2019年3月12日

    「コカインはセレブのドラッグ」 ピエール瀧容疑者の逮捕、石丸元章氏が解説

    「覚醒剤が焼酎だとすれば、コカインはシャンパンみたいな感じ。効き方も、シチュエーションも違うんです」

    俳優・ミュージシャンのピエール瀧容疑者(51)が3月12日、麻薬取締法違反の疑いで、関東信越厚生局麻薬取締部に逮捕された。

    NHKなどの報道によると、尿検査でコカインの陽性反応があり、本人も使用を認める供述をしているという。

    そもそもコカインとはどんなドラッグなのか。『スピード』『アフター・スピード』で自身のドラッグ体験をつづったジャーナリスト・作家の石丸元章さんに解説してもらった。

    時事通信

    ピエール瀧容疑者

    覚醒剤よりマイルド

    ――突然の逮捕に衝撃が走っています。

    驚きました。同世代ですし、電気グルーヴや映画、ドラマでの活躍をまぶしく見守ってきたので…。なんでやっちゃったんだろう。もったいないですね。

    ――コカインはどういう薬物なのでしょうか。

    コカという植物の葉っぱからとれる、薬理作用のある物質です。覚醒作用と多幸感が特徴。覚醒剤のようにガツンとくる激しさはなく、マイルドな効き方をします。

    覚醒剤は原材料さえあれば、中国や北朝鮮、日本でもつくれますが、コカインは南米などコカがとれるところでしかつくれません。このため、日本国内の流通量は少なく、値段も高価です。

    パウダーを鼻で吸引する「スニッフィング」という形で摂取します。効果は2時間ほどと短い。「チャーリー」「コーク」などの隠語で呼ばれています。

    映画「スカー・フェイス」でアル・パチーノがコカイン中毒者を演じるなど、フィクションの世界でも度々描かれてきました。

    「コカインはシャンパン」

    時事通信

    ピエール瀧容疑者

    ――コカインは主にどのような人が使っているのでしょうか。

    海外ではデヴィッド・ボウイ、パリス・ヒルトンら。日本人だと「なぜ、パンツの中に入っていたかわからない」と語った勝新太郎さんや、角川春樹さんが有名です。

    こうした顔ぶれを見てわかる通り、コカインはセレブのドラッグ。パーティードラッグ的な、どこかオシャレなイメージもあります。

    高価なうえに持続時間が短いので、覚醒剤のジャンキーには「コカインは物足りない。同じお金を払うなら覚醒剤の方がいい」という人も多い。ただ、コカインの愛好者は「マイルドだけど、ちゃんと効く」と言いますね。

    覚醒剤が焼酎だとすれば、コカインはシャンパンみたいな感じ。効き方も、シチュエーションも違うんです。

    六本木に出回った偽コカイン

    ――日本では、覚醒剤に比べコカインについてはあまり知られていません。

    これまで、コカインが日本で大流行したことは一度もありません。

    2010年ごろに、六本木の半グレ集団がコカインを取り扱っているという情報があり、取材したことがあります。ところが、よくよく調べてみると、これは覚醒剤に少量のコカインやケタミンを混ぜたものだった。

    「日本人はコカインを知らないからバレないだろう」と、こうした手口が横行したのです。むしろ偽物の方が「値段が安くて効きがいい」と人気になってしまいました。

    作品に罪はない、が…

    時事通信

    「アナと雪の女王」でオラフの声を演じたピエール瀧容疑者

    ――ピエール瀧容疑者は「いだてん~東京オリムピック噺~」や「アナと雪の女王」「アウトレイジ 最終章」など、多くの作品に出演しており、影響が懸念されています。

    「作品に罪はない」というのは大枠ではその通りで、電気グルーヴの過去作や「アウトレイジ」を回収しろ、という人は恐らくいないはずです。

    ただ、小さい子どもたちが見る「アナ雪」や、NHKで放送している「いだてん」に関しては、吹き替えや代役を立てるなどの対応もやむを得ないのではないでしょうか。

    糾弾してもしょうがない

    本人提供

    石丸元章さん

    ――ピエール瀧容疑者に対しては、激しいバッシングも予想されます。今後、復帰することはできるのでしょうか。

    法律違反ではありますが、あくまで被害者のいない犯罪。「社会規範を逸脱した」という形で糾弾してもしょうがない。アーティストや表現者ってそもそもが社会から逸脱した存在とも言えますから。

    老若男女が見るテレビでの復帰は難しいかもしれませんが、見たい人がお金を払って見に行く演劇や映画には、また別の判断基準があっていい。

    瀧さんはいい俳優ですし、電気グルーヴはヨーロッパでも人気がある。海外でカムバックする道もあると思います。

    〈いしまる・げんしょう〉 1965年生まれ。法政大学中退。実体験を重視し、主観を色濃く打ち出した「ゴンゾ・ジャーナリズム」の日本における草分け。著書に『スピード』『平壌ハイ』『KAMIKAZE』『覚醒剤と妄想 ASKAの見た悪夢』など。

    Contact Ryosuke Kamba at ryosuke.kamba@buzzfeed.com.

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