「送料無料」なんて言わないで。元トラック運転手がカチンとくる理由

    消費者心理をくすぐる「送料無料」という甘美な誘い文句。しかし、『トラックドライバーにも言わせて』の著者で元トラックドライバーの橋本愛喜さんは、違和感を抱いているという。

    いらすとや / Via irasutoya.com

    「送料無料」――。消費者からすると、なんとも魅力的な響きだ。

    だが、『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)の著者、橋本愛喜さんはこの言葉に異議を唱える。

    いったい何が問題なのか? 元トラックドライバーでもある橋本さんが持論を語った。

    消費者には嬉しいけれど

    新潮社 / Via amazon.co.jp

    『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)

    ――通販サイトなどの「送料無料」。消費者的には非常に嬉しいサービスですが。

    みんな「送料無料」という言葉を使うけど、実際には無料ではなく運賃がかかっています。

    消費者は嬉しいかもしれませんが、トラックドライバーの苦労を全部「無料」と言われているようでカチンときますね。

    輸送料ってボリュームディスカウントで「これぐらいの荷量なら、もうちょっと安くしてよ」って簡単に交渉の対象になるんですよ。

    (机の上の手帳を手にとり)たとえばこの手帳。手帳そのものの価値を下げるんじゃなくて、送料を下げて全体的なコストを下げようとする。

    それ、ちょっと違くない? 足代を下げてどうすんねん!って。それはまた別の話なのに…っていう、もどかしさがあるんですよね。

    私としては「送料込み」とか、「送料弊社負担」みたいな言葉に統一してくれたらいいな、と思ってます。

    倉庫作業も担うドライバー

    Lise Gagne / Getty Images

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    ――「送料無料」という言葉の裏で、現場のトラック運転手さんはどんな苦労をされているのでしょう。

    トラックドライバーの仕事は、安全に無傷で荷物を運ぶということで完結しないといけないのに、実際には仕分けやピッキングなどの倉庫作業までやらされている。

    荷主のなかには、トラックの荷台を「倉庫代わり」だと思ってる人たちがいるんです。効率化を向上させるために、敷地の環境をクリーンにして無駄な物を置かない。

    その無駄な物をどこに置くかといったら、トラックの荷台です。「ジャストインタイム」とか「カンバン方式」といって、トラックの到着は早すぎても遅すぎてもいけないんですよ。

    せっかく早く着いても

    Ryosuke Kamba / BuzzFeed

    元トラックドライバーの橋本愛喜さん

    ――遅刻がまずいのはわかるのですが、早めの到着もダメなのですね。

    トラックドライバーはすごく焦って行くんだけど、今度はその時間を無駄にしなきゃいけない。半日ぐらい待ってる人が大勢いますね。

    前の人の作業時間が長くなればなるほど、待つトラックも増える。

    こうした荷待ち時間に応じて「荷待ち料」(待機時間料)を支払うよう、国交省も荷主に呼びかけていますが、実際には「なかには払っている業者さんもいるな」ぐらいの感覚です。

    再配達の不合理

    Eri Miura / Getty Images

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    ――せっかく急いで目的地へ行ったのに、現地で半日時間を潰す…なんだか矛盾を感じます。

    ですよね。そのうえでさらに、再配達のことを考えてみてください。

    もちろん、一次輸送(長距離の大量輸送)と二次輸送(近距離の小量輸送)で働き方は違いますが、一次輸送の長距離ドライバーさんがいるからこそ、二次輸送の宅配の荷物がある。

    皆さんの手元に届く荷物も、一次輸送のドライバーさんが一生懸命時間を調整し、棒に振りながら運ばれているものです。

    それを何度も再配達する。全体の16%(2019年4月、都市部では18%)を再配達が占めています。再配達は何回しても無料ですから。

    ――もしかしたら、最初からそこまで急がなくてもよかったのかもしれないですね。お陰で私たちは便利さを享受できているけれど、トラックドライバーにそのしわ寄せがいっていると。

    はい。すごく軽視されてるなって感じちゃうんですよね。

    Ryosuke Kamba / BuzzFeed

    橋本愛喜さん

    〈橋本愛喜〉 フリーライター。元工場経営者、トラックドライバー、日本語教師。20代で父親の工場を継いで大型一種免許を取得。トラックで日本中を走り回った経験を生かし、『トラックドライバーにも言わせて』を上梓。ブルーカラーの労働問題や災害対策、ジェンダーをめぐる社会問題などを中心に執筆している。