自殺が最多だと報じた記事について「他人のせいにするな!」とTwitterに投稿し、波紋を呼んでいた。

サッカー日本代表の本田圭佑選手は6月4日、若い世代の死因は「自殺」が最も多いと報じた記事について「他人のせいにするな!」とTwitterに投稿した件について、「言葉足らずで本意が伝わらなかった」と真意を説明するコメントを公式サイトで発表した。

サッカー日本代表の本田圭佑選手
AFP=時事

サッカー日本代表の本田圭佑選手

発端となったツイートは5月30日、政府が公表した2017年版自殺対策白書の概要を報じた記事へのリンクを引用。

その上で、「他人のせいにするな!政治のせいにするな!!生きてることに感謝し、両親に感謝しないといけない。今やってることが嫌ならやめればいいから。成功に囚われるな!成長に囚われろ」と書かれていた。

他人のせいにするな!政治のせいにするな!!生きてることに感謝し、両親に感謝しないといけない。今やってることが嫌ならやめればいいから。成功に囚われるな!成長に囚われろ!!https://t.co/EHbPYpUI8e @YahooNewsTopics

ツイートは6月6日現在までに1万回以上リツイートされ、「実際に自殺する人は『他人のせい、政治のせい』に出来なくて『自分のせい』にして自殺するんだと思う」「(親に)感謝したくてもできない人たちの『苦しみ」を理解して下さい」と指摘する声が上がるなど、波紋を呼んだ。

「命を絶つまで自分を追い込んではいけない」

これを受け、本田選手は4日、公式サイトに「ツイッターでは言葉足らずで本意が伝わっていないのと、繊細な内容であるのに配慮に欠けた部分があると自覚し反省して、ここで想いを共有したいと思います」とコメントを発表。

自殺を考えて踏みとどまった親友とのエピソードに触れ、「メッセージとして伝えたかったのは『死なないでほしい』、『生きていればいつか良いことがある』、『良しとする基準は自分が作ればいい』、『出来ることを見つけて少しずつ進んでほしい』ということなんです」と説明した。

僕が伝えたいことは、外的要因であれ、自分であれ、命を絶つまで自分を追い込んではいけない、ということです。確かに努力しても上手くいくとは限らないですし成功するとも限らない。しかし努力すると必ず何かしらの成長をします。

周りが決める成功や基準に左右され、周りが行う追い込みや圧力が理由で「自分を不必要に追い込まないで」欲しいんです。自分に出来ることを続け、自分の成長を実感し、自らを褒めてあげる。自分で基準や成功を決めればいいんです。自分自身こそがどんな状況をもプラスに変えられる唯一の味方なんだと信じて、一歩を踏み出してもらいたいと願っています。

自殺対策白書が問題提起したこととは

では、本田選手がツイートで触れた「2017年版自殺対策白書」には何が書かれているのか。

■15〜39歳の死因第1位は「自殺」

人口動態統計によると、2016年の自殺者数は2万1897人と、5年連続で3万人を下回った。その一方、15〜39歳の死因で最も多かったのは「自殺」だった。

2017年版自殺対策白書

日本の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)はフランス、ドイツ、アメリカなどの先進国と比べて高く、白書は「我が国における若い世代の自殺は深刻な状況にある」と警鐘を鳴らす。

2017年版自殺対策白書 / Via mhlw.go.jp

■自殺者数が減少傾向にある一方、「学生・生徒等」は横ばい

さらに職業別の内訳をみると、自殺者の総数はおおむね減少傾向にある中、「学生・生徒等」の自殺者数はおおむね横ばいのまま推移している。

2006年までの職業別の自殺者数の推移
2017年版自殺対策白書 / Via mhlw.go.jp

2006年までの職業別の自殺者数の推移

2007年から2016年までの職業別の自殺者数の推移
2017年版自殺対策白書 / Via mhlw.go.jp

2007年から2016年までの職業別の自殺者数の推移

また、全体としては減少傾向にある「無職者」の中でも、「年金・雇用保険者など生活者」は増加傾向にあるという。

無職者の内訳の推移
2017年版自殺対策白書 / Via mhlw.go.jp

無職者の内訳の推移

■「健康問題」の4割がうつ病

原因・動機別では「健康問題」が3割以上を占めて最も多く、「経済・生活問題」「家庭問題」「勤務問題」と続いた。

なかでも2015年に「健康問題」の4割を占めたのは「病気の悩み・影響(うつ病)」。

白書は「自殺対策においては、うつ病の早期発見、早期治療を始めとする心の健康問題に対する働きかけのみならず、心の問題に複雑に絡み合っている社会的要因を含めた様々な問題に対しての働きかけが必要である」と指摘している。

健康問題による自殺者数の内訳の年次推移
2017年版自殺対策白書 / Via mhlw.go.jp

健康問題による自殺者数の内訳の年次推移

■「助けを求めることにためらい」が半数

また、白書には2016年10月に全国の20歳以上の男女3000人を対象に実施された意識調査の結果も掲載されている。

「悩みを抱えたときやストレスを感じたときに、誰かに相談したり、助けを求めたりすることにためらいを感じるか」という問いに「そう思う」「どちらかというとそう思う」と答えた割合は、全体の46.9%と半数近くを占めた。

2017年版自殺対策白書 / Via mhlw.go.jp

特に50代男性は57.3%、60代男性は57.7%、70歳以上で53.7%と、ためらいを感じる人が高い割合を占めており、「不満やつらさを聞いてくれる人、物質的金銭的な支援をしてくれる人が周囲におらず、一人で悩みを抱え込んでしまうリスクが高くなっている可能性が考えられる」とした。

必要なのは「他人に吐き出せる社会」

今回の本田選手のツイートについて、評論家の荻上チキさんは、2017年版自殺対策白書が提起しているのはむしろ、「『他人』に吐き出せる社会づくりのための政治を」という議論だとTwitterで言及。

「一人で抱えるのではなく、適切に『市=社会』『他人』とつながる重要性が注目されている」と指摘し、「白書の結論はそのための枠組みを行政が構築する必要性があるということですね」と述べた


Saori Ibukiに連絡する メールアドレス:saori.ibuki@buzzfeed.com.

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