「お前と同級生だったら、最高の青春だったろうな」
父はよくそう言っていた。僕にとっても、父にとっても、親友みたいな関係だった。
2017年6月、父はがんで亡くなった。

ある日、母から「これ使えるんじゃない?」と期限切れの35mmフィルムを渡された。
フィルムカメラを始めて1年。父の死から数カ月。母にもらったフィルムに、友人と釣りに出かけた日や、阿蘇旅行の思い出を記録した。
現像された写真を見ると、そこにはなぜか自分が撮った風景と重なるように、幼い頃の自分の姿が焼き付けられていた。

遠い昔に家族と出かけた遊園地。メリーゴーランド。観覧車。トーマスの遊具。真っ赤なツツジ。
黄色い帽子をかぶり、保育園に通っていたころの自分がいた。その肩に両手を添え、母を抱きしめる父は笑顔だった。



写真には、同じフィルムのコマに複数回撮影し、画像を重ねる「多重露光」という技法がある。
母がくれたフィルムは、10年以上前に父が家族を撮るために、すでに一度使ったものだったとそのとき気が付いた。
知らず識らずのうちに、今は天国にいる父と僕が撮った風景は、1枚1枚の写真に重なっていた。
こんな奇跡があるのか。そう思った。少し、泣きそうになった。



他界した父が使ったフィルムで撮影したのは、大学生のびすけさん(@Uki_pic)だ。
写真をTwitterで紹介すると、2万件以上のリツイート、8万7千件以上のいいねが寄せられた。
母から貰った期限切れフィルム。 僕が撮って現像に出すと、父親が保育園頃の僕や母を一度撮っていたようで昔と今が繋がったような写真になりました。 僕がフィルムを始めてなかったら見つかることはなかったと思います。 今は天国にいる父と僕が… https://t.co/R54bQe4DSS
撮影した写真はプリントして祖父母に渡したいと、びすけさんはBuzzFeed Newsの取材に話す。
父が写した景色に懐かしさは覚えても、記憶にはない。
びすけさんは、Twitterにこう綴った。
「フィルムはタイムカプセルみたいで好きだなんて適当なこと言ってたけど、今回の件で本気でそう思えた」
「写真って素敵だ。もっともっと僕も、家族、恋人、友人を撮ろう」
