テスラを運転中に急病 「自動運転」で病院へ向かい助かる

    1週間前にモデルXを運転し始めたばかりだった

    テスラを運転中に急病を発症した米国の男性が「自動運転」機能を使って、病院へ向かい一命をとりとめた。技術の将来性を示す事例だが、自動運転のテスラ車では死亡事故も起きており、安全性をめぐる議論は続いている。

    Slateなどによると、男性は米ミズーリー州に住む弁護士ジョシュア・ニーリーさん(37)。7月26日、娘の4歳の誕生日を祝うため、スプリングフィールドの事務所を出て、車で自宅へ向かっていた。45分ほどの道のりだ。

    愛車はテスラモーターズのSUV「Model X」。1週間前に納車されたばかりだった。

    突然の痛み

    スプリングフィールドを出て8キロほど。ニーリーさんは突然、腹部の痛みに襲われた。けいれんかと思ったが、痛みはひどくなった。「かつて経験したことのない極度の痛みでした」と地元テレビ局KY3に話す。

    「止まって救急車を呼ぶより、車で病院に向かうほうが早い」。そう判断して自動運転モードを頼り、そのまま32キロほど高速道路を進んだ。出口をおりて数ブロックの病院までは痛みに耐えて自ら操作して向かい、ERで治療を受けた。

    診断は肺塞栓症。肺動脈に血液の塊(血栓)が詰まる病気で、病状が極めて重い場合は死亡することもある。幸いニーリーさんは、治療を受け、夜明け前には帰宅した。

    「自動運転のおかげ」

    「自動運転(オートパイロット)」と売り出すテスラ。だが、運転手なしに完全自走できるわけではない。

    消費者団体「コンシューマーレポート」は「誤解を招きやすく、潜在的に危険」として、自動運転と呼ぶのを止めるように求めている。日本の国土交通省も「運転支援技術」に過ぎないと注意喚起している。

    現在可能なのは、高速道路で自動で速度調整しながら車線を走行したり、方向指示器を出すだけで車線変更したり。事故を起こせば、責任は運転手が負う。

    それでも、ニーリーさんはテレビ局KY3にこう話した。

    「完璧なテクノロジーなんてないでしょう。評価基準は、より良く、より安全かどうかだと思います」

    「こんな体験をして、テスラに乗っていたことを感謝しています」

    5月には死亡事故も

    自動運転はまだ発展途上の技術だ。5月には、フロリダ州でテスラ車の死亡事故が起きている

    米国家運輸安全委員会の暫定報告書によると、セダン「Model S」が高速道路を自動運転モードで走行中、車線に進入してきたトレーラーと衝突した。Model Sは時速65マイル(約104キロ)制限を、時速74マイル(約119キロ)で走っていた。

    Model S(左)がトレーラー(右)と衝突した。赤い印は衝突した場所

    安全性をめぐる議論は続く

    この事故は米国で注目を浴び、自動運転技術の安全性をめぐる議論を巻き起こした。

    これに対し、テスラのイーロン・マスクCEOは7月20日、ブログ投稿で「待つことをせず、部分的な自動運転を実装している」と述べ、安全性をめぐる批判に次のように反論した。

    「正しく使った場合、人間が運転するよりもかなり安全性が向上する」「単にメディアの論調や法的な責任を恐れてリリースを遅らせることは、道徳的に許されることではない」

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