音に殺される。本気でそう思った。「聴覚過敏」のこと知っていますか?

    「世の中は音で溢れています。その全てが私を殺しにかかってきている。音に殺される。本気でそう思いました」

    「聴覚過敏って知っていますか?」

    そんな問いかけで始まる漫画が、Twitterで話題を集めている。BuzzFeed Newsは、漫画を描いたちゃぼさん(@p_ChAbO)に話を聞いた。

    セクハラ発言にも「泣き寝入りでした」

    「病気になってからずっと、会社のこと、病気のこと、この苦しみを誰かに分かってほしいと思っていました。聴覚過敏は、後天的に誰にでもありうることだと知ってほしいとも思っていました」

    「でもいざ描こうとすると、思い出して向き合おうとするのがつらくて怖くて、描けませんでした。最近になってようやく思い出しても大丈夫なようになり、描いた次第です」

    ちゃぼさんはBuzzFeed Newsの取材に、筆をとった理由をこう話す。

    仕事の愚痴と聴覚過敏① 漫画にしたので誰か一人でもいいかも私の愚痴を聞いて~

    朝から晩まで、営業先への訪問、飛び込み営業、採用の提案、子連れの家庭への学資の提案などで飛び回る日々。

    月の残業時間60~80時間のほかにも、休日や時間帯問わず電話をかけてくる顧客の対応に追われていた。

    取引先から「胸を触らせろ」「どうせ枕営業なんでしょ」などのセクハラ発言を受けても、「営業対象から外せないため、『何を言っているんですかーもう』くらいしか言えず、泣き寝入りでした」。

    食器の音、水の音、紙をめくる音…

    「聴覚過敏になった当初は、耳に入ってくるどんな些細な物音や声でも、全てが凶器でした」と話すちゃぼさん。特に苦しめられた音の種類を挙げ始めると、きりがない。

    「食器の音、水の音、紙をめくる音、子どもの声、お年寄りの低い声、高校生たちの笑い声、くしゃみの音、爪切りの音、ビニールのガサガサ音、ドアを閉める音などが、今でも脳に響きます」

    医師からは聴覚過敏がメインの感覚過敏、抑うつ状態との診断を受けた。とにかく身体を休めて、聞きたくない音を遮断するよう言われ、身体に合う薬探しから治療を始めた。

    2年ほど経った現在は、週に2~3日ほど外に出掛けられるようになった。友人とお茶したり、たまに耳栓をつけながらイベントなどにも参加している。

    「自分の身体は一つしかない」

    こんなに、こんなに見えない病気で悩んでいる人がいるなんて思っていなかった どうしたら理解ある社会になるんだろう

    漫画の終わりに、ちゃぼさんは「どうか本気で駄目だと思ったら他人の目を気にせず逃げることを決断してください」と書いた。

    だが、「逃げることの難しさ」も痛感していると話す。

    「今回たくさんのリプライを頂けて、こんなにもたくさんの方が見えない病気に苦しんでいることに気付き、私だけではないと思えました。また、本当に多くの温かい言葉や優しい励ましを頂けて、とても勇気付けられましたし、とても感謝しています」

    「漫画には描ききれなかったことですが、逃げることの難しさは痛感しております。それでも、一度壊れてしまったら、その先には取り返しのつかない人生が待っているかもしれません。だからこそ、自分の体は一つしかないということを、皆さんにお伝えしたいです」