2004年に全国発売され、27万枚以上を売り上げたサスケの「青いベンチ」。発売から15年の時を経てなお、世代を越えて親しまれている。
しかし一時はCDが200枚あまりしか売れず、ライブの集客もままならないなど辛酸も舐めた。メンバーの奥山裕次と北清水雄太が、山あり谷ありの「ヒット後」の人生を語った。
解散の理由は
――2009年に一度解散しています。何が原因だったのでしょうか。
北清水:デビューから5年が経ち、お互い30歳の節目でもありました。事務所の契約が切れたこともあり、一度新たな気持ちでリセットしようと解散しました。
――やはり、ヒットを出し続けないと契約更新は難しいのですね。
北清水:そうですね。「青いベンチ」でたくさんの人に知っていただいたんですけど、それ以降なかなか、ヒットにつながらなくて。
「青いベンチ」が売れている時も、浮足立つというよりは、なんとなくその先の不安を感じていました。「このままだとヤバイ」という焦りは大きかったです。
お互いの関係もギスギスしていたし、殺伐としていました。いまは昔に戻った感じで、2人だけでフリーでやってるんで、気持ちは楽ですね。
再結成後も苦境
――5年後の2014年に再結成。どういう経緯で実現したのでしょう。
奥山:2013年に2人で会った時に「来年デビュー10周年出し、せっかくだからライブでもやる?」と話したのがキッカケです。
――再結成後、しばらくはライブに客が入らず苦しい時期もあったとか。
北清水:そうですね。でも、前を向いてやるしかない。ストリートでずっとやってきたので、そこでタフになったんだと思います。
悔しい思いも、みすぼらしい思いもしました。エンターテインメントの夢を追っていると、誰かと勝手に比べられるようなこともありますし。
232枚しか売れなかったCD
――これ聞いていいのかな…。
北清水:いいですよ。なんでも聞いてください。
――再結成時に出した「青いベンチ」の10周年記念盤が232枚しか売れなかったっていうのは本当ですか?
奥山:これは本当です(笑)
――徐々にCDの時代ではなくなりつつあった?
北清水:それもありますし、限定発売だったので。
奥山:大宮でしか売ってなかったんです。とはいえ少ないですけど(笑)
北清水:ははは。
Spotifyでは85万回再生
――それは切ないですね。でも、Spotifyだとこの「-10th Anniversary-」バージョンが85万回以上も再生されていますよ。オリジナルの14万回より多い。
奥山:それは知らなかったです!
北清水:ちゃんと日の目を見てる! その情報、すごい嬉しいです。ありがとうございます。みんな、ちゃんと聴いてくれてるんだなあ。
――2010年に突如レコチョクのランキングで1位になり、2011年にテゴマスがカバーしたり、2015年にAWAのランキング(2005年以前の楽曲)で1位になったりと、2004年の発売から時を経ても、度々話題になってきました。
奥山:レコチョクの時は、「ハモネプ」(フジテレビ系「青春アカペラ甲子園全国ハモネプリーグ」)という番組で、決勝出場チームが歌ってくれて。100位圏外から一気に1位になったんです。
AWAの時は、僕らも理由がよくわからなくて…。
北清水:特別仕掛けたわけでもなく、ひょんなタイミングで。きっと検索する人が多かったんでしょうね。
「青いベンチ」に救われた
――最近も「青いベンチ」を収録したDJ和のミックスCD「ラブとポップ」が40万枚以上売れました。
北清水:ありがたさしかないです。
奥山:僕らを知らなかった世代にも、「こういう曲があったんだ」と知ってもらえたら。
――ライブなどで常に「青いベンチ」を求められるのは苦痛ではないですか。
北清水:よく「ヒット曲ばかり歌うのは嫌だ」という話を聞きますけど、僕らの場合は無理なく、ウソなく、歌えていますね。「青いベンチ」には救われたり、助けられたりすることばっかりなので。
この間、高校生の前でサプライズで歌ったんです。世代も違うし、シラーっとなってしまったらどうしようかと心配でした。だけど、「青いベンチ」のイントロを吹いた途端、10代の子たちがワーッと盛り上がって。
10年以上経ってもこういう風に曲が残っているとは、デビュー当時、僕ら考えもしなかったですから。本当に宝物のような曲ですね。
何者でもないけれど…
――歌い手である自分自身も「青いベンチ」に勇気づけられてきたと。
北清水:ライブ活動をしていても、プライベートでも、ふとした拍子に「青いベンチ」が聴こえてくる瞬間があって。
たとえば、サインをしている時に泣き出しちゃう子もいるんです。
何者でもない自分たちですけど、誰かにとってはそういう存在でいられるのかもしれない。そんな楽曲を持てたことが幸せですよね。
「声が枯れるくらい」好きと言いたい人
――「この声が枯れるくらいに」ファンに好きと言いたいですか。
奥山:リスナーの人たちがいなければ、音楽を続けてこられませんでした。キャパの小さいライブ会場でも、毎回見に来てくれる人がいる。
待っていてくれる人たちがいるからこそ続けられるし、ファンの人たちの存在が励みになっていますね。
北清水:「青いベンチ」は悔いの残らないように愛を伝えようよ、というメッセージを込めた曲。その相手方というのは、僕らにとってはまさに目の前のお客さんなんです。
受け取り手のみんなにとっては学生時代の彼氏彼女を思い返すかもしれないし、もしかしたら親子や家族に思いを重ねて聴いてくれている人もいるかもしれない。
そういうことをひっくるめて、歌の力、音楽の力って侮れないな、と思います。
事務所もマネージャーもなし、でも…
――今後の展望、抱負をお聞かせください。
奥山:変わらずライブ活動を続けていきます。バラエティー番組とかも含めて、僕らの存在を知ってもらえる機会や場所があれば、どんどん出ていきたいですね。
北清水:自主制作で新曲のレコーディングをしているので、それを春ぐらいにリリースできたらと。
なるべくたくさんの人に聴いてもらえるように、ミュージックビデオやプロモーションもやれる限りでやっていきたい。
事務所もなし、マネージャーもなしで2人きりですが、自力で、時には仲間の力を借りながら活動していきたいと思います。