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“時代遅れな中絶法” 以外の選択肢となるか。国内初の経口中絶薬「承認して差し支えない」 厚労省の専門部会が了承

薬を飲むことで人工妊娠中絶ができる「経口中絶薬」について、厚生労働省の専門部会は1月27日、国内での製造販売を「承認して差し支えない」との見解を示した。

厚生労働省の専門部会は1月27日、薬を飲むことで人工妊娠中絶ができる「経口中絶薬」について、国内での製造販売を「承認して差し支えない」との見解を示した。

一方、「社会的な関心が極めて高い薬のため、慎重な審議が必要」だとして、2月1日からパブリックコメントを実施し、部会の上位組織に当たる薬事分科会で、改めて審議をするという。

承認されれば、日本で初めての経口中絶薬となる。

臨床試験では93.3%が中絶に成功

今回、医薬品第一部会で承認が了承されたのは「メフィーゴパック」という、2つの薬を組み合わせて飲む製品。

妊娠9週までの初期妊娠が対象で、まず妊娠の維持に必要なホルモンの働きを止める薬「ミフェプリストン」を飲み、36〜48時間後に、子宮収縮を起こして内容物を排出させる薬「ミソプロストール」を服用する。

2021年12月にイギリスの製薬会社「ラインファーマ」が、日本での製造販売に向けて、承認申請していた。

国内で行われた臨床試験では、2つ目の薬の服用後24時間以内に、93.3%が中絶に成功。副作用として、約6割に腹痛や嘔吐などの症状が見られたが、ほとんどが軽度または中等度だった。

実際にどのような形で、薬を飲むことが想定されているのか。部会では、国内で十分な使用経験が蓄積され、安全に薬を使用できる環境が整うまでは、「緊急時に適切な対応を取れる医療機関で使用する必要がある」と判断。

そのため、入院が可能な有床の医療機関において、外来か入院で投薬することとし、母体保護法指定医師の確認を受けながら、その場で服用することとしている。

また、母体保護法では、人工妊娠中絶は「本人及び配偶者の同意を得て」行うものとされており、経口中絶薬が承認された場合も、同様に適用されるという。

パブコメは2月1日〜28日まで実施する予定。承認の可否とともに、服用方法も含めた薬の管理法について、市民から意見を募るという。

世界で広く認可、WHO「安全な中絶法」と推奨

経口中絶薬は1988年にフランスで初めて承認され、ミフェプリストンは少なくとも世界65カ国以上、ミソプロストールは90カ国以上で広く認可されている。

WHOは安全な中絶方法として、経口中絶薬の使用を推奨しており、必須医薬品にも指定している。

一方、日本ではこれまで、中絶を希望する場合は、医師による外科手術を受ける以外に選択肢がなかった。

日本産婦人科医会が2012年に実施した全国調査によると、中絶手術の約3割が子宮内に器具を入れて、内容物を掻き出す「搔爬(そうは)法」を用い、約5割が内容物を吸い出す「吸引法」と「搔爬法」を併用する形で行われていた。

WHOは「搔爬法」は安全性が低く、「時代遅れな手法」だとして、「吸引法」や中絶薬の服用に置き換えるべきだと呼びかけていた。