アフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドさん(46)が、警察官に首を膝で押さえつけられ死亡した事件。
全米各地で「#BlackLivesMatter(黒人の命は大切だ)」と訴える抗議活動が過熱するなか、オバマ前大統領が6月1日、「いまこの瞬間を、本当の変化へのターニングポイントにするためには、どうすればいいか」と題したブログを公開しました。
「抗議活動か投票かの二択ではない」
オバマ前大統領はまず、いま全米に広がっている抗議の波は「何十年にもわたって、警察やアメリカの司法制度が改善されてこなかったことに対する切実な苛立ちの象徴」だと言い、「多くの人が平和的に、勇気と責任を持って抗議し、私たちを鼓舞してくれている」と称えました。
その上で、各地で暴動や略奪が起きていることに触れ、「暴力を認めたり、正当化したり、自分も加担したりするのはやめましょう。刑事司法制度やアメリカ社会に、もっと高い倫理規範に基づいて動いてほしいと願うのであれば、私たち自身がまずその規範をもとに行動しなければなりません」と訴えました。
そして、警察や司法制度に根付く人種差別によって繰り返されてきた今回のような事件は、選挙や政治参加では解決できないという声があったといい、「その意見に自分は全く同意できない」と反論しました。
「本当の変革を起こしたいのであれば、抗議活動か投票かの二択で選ぶのではありません。どちらもやらないといけないんです。真の改革を実行してくれる候補を当選させるために、問題への関心を高め、票を集めていかないといけないのです」
最後は、新型コロナウイルスの影響で貧富の格差が浮き彫りになり、アジア系の市民に対する差別的な言動がアメリカで相次いだこととの関連を示唆するような形で、こう結びました。
「この数カ月は新型コロナウイルスがもたらした恐怖と悲しみとともに、今もなお、偏見や不平等がアメリカ人の暮らしを形作っていることを思い出させる出来事が入り混じっていました」
「でも、様々な人種の若い世代によるアクティビズムを見ていると、希望を感じます。このまま前に進むことができれば、私たちはこの正当な怒りを、平和的、かつ持続的で、効果的な行動につなげ、この国がその最も高い理想に向けて歩んできた道のりのターニングポイントとすることができるでしょう」
「さあ、始めましょうか」
トランプ大統領、米軍で鎮圧も
フロイドさんの事件では、現場にいた警官4人が懲戒免職となりました。そのうち、フロイドさんを膝で押さえつけていた警官が第3級殺人罪などで起訴されています。
アメリカでは近年、黒人の市民が不当に容疑者扱いをされ、警察官の過剰な暴力によって死に至る事件が相次いで報じられ、警察官の差別的な行為に抗議し、「#BlackLivesMatter」と訴える社会問題になっています。
今回の事件では、全米各地でデモや抗議集会が行われ、都市部の一部地域では、暴動や抗議活動に便乗した略奪行為などが勃発しています。
トランプ大統領は、こうした過激な抗議活動は「アナーキストやANTIFA(反ファシズム運動を展開する勢力)」によって扇動されたものだと主張し、アメリカ軍をもって鎮圧することも辞さないという考えを示しています。
オバマ大統領のブログ全文はこちら(英語)から。