
新型コロナウイルス流行の余波で、卒業式に参加できなかった生徒たちへ。
「3月」を舞台に30年越しのラブストーリーを描いた『弥生、三月 -君を愛した30年-』に主演した成田凌が、友人と3人だけで「プチ卒業式」を開いた思い出を明かし、エールを送った。
恋愛ドラマなら三番手

――今回演じたサンタ(山田太郎)、すごくいいキャラですね。ちょっとおバカで、快活だけど憎めなくて。
そうですね。明るくやりました。遊川和彦監督に「恋愛ドラマだったら三番手の明るいヤツだ」と言われて、その気持ちで最後までやりました。
監督が言葉の人で(※遊川監督は『女王の教室』『家政婦のミタ』『同期のサクラ』などで知られる脚本家)、ちゃんと明確に言ってくれるから、やりやすかったです。変にオブラートに包むような人でもないので。
自然な加齢を意識

――30年という長い年月の流れを演じる大変さはありましたか?
難しい。すべてが大変でしたね。衣装合わせも結構、時間をかけてやりました。
でも、今の40歳、50歳って若いじゃないですか、普通に。だから逆に「年とった、年とった」っていう風にはやらないようにしました。
イ・チャンドン監督の『ペパーミント・キャンディー』という作品があって、あれも長い年月を描いてるんですけど、あまり年代を強調せずにやっていて。
「『ペパーミント・キャンディー』みたいな感じですかね?」と監督に言ったら、「そうそう」って。そこですぐに、意思の疎通ができました。
震災とコロナ

――『弥生、三月』では東日本大震災が描かれていますが、今の新型コロナ流行に伴うパニックも当時と重なる部分がありますね。
そうですね。震災の時と似た感じで。自粛、自粛ってなると、映画はもちろんそうですけど、やっぱり舞台をされている人は大変ですよ。
稽古して、準備して、中止になっちゃう。制作側は企画から始まって、少なくとも1年以上を棒に振ることになりますし。
――エンターテインメントは「不要不急」「余裕がある時の娯楽でしょ」と言われがちですけど、なかには切実に欲している人もいるわけで。
いや、絶対に必要じゃないですか。やっぱり、生きてると。
エンターテインメントって言いますけど、僕らはそれを仕事にしていますから。
――代わりが利かないですからね。
代わりが利かない。難しいですよね。
卒業式をもう1度

――学校が臨時休校になり、卒業式が中止になったり、規模が縮小されたりするケースも相次いでいます。成田さんは友達と3人だけで卒業式を開いたことがあるとか。
なんか、もう1回やりたくなったんですよね。
卒業式が終わって、教室でダラダラして。「ボタンもネクタイも余ったな」なんて友達と話しながら。「さっき、つまらなかったな」「体育館行くか」となって。
フラフラしてるうちに体育館にたどり着いて、誰とはなしに3人の「卒業式」が始まりました。
一生話せる思い出になる

――誰が誰役なんだろう(笑)
もうグジャグジャです。走り回りながら、長いこと誰も客のいないコントみたいなことをやってました。そういうの、高校生の時はよくありましたね。
――卒業式をできなかった子たちが、収束後に自分たちだけでやるっていうのもアリかもしれないですね。
全然アリだと思います。自分たちでやるっていう。それもまた強い思い出、オリジナルの思い出じゃないですか。「俺たちの時、卒業式できなくてさ」って一生話せますよ。
…だけど、なかなか厳しい状態ですね。
青春のタイミングは人それぞれ
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映画『弥生、三月 -君を愛した30年-』予告
――そういう子たちに言ってあげられることってありますか。
うーん、本当に人それぞれだからな…。
青春っていろんなタイミングで来るものだなっていうのはすごく思っていて。別に学生時代がイコール青春ではない。
好きに突っ走れる時間、輝ける時間っていのが、人それぞれのタイミングであると思うから。
今が苦しくても、絶対に楽しいことがある。大人になって笑い話になることって大体、その時はツライんで。
サッカーコートを走り続けた日々

――確かに。
「あの時さ…」みたいな。めちゃくちゃ怒られてぶん殴られた話とか、時間が経つと意外と面白かったりして。
僕の場合はサッカー部で毎日、全員過呼吸になるぐらいダッシュさせられてました。
「15・45」といって、サッカーコートの端から端まで15秒で行って、45秒で帰るっていうのを延々とやるんですけど。
110メートルぐらいを15秒。50メートル走でいうと7秒ぐらいのペースでずっと走らないといけない。しかも全員そのタイムにおさまらないと「1本」にならないっていうのを、20本ぐらいやったりして。
「エモい」はまだ早い

――それはキツイですね。
めちゃくちゃキツイです。
この間の正月、高校のサッカー部員で集まった時に「じゃあ負けた方が15・45ね」って言って。それをやってた時間がすごく…。何ていうんだろう、楽しめたんですね。
本当に嫌な思い出なんですけど、みんなの思い入れとして強く残っているし。なんかあの時のこと思い出して、「エモい」っていうのはこういうことをいうんだと。
高校生とか若い子が最近、よく「エモい」って言うんですけど。「エモい」はまだ早い。君たちが使う言葉じゃない(笑)
エモさは後から湧いてくる

――あはは。お前らまだ早いぞと。
君たちに「エモい」はまだ早い!(笑)
――めっちゃいい話だ。本当にエモいのはこれから。エモさは後から追っかけてくるわけですね。
そうですよ。今やってることが、エモくなるんだぞって。
――現在進行形だとわからないけど。
わからないです、わからないです。だからやっぱり、何となくでものを捉えてはいけないっていう。
ツライこと…当時、聴くのもツラかった曲とかが、後々「エモい」になるんですよ。
――最後に今後の抱負をお願いします。
エモくなりたい(笑) 誰かのエモさの対象でありたい、というか。
今の高校生たちが、『弥生、三月』とか、僕のほかの作品を観てくれたとして。
10年後とかにもう一度見返した時に、「あのころ」の情景を思い返したりして。そこに僕もいられたらいいなっていうのはありますね。

〈成田凌〉 1993年11月22日生まれ。埼玉県出身。2013年よりファッション誌『MEN’S NON-NO』の専属モデルとして活躍。2014年、ドラマ『FLASHBACK』(フジテレビNEXTsmart)で俳優デビュー。映画『スマホを落としただけなのに』『ビブリア古書堂の事件手帖』で日本アカデミー賞 新人俳優賞。『カツベン!』で毎日映画コンクール男優主演賞。『愛がなんだ』『チワワちゃん』など話題作に相次いで出演している。