
数百万人もの人々が一斉にデモを行い、気候変動に対するアクションを起こすよう政府や企業に求める「グローバル気候ストライキ」が11月29日、世界各地で開催される。
世界中に広がったこの運動を主導しているのは、スウェーデン出身のグレタ・トゥーンベリさん(16)を中心とする10代の若者たち。なぜ、いま若い世代は、声を上げているのだろうか。
16歳の活動が地球規模のムーブメントに

「グローバル気候ストライキ」は、トゥンベリさんが昨年始めた毎週金曜日に学校ストライキを行う「Fridays For Future」という活動が、世界中に広がる形で始まった運動だ。
9月20日に開催された前回の「グローバル気候ストライキ」では、世界中でおよそ760万人が参加し、地球規模の一大ムーブメントとなった。国内では「グローバル気候マーチ」と名前を変えて、5000人以上が参加したとされている(主催者発表)。
今回は12月2日にスペイン・マドリードで開幕するCOP25に市民の声を届けるために、11月29日の金曜日に開催が決まった。日本国内では、北は岩手県、南は沖縄県まで、全国21都道府県でデモやイベントが予定されている。
特に東京では、都に対して「気候非常事態宣言」を発表するよう求めて、議会で審議が行われている12:30ごろから、都庁の周りを歩く予定だ。
「私には選挙権がないから」
「私がデモをするのは、私にはまだ選挙権がないからです」 11月29日に世界中で開催される「グローバル気候ストライキ」。数百万人が参加する運動を主導しているのは、10代の若者たちです。 東京でのデモを主催する@FFF_Tokyo のメンバーに、街に出て声を上げる理由を聞きました #GlobalClimateStrike
東京のマーチを主催する「Fridays For Future Tokyo(以下Fridays)」の岩野さおりさん(16)は、「なぜ、私がこんな活動やデモをしているかというと、私には選挙権がないからです」と語る。
「私には公に自分の意見を公表したり、伝えられたりする場を、いまは持っていません。だからこそ、Fridays For Futureというムーブメントが起こったことで、自分の意見を伝えられる場を得たと思っています」
「いま自分の思っていることや、気候危機が本当に危機なんだということを伝えなければ、自分や将来世代の未来、他の生物への影響が計り知れないので、私はこのチャンスを絶対に逃したくない、と思っています」

Fridaysの梶原拓朗さんも「僕たちは子どもだし、未成年の人や学生が多くあまりパワーがない中で、もっとも僕たちの声が反映されて、伝えたいことが届けられる手段が、実際に外に出て声をあげて、気候変動について知ってもらうことだった」という。
「デモって聞くと『過激だ』とか『私には関係ないや』と思う人が多いと思いますし、実際に僕もその一人でした」
「でも皆さん本当に体感していると思うんですけど、日本にも台風が来ていたりとか、アマゾンで森が燃えているとか、どんどん『あれ…これ私にちょっと関係あるんじゃない?』とか『本当に危なくない…?』っていう意識が、皆さんの中にも芽生えてきたと思います」
「気候危機とか気候変動の問題は、もう理科の問題じゃなくなってるんですね。理科とか科学だけで片付けられる問題じゃなくなってきて、僕たち一人ひとりの生活に密接に関わってきてしまっている問題なです」
当たり前の生活を守るために

国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が昨年10月に発表した「1.5度特別報告書」によると、世界の平均気温は産業革命前からすでに1℃上昇し、2030~2052年までに、+1.5℃に到達すると予測されている。
すでに多くの自然災害が気温上昇によって引き起こされているなか、1.5℃までに温暖化を食い止めることができなければ、豪雨や寒波、干ばつなどの異常気象や、海面上昇などによる被害がさらに拡大し、危機的な状況を迎えると考えられている。

「今のまま地球温暖化や気候危機が進んでしまったら、今のような普通の生活ができなくなってしまいます」
「その当たり前の生活を送るために、僕たちは気候危機を止めなければいけない。今このタイミングがその最後のチャンスで、だからこそ僕たちの世代が声をあげて、行動することに意味があるんです」
Fridaysの井上寛人さんは、自分たちが活動を続ける理由をそう語る。
「10代前後の若者というと、恋愛や遊びとか楽しいことがたくさんあると思います。でも今の僕たちの世代は、そんなことをしている暇がないくらい危機的な状況があるんです」
若者と政治家が対等に

Fridaysが東京都に対して求めている「気候非常事態宣言」とは、国や自治体が気候変動を緊急の対応が必要な課題だと位置づけ、対策すると宣言するものだ。
世界20カ国以上の自治体がこうした宣言を出しており、国内では、長崎県壱岐市が9月に日本で初めて発表した。
Fridaysはマーチに先立って、気候非常事態宣言を求める請願書への署名活動を行い、11月19日に5522筆を提出した。
岩野さんはこうした請願やマーチを通じて、「若者と政治家が対等に話し合える場、そのための扉が開かれたら」と話す。
「気候非常事態宣言を出すだけでは不十分で、私たちが継続的に政治家や自治体がやっていることをウォッチして、不十分なことがあれば伝えていかないといけないと思っています」
マーチへの参加を迷っている人には、ぜひ一度参加してみてほしいと語る。
「私たちが今行動を起こすことによって、もし東京都や日本の政策を変えたり、企業をどんどん巻き込むことができるかもしれません」
「私たちの小さなアクションは、すごく大きなムーブメントに変わる可能性を秘めているし、もしその大きなアクションが起こったら、絶対に未来は悪い方から少しでもいい方向に変わっていくと思います」
「ここでアクションをすることで、あなたは自分の未来を自分で選ぶことができるんです」