【米大統領選】いま知っておくべき6つのポイント あす最後のテレビ討論!

    「史上最低の大統領選」との声もある。

    次期米大統領は民主党のヒラリー・クリントン氏か共和党のドナルド・トランプ氏か——。10月20日午前10時(日本時間)から、大統領候補による最後のテレビ討論会が開かれる。

    2人が討論するのは六つのテーマ。

    • 負債と社会保障
    • 移民
    • 経済
    • 最高裁判所
    • 海外の紛争地帯
    • 大統領の資質

    一つのテーマについて15分ずつ、計90分の討論をする。ただし、大きなニュースが伝われば、テーマが変わることもある。

    「経済」と「移民」で対立

    トランプ氏は、企業減税や規制緩和をすれば、雇用が増え、経済成長すると主張している。対照的にクリントン氏は高所得者層の課税は強化し、中間層への投資を増やして、経済を活性化させると訴えている。

    移民政策では、トランプ氏はメキシコ国境に「万里の長城を作る」と豪語し、移民の不法入国に強硬な姿勢で人気を博してきた。クリントン氏は国境警備の強化を前提にしつつ、アメリカは移民の力で成長した国だという考えだ。

    性的暴行の自慢 vs.電子メールの隠蔽

    「大統領の資質」は、これまでも取り上げられた話題。過去に女性への性的暴行を自慢する発言が報じられたトランプ氏の弁明が焦点となった。

    トランプ氏は謝罪しつつ、クリントン氏の夫ビル・クリントン元大統領のほうが「もっとひどい」と反論して、泥仕合に。

    ただ、その後もトランプ氏にセクハラを受けたという女性が相次いで名乗り出て、報道を賑わせている。「史上最低の大統領選」「大統領以前に人間として許されない発言」という呆れた声も聞かれる。

    Watch: Access Hollywood addresses Billy Bush, Trump's comments on women https://t.co/7sZfsNwR6G

    クリントン氏は国務長官時代に公務で個人の電子メールサーバーを使っていた問題で、指導者としての資質が問われている。17日には、送受信したメールの機密指定を解くよう国務次官がFBI(連邦捜査局)に要請し、見返りに在外公館ポストを示す取引を持ちかけていた疑いが浮上。共和党の下院議長は「隠蔽工作だ」と批判している。

    百戦錬磨のビジネスマンと経験豊富な政治家——。2氏はどのように、自らのほうが大統領にふさわしいと有権者を説得するか。

    最後のテレビ討論会の司会はFOXニュースの司会者クリス・ウォーレス氏で、ネバダ大学ラスベガス校で開かれる。

    過去2回の討論会の話題は?

    トピックごとに要旨をまとめた。

    1. 日本に対する政策は?

    第1回討論で「日本」は6回も言及された。極めて異例だ。トランプ氏は日米同盟は片務的だとの持論を展開し、クリントン氏はトランプ氏の「日本が核兵器を持つことも構わない」との発言を批判した。

    クリントン氏「トランプ氏は、日本、韓国、サウジアラビアなど他国が核兵器を保有しても構わないと繰り返し言っている。核兵器の拡散を減らすために全力を尽くすというのが、アメリカの、民主党と共和党の方針だ。トランプ氏は東アジアで核戦争が起きても構わないとさえ言った」

    トランプ氏「我々は日本、ドイツ、韓国、サウジアラビアなどの国を防衛している。こうした国々は対価を払っていない。だが、払うべきだ。我々は多くのサービスを提供し、お金を失っているからだ。我々はすべての面で失っている。私が言ったのはこういうことだ。もしこうした国々が相応の負担をしないなら、今は40年前とは違うので、何百万台も車を売りつける化け物のような日本を守ることはできなくなることは十分考えられる」

    クリントン氏「大統領にとって言葉は重要だ。日本や韓国などの同盟国に対して、我々は相互防衛協定を結んでおり、それを遵守する、と再確認したい。アメリカが約束を守ることが不可欠だ」

    トランプ氏「日本に関するかぎり、全ての同盟国を助けたいが、私たちは何十億ドルも失っている。我々は世界の警察官にはなれない。世界中のすべての国を守ることはできない。彼らは我々に必要なものを支払っていない」

    クリントン氏「世界中の人々はこの大統領選に非常に注目し、アメリカの動きのヒントを得ようとしている。アメリカは頼れるのか? アメリカは強さと価値観に沿って世界を引っ張っていくのか? これは私の意図することだ。国内外の人々が頼れるリーダーになり、平和と繁栄を推進する決定を下し、国内外問わず弱い者をいじめる者に立ち向かう意思がある。世界を不安定にし、アメリカの国益と安全を脅かすような者たちに一切のチャンスも与えない」

    2. 女性を性的暴行?

    第2回の討論会の直前、トランプ氏が過去に「女性の性器を掴む」などと性的暴行を自慢する会話が報道された。トランプ氏は謝罪したが、国民の注目が集まった。

    司会者の鋭いツッコミをかわそうとするトランプ氏。

    ようやく「やっていない」と述べたトランプ氏。だがその後、トランプ氏に体を触られたという女性が相次いで名乗り出ている。トランプ氏は否定している。

    3. 電子メール問題

    クリントン氏も火種を抱える。国務長官時代に公務で個人の電子メールサーバーを使っていた問題だ。

    クリントン氏は第2回討論でこう弁明した。

    「あれは過ちであり、私は個人の電子メールのアカウントを使った責任を取る。一切弁明しない。申し訳なく思っている」

    「だが、私に批判的な人らが、誤解を招くような非難をしていると指摘するのも重要だと思う。1年にわたる調査の結果、私が使っていたサーバーを誰かがハッキングしたという証拠はなく、機密情報が間違った人たちの手に渡ったと証明できる証拠もない」

    「私は機密情報をとても真剣に扱う。常にそうしてきた。上院の軍事委員会にいたときは、多くの機密情報に関わっていた。国務長官としては、ビンラディンの追跡という最重要機密情報を扱っていた。だから、機密情報を真剣に扱うことに大きくコミットしている」

    4. 中間層を厚く?企業減税?

    2氏は経済政策で違った色を出す。経済活性化に有効なのは、トランプ氏が言うような企業減税か、クリントン氏が言うように中間層への配分重視か。

    クリントン氏

    「トップにいる人々だけでなく、すべての人のために動く経済をつくらなければならない。そのためには新たな雇用、所得が増える雇用が必要だ。また、経済をより公平にしなければならない。そのために、全国の最低賃金の引き上げから始め、女性の労働に対する同一賃金も保証する」

    「トランプ氏が提案したようなプランは、トリクルダウン経済(企業を優先する経済政策で、それによって成長の果実を行き渡らせる)の復活だ。しかも極端なバージョンになっていて、トップの数パーセントの人々に対して、かつてない大きな減税をすることになる」

    「私はこれを『トランプ・アップされた(「でっち上げる」という意味の英語)トリクルダウン』と呼んでいる。このような方法で経済が成長するのではない」

    「8年前、1930年代以来最悪の大不況にあった。主な要因は、富裕層への税金を大幅に削減した税制で、中間層に投資せず、ウォール街から目を離したことで、最悪の事態を招いた」

    「富裕層への減税は効果がなかった。アメリカで求められているのは、広範囲にわたる包括的な成長。トップの人たちへの優遇策を増やすことではない」

    トランプ氏

    「私のプランでは、中小企業も大企業も35%から15%に大幅な減税をする。それによって、ロナルド・レーガン時代から見たことがないような多くの雇用がうまれる。見事な効果を上げるだろう。企業がやってくる」

    「人々が気に入ってくれているのは、私が規制を削減することだ」

    「雇用が奪われいくのを阻止しなければならない。企業が海外に移転し、それに伴って従業員全員を解雇するのを阻止しなければならない」

    「雇用はアメリカから流失している。メキシコ、ほかの多くの国に流れている。中国がアメリカに何をしているか。我々の製品を製造している。自国の通貨を切り下げている。だが、中国と闘える人間は、この国の政府に1人もいない」

    5. 対ISIS(イスラム国)

    過激派組織「ISIS(イスラム国)」から奪還する作戦が続くイラクの第2の都市モスル。対ISISを巡る討論は、両者の安全保障の考え方の違いも浮き彫りにする。

    クリントン氏

    「ISISに対する空爆を強化し、アラブ及びクルド系の我々のパートナーを支援して、彼らがISISをラッカから追い出すようにしなければならない」

    「我々は前進している。米軍はイラクを支援している。1年以内にISISをイラクから追い出し、その後、シリアでもISISに圧力をかけられたらいい」

    トランプ氏

    「オバマ大統領とクリントン氏は、イラクから撤退するとき、真空地帯を作り出してしまった。そもそもイラクに入るべきではなかったが、イラクからの撤退する方法において大惨事を招いた。そしてISISが形成された」

    クリントン氏

    「ファクトチェックをしている人たちは音量を上げて、しっかり調べてほしい。トランプ氏はイラク進攻を支持した」

    「米軍の撤退期限について合意したのは(共和党の)ジョージ・W・ブッシュで、(民主党の)バラク・オバマではない」

    「軍事同盟NATOと協力し、テロリズムを注視している。中東の友好国とも協力している。その多くはイスラム教徒が多数を占める国家だ。トランプ氏は国内外のイスラム教徒を一貫して侮辱している。イスラム教徒の国家やアメリカのイスラム教徒コミュニティと協力する必要があるにもかかわらず」

    トランプ氏

    「クリントン氏は協力していくことを力説した。何年も協力してきたが、かつてない混乱を招いた。中東を見なさい。完全な混乱状態だ。あなたの指示の下で大いに混乱している」

    「NATOについて2点ある。第1に、NATOに加盟する28カ国の多くが応分の対価を払っていない。これにイライラする。我々は対価を求めるべきだからだ。我々は彼らを防衛しているのだから、協定と契約にしたがって少なくとも対価を払うべきだ。第2に、私が力説していることだが、NATOは時代遅れかもしれない。NATOはテロに焦点を当てていない」

    クリントン氏

    「NATOは軍事同盟であり、第5条と呼ばれるものがある。基本的にこう述べている。『1つの国への攻撃は全体への攻撃である』。それが唯一行使されたのは、9.11の後で、NATO加盟28カ国がアメリカと共にアフガニスタンに行き、テロと戦うと述べた。今もアメリカ側に立って戦ってくれている」

    6. イスラム教とアメリカ

    討論では、国内の根深い人種差別やイスラム教徒への嫌悪もたびたび取り上げられた。2氏の発言は対照的だ。

    「イスラム嫌悪が高まる中、国への脅威だというレッテルを張られた人たちを、選挙後、どう支援しますか?」。2回目の討論で、会場のイスラム教徒の女性が聞いた。

    トランプ氏

    「イスラム嫌悪についてはその通りで、恥ずべきことだ。だが、やるべきことが一つある。なぜなら問題が存在するからだ。好きか嫌いかに関わらず」

    「イスラム教徒は、問題を見たら、通報しなくてはならない。通報しなければ、我が国にとって非常に難しい状況になる。(銃乱射事件が起きた)オーランド、サンバーナディーノ、世界貿易センターの事例があるからだ。海外ではパリもあった。恐ろしい。イスラム過激派のテロリストたちだ」

    トランプ氏は昨年12月「我が国の代表者たちが状況を把握できるようになるまで、イスラム教徒のアメリカへの入国を完全に封鎖することを求める」と発言している。司会者は討論会でこれを取り上げ「『宗教テスト』は間違いだったのか?」と問いただした。

    トランプ氏

    「イスラム教徒の禁止については、特定地域からは極めて厳しい身元審査をするという方式に変化した」

    クリントン氏

    「私が描くアメリカは、一生懸命働き、やるべきことをやり、コミュニティに貢献すれば、誰もが居場所がある国。子どもや孫たちにとっても、そういうアメリカであってほしい」

    「イスラム教徒についてのトランプ氏のデマ的な発言は、近視眼的で危険でさえある。アメリカのイスラム教徒には、最前線で私たちの目となり耳となってもらわねばならない。アメリカ中の多くのイスラム教徒のグループと協働してきた。社会に求められ、受け入れられ、国の一部となり、国の安全保障の一翼を担っていると感じることが、どんなに重要かという声を聞いてきた。そして、それをお願いしたい」

    「ISISを打倒するつもりだが、大半のイスラム教徒の国々と連携して行うことが重要だ。現在、こうした国々の多くが、トランプ氏の発言を聞いて、なぜ自分たちがアメリカ人と協力すべきかと疑問視している。それは、ISISやテロリストたち、暴力的なジハード主義のテロリストたちを利する」