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音速の夢の乗り物「ハイパーループ」がスゴい

鉄腕アトムの世界がすぐそこに。

人を乗せたカプセルがチューブの中を音速で走る「Hyperloop(ハイパーループ)」。鉄腕アトムの世界のような近未来を感じさせる次世代交通システムだ。今年、米カリフォルニア州で試験トラックの建設が始まる。プロジェクトを進めるハイパーループ・トランスポテーション・テクノロジーズ(HTT)のダーク・アルボーンCEOが、夢の乗り物の舞台裏を明かしてくれた。

3月に東京であった起業イベントPioneers AsiaにアルボーンCEOが登壇し、BuzzFeed Newsのインタビューにこたえた。

ハイパーループは、真空に近い状態まで減圧したチューブの中を人が乗ったカプセルを浮かせて走らせる。最高スピードはなんと音速(時速約1200キロ)だ。 東海道新幹線(時速285キロ)の約4倍で、リニア中央新幹線(時速500キロ)も上回る。

「都市ではゆっくり、外へ出たらスピードアップします。しかも、太陽光や風力など再生可能エネルギー100%。ブレーキの回生エネルギーも使ってね」

「支柱の上に設置するので、土地を買収する費用も抑えられるし、地震にも強い。支柱は既存の鉄道に沿って建てることもできます」

サンフランシスコとロサンゼルスの間を30ドル(約3300円)、36分でつなぐと宣言。日本なら東京-新大阪ほどの距離だ。

「輸送能力は航空機の5倍。8年以内に黒字化できます。太陽光など再生可能エネルギーの発電効率は上昇し続け、安くなり続けるでしょう」

「窓はありません。でも、バーチャルリアリティーを使って車窓を映せば、旅の感覚を持ってもらえます。例えば、映画『ジュラシックパーク』の世界を映すこともできる。配給会社にスポンサーしてもらって、切符は無料にできるかもしれない。乗客は楽しめるし、会社はマーケティングになる」

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ハイパーループは、SpaceXやテスラ・モーターズCEOとして日本でも知られる起業家イーロン・マスク氏が2013年に構想を公表し、投資家らがいち早い実現を競う。HTTとハイパーループ・テクノロジーズの2社が大規模な試験走行を計画している。

「サンフランシスコとロサンゼルスの間にあるクエイ・バレーに約8キロの試験トラックを敷きます。今年半ばには姿を現わすでしょう。2018年末〜2019年初に完成する予定。ぜひ、みなさん、来てください」

今年3月、ついに商業化も発表した。場所は東欧・スロバキアだ。

「スロバキア政府と契約したばかりで、スロバキアのブラチスラバに建設します。2020年までに最初のハイパーループが登場します。将来的には(オーストリアの)ウィーンを約8分でつなぐことも可能かもしれない。(ハンガリーの)ブダペストともつなぐ」

ハイパーループは人々の居住環境や働く場所を劇的に変えるという。かつて、鉄道が生活を変えたように。

「中心部からは数百キロ離れていても、10分で着く。家を安く購入でき、緑豊かな地域で子育てできます。都市と都市のつながりが強くなり、家族のつながりも強くなるでしょう」

「交通渋滞や、北京やムンバイなどの大気汚染は大きな課題です。空港は人であふれかえり、旅行は疲れますよね。持続可能なシステムに移らなければならないと思います」

HTTは会社であって、会社でない。常勤は2人。技術者は夕方や週末に研究所にやってくる。報酬はストックオプションだけ。アルボーンCEOは新しい会社の形を「クラウドストーミング」と呼ぶ。

「ハイパーループの胸踊ることは、スピードだけではないんです。ビジネスモデルにもあるんです」

「イーロン・マスクが構想を公表した後、会社を立ち上げました。ストックオプションと引き換えに、最低週10時間は働く条件で参加を呼びかけると200人から応募がありました。いま、520人以上に増えました」

人々が働くのはお金のためだけでない。最新の技術に携わって未来を創るワクワク感。刺激的な同僚との議論。人間としての成長の機会がもたらされる。

「あなたはiPhone、Macを使っていますね。Appleは広いファン層を獲得することに、少なくともこれまでは成功してきました。ユーザーはワクワクしたからです」

「ファンを巻き込むのはどんな会社でもできることなんです。ブラックベリー社が『わたしたちを助けてください。参加してください。よいアイデアがあったら教えてください』と呼びかけていたら、うまくいったかもしれない」

プロジェクトに関わる人たちの背景は多様だ。AppleやCisco SystemsといったIT企業のプロダクトマネジャーや弁護士、PR専門家から大学教授まで。

「毎日平均5人の応募があります。われわれはムーブメントなんです。確かにアメリカの会社ですが、チームメンバーは、ドイツ、フランス、スペイン、中国、インド、世界中にいます。多くの関係者が興味を持つような解決策が集まります。投資家からも連絡が絶えません」

「ほら、このスマホの画面を見てください。ある国の大統領から突然、こんなダイレクトメッセージが来たんですよ」

買い物から動画配信、教育まで、なんでもオンラインで済む時代。だから、会社もオンラインでできないか? それがHTTの中核だ。

「われわれはすべてをオンラインで済ます時代にいます。洋服を買い、彼女を見つけ、離婚もできちゃいます。会社だけがオンラインでできないっていうのはバカバカしい」

「最高のプロダクトを最高の才能を持つ人たちと作り上げたいんです。自分と同じことに情熱を持つ者同士が意見し合い、協力しあう。働くなら、最高の同僚と、でしょう」

「例えば、近所にいるニュージャージー州の二流のデザイナーよりも、日本に最高のデザイナーがいれば、ネットで連絡をとって、一緒に働きたいでしょう」

技術やアイデアの核心を公開して、さらなる知恵を集め、革新を起こす「オープンソース」。これが夢の乗り物を実現する推進役になっているという。

「ソフトウェア産業でうまくいったオープンソース。スマホもパソコンもそれで発達しました。この方法論を使っています。人々は情熱によって参加。質問し、フィードバックをもらい、アイデアをシェアします。とても強力なモデルなんです」

「(クラウドファンディングの)キックスターターからインスピレーションを得ました。人々は支援することに情熱を傾けます。応募してきてくれる人は、ただ技術や知識をもたらすだけじゃない。資金を持参してくれることすらあるんです」

こうして築かれるクラウドのコミュニティーによって、技術や知恵の粋が極まる。

「支柱、チューブ、真空の作り方。必要な技術はすでに存在しています。世界中の研究室にあるんです。しかも、その研究は政府が助成していることが多いんです。アメリカは研究開発に毎年数千億ドル(数兆円)も使っているんですよ」

「多額の資金が投資された成果も商業化できずに、棚ざらしになっています。開発された技術は数え切れず、どこに何があるのかわからない状態です。クラウドとしてのコミュニティーが、この中から役に立つ技術を探し出してきてくれるんです」

「当初は他の目的、軍事目的で開発された技術でも、応用できるかもしれない。まったく想定外の分野に適用できる技術もあるんです」

「クレイジーなアイデア、素晴らしいアイデアも持ち込まれます。例えば、切符が収益化に最適か、支柱は本当に必要かといったようにね」

眠るビジネスチャンスの発掘は宝探しのようだ。例えば、価格を変動させて、輸送を最適化してみる。

「行き先や交通手段といった乗客の情報を活用できるようになりました。私の小さい頃、ドイツでは暑くなると、学校から一斉に下校したものです。バス停は生徒でいっぱいになり、同時に最初のバスに乗ろうとします。でも、次のバスは空っぽ」

「いまやIT技術で、誰がいつどこに往復するかによって、最適なバスに案内できます。時間があって、次のバスまで待てれば、安くしますよ、というように」

自前主義にこだわって、新興国の台頭を許した日本の電機産業とHTTの姿は対照的だった。アルボーンCEOが講演とインタビューで、こう強調した。

「起業に必要なのは、自分と同じことに情熱を傾ける人々を探すことです。わたしたちは、会社をつくっているのではない、ムーブメントを起こしているんです」


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バズフィード・ジャパン アダプテーション・リポーター

Saki Mizorokiに連絡する メールアドレス:saki.mizoroki@buzzfeed.com.

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