睡眠薬などの薬物を飲み物に混ぜるなど、相手の意識を奪ったり、抵抗できない状況にしたりして性犯罪に及ぶ「デートレイプドラッグ」の被害。
これまで十分に知られてこなかったその危険性について、内閣府が特設ページで啓発を始めた。
「気づいたら服を脱がされていた」
内閣府男女共同参画局・暴力対策推進室の担当者によると、「薬物やアルコールなどを使用した性犯罪・性暴力に関して」と題された特設ページを、2月16日に同局のホームページに開設した。
ジャーナリストの伊藤詩織さんが、飲酒後急に意識が朦朧とし、気づくとレイプされていたと訴え、2017年12月の国会でもデートレイプドラッグについて十分に実態把握や対策がなされているのか質問答弁があったことが契機となったという。
ページの冒頭では、「飲みものや食べ物に薬が混入された場合」を中心に、ワンストップ支援センターに寄せられた典型的な被害事例を紹介している。
「カラオケボックスで、トイレに立った後、残っていた飲み物を飲んだら、意識がもうろうとし、気が付くと服を脱がされた状態で、ソファーの上に一人で取り残されていた」
「仕事の打合せの際に出された飲み物を飲んだら、急に眠くなり、下半身の違和感で気が付くと、服を脱がされた状態で床に倒され、裸の人が自分の上に乗っていた」
「人からよく効く頭痛薬だとすすめられて飲んだら、気持ちが悪くなって、体が思うように動かなくなり、服を脱がされた。またその様子を動画に撮られた」
ページには、こうした被害は「性別を問わず起こります」とも明記されている。
担当者は「女性だけでなく、当然男性も被害に遭うことがあり得ると、性差なく伝える必要がある」とBuzzFeed Newsの取材に話す。
相談できる場所がある
特設ページを開設した最大の目的は、万が一被害に遭った時や被害が疑われたときに、安心して相談できる場所、環境があることを周知するためだ。
内閣府の2014年の調査によると、日本人女性の15人に1人が「これまでに異性から無理やりに性交された経験がある」と答えた一方、被害について「誰にも相談しなかった」人は7割近くを占めた。
そのため、警察や医療機関、支援団体への包括的な窓口となる全国41カ所の「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」を一覧で掲載した。
他にも、薬物の使用が疑われる場合は、証拠保全のためになるべく速やかに検査をする必要があることや、写真や動画をネットにアップされた場合の対策も解説。
「いつもなら酔わない量なのに記憶を失った」などの異変を気のせいだと考えたり、「お酒を飲んだのが悪い」「不注意だった」と自分を責めたりせずに、まずは相談して欲しいと呼びかけている。
もし友人や知人が被害に遭ったら…
ページの終わりには、友人や知人が被害にあった場合についても、こう記されている。
自分の大切な人が被害にあった場合、家族や周囲の方も動揺しショックを受け、どのように対応していいかわからないということもあると思います。
しかし、みなさんは被害にあった方にとって、安心を与えることができる存在です。できるだけ被害者を一人にせず付き添ってあげてください。
また、「なぜ断れなかったのか」「なぜ飲んだのか」と被害者を責めたり、被害者の話を否定しないでください。
まずは、被害者の不安を受けとめ、「それはあなたのせいじゃないよね」「あなたは悪くないよ」「信頼していた友達(先輩、知人など)だったのに、そんなことされてショックだったよね」などと声をかけてあげてください。
担当者は言う。
「ページを通じてまずは、何か体調がおかしい、いつもと違うと感じた時にもしかしたらそれはレイプドラッグを飲まされているかもしれないという危険性を知ってほしいと考えています」
「被害にあった場合も『記憶が曖昧だから相談しても意味がない』『周りの人に迷惑をかかるから自分で解決するしかない』と考える必要はありません。相談できる場所はあるんですよ、諦めないでと伝えたいです」