5年前フリーターだった僕はいま、被災地の食材を売っている

    東京にいても、東北は感じられる。

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    東京赤坂にある浜焼きバル、Tregion。

    3月11日。東日本大震災から5年という日を、どのように迎えればよいのだろう。東京にいて、あの日のことを考えることはできないのか。

    ぼんやりテレビを眺めていると、あるお店が映し出された。「震災5年を前に、東京赤坂にあるこちらのーー」。東北ゆかりの飲み屋に行く。それも関わり方の一つだと気づいた。

    思い立ってお店に電話してみた。「お話をお聞かせいただけませんか?」

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    快く迎え入れてくれた店長の吉田慶さん(32歳)。震災で人生が変わった一人だ。東北各地から仕入れた食材で、さまざまな料理を提供している。

    「『これをとるために命かけたんだよ』と漁師に言われると、味だって全然違うじゃないですか」。

    2013年11月に店を開いた。東北各地の生産者と情報交換し、時には現地に行って自ら、漁船に乗る。

    メニューには東北産の食材が並ぶ

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    宮城県石巻から仕入れている牡蠣

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    三陸直送のホタテ

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    南三陸産わかめしゃぶしゃぶ

    順風満帆な人生ではなかった。高校卒業後、大学に進学。20歳のとき、医学部を目指そうと思い、中退した。勉強の合間の気晴らしに雀荘に通うようになった。徐々に、麻雀にのめり込んでいった。

    スタッフに誘われるがままに、雀荘でアルバイトを始めた。スロットで日銭を稼いだ。こんな日々に疑問を感じていたが、やめるきっかけもなかった。

    何かやりたい自分と、やれない自分。モヤモヤとした苦しみを胸に抱えていた。

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    店内に掲げられた気仙沼の旗。

    抜け出すきっかけになったのは震災だった。2011年4月、吉田さんは「何かの役に立ちたい」と東北に向かった。

    たどり着いた岩手県内の光景に、衝撃を受けた。グラウンドに積まれたがれきを見た吉田さんは「撤去作業は絶対に終わらないと思った」

    それでも、ボランティア仲間と作業を続け数カ月。がれきの山はグラウンドに変わった。そこで子どもたちが遊ぶ様子を見た。

    大学を中退してから、うだつのあがらないフリーター生活。みんなで何かを成し遂げる、初めての経験だった。

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    壁にかけられた「三陸」の文字。

    吉田さんはボランティア活動で知り合ったNPO関係者に誘われて、NPO職員となった。ボランティア活動の仲介や、被災地の食材を各地で物販する生活を送るようになる。その時に、知り合った生産者がいまは取引相手だ。

    やがて、吉田さんはある問題に直面する。「費用の問題もあって、継続して職員としていられる人は少ない。被災地に関わるなら、ビジネスをうまく展開するしかない」。

    思いついたのが、いちばん身近な「食」だった。

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    牡蠣のアヒージョも

    店を開こうと思ったが、料理はしたことがない。酒も飲まない。「とりあえず築地なのかなあ」と、当初は仕入れ方も分からず市場をウロウロしていた。

    オープン2週間前に、スタッフが姿を消した。置き手紙には「ついていけない」。生産者のアドバイスにも耳を貸さなかった。熱意が空回りしていた。

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    地ビールも揃えている。

    1年後。仲間から「この店が美味いよ」と聞き、実際にお店に足を運んだ。美味かった。素直に意見を取り入れてみると、少しずつ経営がうまくいきはじめた。

    岩手県産果実を100%使ったワインや、陸前高田のゆずを原料とした地ビール。東北に移住した仲間らが教えてくれた。

    生産者が店に来て、お客さんが食べているところを見る。「そこで喜んでくれるんですよ」と、笑みを浮かべながら話す。

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    福島県相馬市の卵を使った卵かけごはん。米は南三陸産

    震災から5年を迎える。「関心のある人は減っていると思います。そんな、いまだからこそ『復興のために…』という文脈ではなく、日常の中で食材の素晴らしさを伝え、東北産の食材を食べることが大切」だと感じる。

    支援したいと思っていても、継続的に関われる人は少ない。

    「それでも、食べることを通じてパワーを現地に伝えることはできます」

    吉田さんは照れくさそうに笑って、話す。

    「東京で、多くの人の『窓口』になれたらと思います」

    バズフィード・ジャパン コントリビューター/ライター

    Contact Ryo Yamaguchi at d.tettu@gmail.com.

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