「あえぎ声」で睡魔に勝つ? トラック運転手の眠気対策が斜め上すぎた

    長距離運転や深夜運転が多いトラックドライバーにとって、「睡魔」との闘いは死活問題。『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)の著者で元トラック運転手の橋本愛喜さんに、あの手この手の眠気対策を聞いた。

    長距離運転に従事するトラックドライバーの大敵といえば「睡魔」。トラック運転手はどうやって眠気と闘っているの?

    トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)の著者で、元トラック運転手の橋本愛喜さんに聞いてみた。

    日本の物流を支えているのは…

    ――深夜早朝も含めて長時間運転するトラック運転手の皆さんにとって、眠気対策は死活問題だと思います。何かいい方法はあるのでしょうか。

    ずばり、スルメです! 日本の物流はスルメが支えています(笑)

    ――ええーっ、スルメですか!?

    以前アンケートを採った時に、ガムよりも断然スルメという回答が多かったんですよ。

    ただ、歯が弱い人は噛めないっていう難点はありますけどね。トラックドライバーは歯が悪い人も少なくない。なかなか家に帰れず、歯医者さんに行けないという方もいるので。

    「俺、スルメかめないんだよ」と言われて、なるほどと思いました。

    チェーンスルメ

    ――ガムではダメなのでしょうか。

    ガムだと10分も噛んでると味がなくなっちゃうので。スルメはずっと果てしなくスルメの味がするじゃないですか。

    ――そんなに長時間スルメを噛んでいるということですか。

    やってます、やってます。眠い時は「チェーンスモーカー」じゃなくて、「チェーンスルメ」みたいな。

    ドライバーを悩ませるトイレ問題

    ――てっきりコーヒーとかが人気なのかなと思ってました。

    慣れちゃってるんじゃないですか。「コーヒーなんかじゃ眠気なんて飛ばねえよ」っていう人たちもいますし。

    もちろん好きで飲んだり、気分転換で飲んだするする方はいらっしゃるんですけど。眠気覚ましとしてはあんまり飲まないかもしれません。

    アンケートだと、コーヒーよりエナジードリンクを飲むという人が多かったですね。

    ちなみに私がトラックで長距離運転をしていた時は、コーヒーもエナジードリンクも飲みませんでした。利尿作用が出てきちゃうので。

    男性もそうですけど、女性は特に大変。コンビニにトイレがあればまだいいですが、あったとしてもトラックを停められるスペースがない場合には我慢しないといけません。

    「あえぎ声を聞く」人も

    ――なかなかトイレに行けないのはつらいですね。食べ物、飲み物以外だとどんな方法がありますか。

    頭が傾くとアラームが鳴る「居眠り防止センサー」なんていうものもありますね。勾玉みたいな形をしていて耳にかけて使うんです。

    私も実際に買ってみました。900円ぐらいだったかな。音が出ないようにバイブレーションにも切り替えられるので、会議や図書館とかでも使えます。ハッと目が覚めますよ。

    男性ドライバーのなかには「あえぎ声を聞く」という人もいるみたいです(笑) スマホとかで流すんでしょうね。

    睡眠欲を性欲で打ち負かすみたいな、すごい世界。私は女性なので、そういうやり方があるのは知らなかったですが…。

    ――すごい話ですね(笑)

    とはいえ一番は、睡魔に逆らわずに「いったん寝る」ことだと思います。

    〈橋本愛喜〉 フリーライター。元工場経営者、トラックドライバー、日本語教師。20代で父親の工場を継いで大型一種免許を取得。トラックで日本中を走り回った経験を生かし、『トラックドライバーにも言わせて』を上梓。ブルーカラーの労働問題や災害対策、ジェンダーをめぐる社会問題などを中心に執筆している。