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この「小学校」がすごい!完璧バイリンガル プレゼン、ディベートお手の物

「関西国際学園」は日英バイリンガル教育。神戸にあり、国際バカロレア認定を受けた。

日英バイリンガルで教える国際バカロレア認定を受けた「小学校」がある。150人が通うまでに支持を集め、著名人も応援する。成長の裏には、国際社会で活躍するリーダーを育てようとする女性社長の強い意志があった。

海風がさやさやと届く神戸市の関西国際学園初等部の校舎。6〜12歳児が学ぶ。

でも実はここ、小学校ではない。株式会社が経営するからだ。国は「株式会社=不安定」として、特区外でこれを禁じている。「私立」というポジションを得るには、学校法人にならなければならない。

そうすると優秀な外国人教師でも日本の教員免許を持たないと教えられない。学習指導要領に縛られずに教育内容を刷新するのが難しくなる。

保護者のニーズがあるのに、踏み出さなくていいのか? 関西国際学園の学園長であり、同名の会社社長である中村久美子さんは株式会社にこだわり、教育に情熱を傾けてきた。

30年前と変わらない幼稚園

大手英会話学校で働くワーキングマザーだった中村さん。1999年秋、保育所に預けていた長男(20)を「当然のように」幼稚園に入れるつもりでいた。園服も買い、入園金も払った。

だが、「一応」見学した園で驚愕する。壁に飾られた工作、練習する歌は、自分が通った30年前と変わらなかった。「右手にハサミを持って、左手に紙を持って……」。教諭が手取り足取り教え、失敗をさせないように先回りしていた。

かつて勤めた大手電機で担当した新人研修で「次、何をしたらいいですか?」と指示を待ち、失敗を怖がる新入社員の姿とだぶった。企業は日々の変化を拒めば、市場競争の中で埋没するのに……。

理想の園を探して、関東のインターナショナルスクールにも足を運んだ。でも、食堂のドアを足で閉め、ポテトチップスをほおばる姿に違和感を覚えた。

息子をアメリカ人やカナダ人に育てたいわけではない。敬語も使えないようでは、日本企業で働くのに苦労する。

母国語の日本語、日本の歴史や文化をきちんと学ばせたい。そして、英語を自在に操る能力を身につけさせたい。それでこそ国際舞台で活躍できる。

「ないなら、つくろう」

関西国際学園の始まりだった。

スタートは乳幼児から

大阪府内の実家を改装した。園庭をつくるため、業者に庭の改修を頼んだら、手入れの行き届いた松の木々が切り倒され、大きく育った池の鯉たちが死んだ。業者の手違いだった。母親は激怒したが、中村さんの意志は固かった。

2000年1月、幼児ら10人で乳幼児クラス(認可外保育施設)をスタートした。株式投資でためた自己資金をあてた。

「高校や大学からではなく幼児期から教育を変えようと思うのは、幼子と寄り添う時間の長い母親ならではかもしれません」と中村さん。

2002年、初等部を立ち上げ

長男が小学校に上がる年齢になり、2002年4月、「小学校」を児童5人ほどで開校した。関西国際学園初等部のスタートだった。

小学校で習得すべき内容を日英の両言語で教える。

多くのインターナショナルスクールと違うのは、日本語と英語を半分ずつの割合で教科を教えるところ。学校の掃除は子どもたちの担当で、空手が必修だ。

子どもたちは、6年生にもなれば、小説「ハリー・ポッター」シリーズを原文で読みこなす。卒業までにほぼ全員が英検2級に合格する。高校卒業レベルだ。

学園は、順風満帆だったわけではない。当初は月200万〜300万円の赤字。児童より教師が多かった。

部下9人が子ども30人をつれて、離反したこともあった。乳幼児クラスの校舎を急拡大させたころだ。スタッフとの関係を見つめ直した。

国際バカロレア

大きな飛躍は2015年4月。日本でも注目される「国際バカロレア(IB)」の認定校となった。日英両言語を半々の割合で教える認定校は、世界でここだけだ。

IBとは、国際バカロレア機構(本部・スイス)が認定するプログラムで、児童生徒に自ら問題を探させ、考えさせ、解決法を見つけさせる教育法に特徴がある。詰め込み型の正反対だ。

国際的に通用する資格で、初等(3〜12歳向け)、中等(11〜16歳)、ディプロマ(16〜19歳)などからなる。関西国際学園はこの初等で認定を受けた。

国も、グローバル化に対応した教育を進めようと、国際バカロレアの認定校や認定候補校を、2018年に200校まで増やす目標を掲げる(2016年12月現在、認定校は60)。

制度の狭間に

実は、バカロレア認定で、不思議なことが起きた。文部科学省からインターナショナルスクールとして数えられるようになった。どういうことか?

実は、そもそも「インターナショナルスクール」に法律上の定義はない。ただ、文科省は①バカロレアなどの国際機関の認定校、②日本インターナショナルスクール協議会の会員校、③都道府県が認可した外国人学校、を想定しているという。文科省は全国46校を把握している(7月現在)。

関西国際学園は①なので、インターナショナルスクール。でも株式会社が運営しているので小学校として認められないまま。だから、児童を初等部に通わせる親は「就学義務違反」に問われる。

これを取り締まる法律がつくられたのは1947(昭和22)年。児童労働に使われて学校に通えないような子どもをつくらないのが目的だった。文科省によると、1956(昭和31)年を最後に、罪に問われた例はないという。

硬直した教育制度。グローバル化する教育の現状に追いつかない。

5年生が市長インタビュー・移民についてディベート

学園の授業をのぞいてみよう。学園は日本人と外国人の2人担任制で、20人学級だ。

年号を覚えるだけの歴史、黒板を写すだけの国語の授業はない。子どもたちは先を争って手を挙げ、発言する。

例えば、UOI(ユニット・オブ・インクワイアリー、探究学習)と呼ばれる授業。5年生が習うテーマの一つに「個々の主体的な政治への取り組みが社会を変える」がある。社会科に相当する。

民主主義の歴史や選挙制度について学ぶ。でも授業は教室で終わらない。地元・兵庫県西宮市長を市長室に訪ね、仕事についてインタビューした。

視点を世界に移し、移民問題も扱う。

日本が移民を受け入れるのに賛成か、反対か? 自分が移民の子どもだったら? 政府の立場だったら? ディベートで掘り下げる。

故・杉原千畝氏のドキュメンタリーを撮った監督にも話を聞いた。杉原氏は、ナチス・ドイツの迫害から逃れるユダヤ系難民らにビザを発給して命を救ったことで知られる。

徹底して子どもに考えさせる——。学園の教育方針は乳幼児から一貫している。

だから、年長の男の子は、園児の前でこんなプレゼンをした。

「中国の人を悪く言う人がいますが、中国語を教えてくれるぼくの先生はいい人です。だからみんなが悪い人ではありません」

英語だ。

リーダーを育てる教育を

初等部は少人数制。株式会社なので、補助金はもらえない。税制優遇もない。そのため、授業料だけで年150万円。ニュージーランド留学は必修で、60万円ほどかかる。簡単に出せる金額ではない。しかも小学校として認められないまま。

それでも保護者はなぜ子どもを通わせるのだろうか?

「教室に座らせられて『これを覚えて!』なんて授業はない。私も通いたかった」。こう笑うのは、子ども二人を通わせる母親だ。

「なんでもやってみたい、知りたいと思う子どもの欲求を満たせる。うちの子はここの方が向いていると思って、親の責任で入学を決めました」「教育はこれから変わります。(中村さんの)チャンレンジに賛同したい」

国を待たない

中村さんは国が変わるのを待たない。「日本人として世界中の人たちと渡り合うリーダーを育てたい」という信念で、新しい教育を切り開いてきた。

初等部の1期生は今、大学生。国内外の中高に進学し、秋田国際教養大、英ロンドンのインペリアル・カレッジ、ハンガリー国立大医学部などで学んでいる。

関西国際学園は2016年4月、中等部も開校した。いま、乳幼児〜13歳、妊婦も含め計1200人以上が通う。関西と都内の12キャンパスに広がる。

新しい教育

中村さんの教育理念に共鳴する教育関係者も増えた。宮本亜門さんや堀江貴文さんが講演に訪れる。脳科学者の茂木健一郎さんは学園誌にこう寄稿した。

「日本人としてのアイデンティティを育みつつ、国際性を身につける、学びの『ベスト・ミックス』がここにあります」

講演でエールを送った。

「関西国際学園は文科省の補助を受けてないから苦労してるみたいだけど、いいんだよ。新しい教育はそういうところから始まるんだから」

バズフィード・ジャパン アダプテーション・スタッフ

Saki Mizorokiに連絡する メールアドレス:saki.mizoroki@buzzfeed.com.

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