超大物俳優がヤクザに「お世話になりました」と言われた意外すぎる理由

    『遠山の金さん』『大江戸捜査網』で知られるベテラン俳優の杉良太郎が、芸人の「闇営業」や移籍・独立したタレントへの「圧力」など、芸能界の問題を忖度なしにぶった斬る。

    歌手・俳優の杉良太郎はデビューから半世紀以上、芸能界を走り続けてきた。

    反社会的勢力への「闇営業」や、移籍・独立したタレントに対する「圧力」など、業界が抱える問題をどのように見つめているのか。

    芸能界の重鎮が、一切の忖度なしに舌鋒鋭く語った。

    昔の芸能界は「ヤクザな世界」

    Shinji Fukuhara

    杉良太郎

    ――吉本興業の芸人による「闇営業」問題が話題になりました。

    私がデビューした当時の芸能界っていうのは、もうまるでヤクザな世界ですよ。

    芸能人もお相撲さんもスポーツ選手も何もかも。お客さんを呼ぶ興業は、すべてにヤクザが絡んでいましたから。

    興行師っていうのがいて、それがヤクザの財源にもなっていたし。地方に行くと、事故やケンカ、ケガのないように、そこの親分と話をつける。それでみんな、スムーズに仕事がやれていたわけです。

    お客が入らない時に「親分さんお願いします」と頼んだら、「はいよ」って動員してくれたりね。そういう時代。

    昔の芸能界はそうでしたが、いまはコンプライアンスの時代。今度の吉本は、こじれなくていいものをこじらせた。ちょっとまずい処理の仕方だったかなと思っています。

    半グレにも法規制を

    時事通信

    反社会的勢力の会合に出席して金銭を受け取った問題で、記者会見する宮迫博之と田村亮

    ――もっと早く手を打っていたら…。

    そこまで大きな問題にならなかったでしょうね。

    対策も考えなきゃいけない。暴対法は指定暴力団を対象にしているけど、半グレ、昔でいう愚連隊も含めた反社会的勢力みんな、そこのなかに入れるべきだと思ってる。

    オレオレ詐欺もそうですけど、いつまでも野放しにはしておけない。そのあたりの法改正も必要かなと。

    事務所の責任

    時事通信

    記者会見で涙を拭う吉本興業の岡本昭彦社長

    ――反社に対して親近感を抱く芸能人も少なくないのでは。

    そう。芸能人のなかには、いまだにそういうのが好きな人もいる。

    年に何回か弁護士や有識者を集めて勉強会をやったとしても、なかなか止められないよね。それはそれで、処理していくしかない。

    ――事務所がしっかり処分すると。

    事務所の社長や会長の人たちは、所属タレントや社員に対してやっぱり責任を持たなきゃいけないね。

    責任者は孤独なんですよ。でも、そこがしっかりしてないと、芸人さんも社員さんも流されちゃうから。

    どう生きて、どう接していくかっていう責任の重さ。でなかったら、そんなに高い給料もらえないでしょ。

    見ればわかる

    Shinji Fukuhara

    ――相手が反社だと気づかなかった、ということはあり得るのでしょうか。

    電話ではわからないでしょうけど、行って見たらわかるよね。

    電話の時点でOKしちゃって、行ってから「あっダメだ」って帰るわけにいかない、ということはあるかもしれない。だから、事務所を通した方がいいんですよ。

    しかし、その芸人さんを呼んだからって半グレだとかヤクザだとかが後でバラすのもせこいよね。ちっちゃいと思う。

    ――週刊誌や写真誌には、芸能人と反社が一緒に写った写真の売り込みが殺到していると聞きました。

    頼まれて一緒に写真を撮る、サインをしました――。私の見解だと、それは別にどうってことないと思うね。犯罪行為でもないし。

    でも、相手からお金をもらったらいけない。お金をもらった時点でもうアウト。お金をもらわなければ、いちファンということでいいじゃないですか。

    「出所した連中が挨拶に来て…」

    時事通信

    法務省矯正支援官委嘱式で記念撮影する杉良太郎、浜崎あゆみ、EXILEのATSUSHIら=2015年、法務省

    ――仮にヤクザのファンがいたとしても、それは否定できない?

    もちろん。私の場合、長年、刑務所の慰問・視察をしているから、慰問先の刑務所から出てきた連中が「刑務所で約束した通り、新曲のレコードを買わせていただきました」って挨拶に来る。

    私はいつもは刑務所のなかで話すんですよ。

    「今日は出前で歌ったけど、アンタ方も少しは恩義を感じないか? 出所した暁には、レコードの1枚でも買いましょう。そういう約束できる人?」って。

    すると、みんな「わー!」って手を挙げて拍手するの。「よし、ここだけで700枚売れたか」と。

    駅のプラットフォームでヤクザ風の男が4~5人来て、「○○刑務所におりました時にお世話になりました。あの時約束した通り、『吉野に風が』を買いました」って言ってくれたことがあった。

    「覚えてた?」「これからも宣伝しておきます」「ありがとうね」って。ちゃんと約束を守ったんだから偉いよね。

    「もう入るようなことしちゃダメだぞ」「ええ、わかってます」

    それぐらいの、かわいいところで止めておくのがいいんですよ。お金もらうっていうのはちょっとね。

    いくら貧しくておかゆしか食ってなかったとしても、重湯でもいいからそこはグッと我慢しなきゃダメだよ。ステーキ食いたいと思うなと。そこだよね。

    グループの宿命

    時事通信

    ジャニーズ事務所

    ――元SMAPのテレビ出演をめぐって、公正取引委員会がジャニーズ事務所を注意し、「圧力」「忖度」といった言葉が盛んに報じられました。

    私はジャニーズやポップス系のことはよく知らない。一般的には、グループが長く続いた例っていうのは、歴史上あんまりないんじゃないかな。

    どうしてもガーッと人気が出る子と、いつも冷や飯を食ってる子が出てくる。最初のうちは我慢していても、段々とそうはいかなくなっていくの。

    やがて事務所もコントロールできないぐらい、なかで分裂が始まるんだよ。

    ファンは60歳のSMAPが見たい

    時事通信

    東京パラリンピック1年前カウントダウンイベントで、車いすテニスを体験する草なぎ剛、香取慎吾、稲垣吾郎

    ――そういった人間関係は仕方ないこととして、事務所をやめた芸能人を「干す」という慣習には疑問を感じます。

    SMAPならSMAPが50歳、60歳になっていくべきなんだよ。ファンっていうのは、60歳になったSMAPが見たいんだから。

    そういう意味では、分裂しちゃいけないグループが分裂したと思うよ。

    たとえばEXILEでもいい。若い時にめちゃくちゃ思い切りダンスしていた人たちが、60歳、70歳へと熟練していった時に、どれだけ軽やかなステップを踏むのか。

    ラスベガスでずっと勉強していたんだけど、トニー・ベネットやウェイン・ニュートンみたいな昔の歌手が、すごく軽やかにショーをやるの。私はそういうのを見たいと思う。

    人間って、ちょっとでも力のある方へ行きたがるけど、テレビ局や業界を取り巻く人たちが「いいものをつくろう」っていう環境に持ってかなきゃダメ。

    (タレントを)使わなかったり、使ったりっていうことが、すべての文化を邪魔していると思うよ。

    「五社協定」で水戸黄門役が交代

    時事通信

    森繁久弥

    ――「干す」「干される」という構図自体は、古くて新しい問題なのかな、とも思います。

    昔からあるからね。昔の方がキツかったんじゃない?

    ――1950〜70年代には、映画会社が互いに俳優の引き抜きを禁じる「五社協定」もありました。

    五社協定って言えば、時代劇の『水戸黄門』は最初、森繁久彌さんが黄門さまで、助さんが杉良太郎、格さんが横内正さんだったの。

    でも、スタートの1週間ぐらい前に東宝から東映に「五社協定で森繁が出ることはならない」と言ってきて、中止になっちゃった。

    スポンサーのナショナル(松下電器産業/現パナソニック)からどうしましょうか?と聞かれて、私が東野英治郎さんを推薦したんですよ。

    ――最初は森繁さんだったのですね。

    森繁さんだったの。最初が森繁さんだったとしたら、『水戸黄門』はあと10年続いたんじゃないかな。

    森繁さんが5〜6年やって、その後に東野さんという風に年代がズレていくから。

    干す・干されるをなくすには

    Shinji Fukuhara

    ――視聴者不在のルールで作品が歪められてしまうのは、もったいない気がします。

    もっと違った、日本の成熟した文化が成り立ちそうな時に壊す人がいる。それはやっぱり事務所やテレビ局とか、取り巻く環境だよね。

    人間ってどこまでも浅ましいから、いくら金を持っていても、もっと金がほしいし。事務所として力があるのに、もっともっと力がほしいし。テレビ局は視聴率、視聴率、視聴率だし。

    ちっとも発展しないね、この日本の文化っていうのは。昔の形態から抜けられていない。日本はアジアの文化の先頭に立って、お手本を見せていかなきゃいけないと思いますよ。


    杉良太郎(すぎ・りょうたろう) 1944年、神戸市生まれ。1965年に歌手デビュー。ヒット曲に『すきま風』など。1967年、NHK『文五捕物絵図』の主演で脚光を浴び、以降『遠山の金さん』『右門捕物帖』など数多くの時代劇に出演。舞台の代表作に『清水次郎長』『拝領妻始末』など。デビュー前の15歳から福祉活動に尽力し、ユネスコ親善大使兼識字特使、外務省の日・ASEAN特別大使、日本・ベトナム両国の特別大使などを歴任。現在は法務省の特別矯正監、警察庁の特別防犯対策監、厚生労働省の肝炎総合対策推進国民運動の特別参与を務める。緑綬褒章、紫綬褒章を受章。2016年度文化功労者。

    Contact Ryosuke Kamba at ryosuke.kamba@buzzfeed.com.

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