
あなたがいま、本当にやりたいことって何ですか? そう聞かれて即答できる人は、案外少ないかもしれない。
映画『最高の人生の見つけ方』は、余命宣告を受けた生真面目な主婦(吉永小百合)と大金持ちのやり手社長(天海祐希)が、12歳の少女が残した「死ぬまでにやりたいことリスト」を実行していく物語だ。
ムロツヨシは、天海の忠実な部下として2人に連れそう秘書役を演じる。当代きっての個性派俳優の「棺桶リスト」には、一体何が書かれているのだろうか?
スカイダイビングからヲタ芸まで

――2人の女性が生と死を見つめ直すストーリーですが、ムロさんのコミカルな演技が清涼剤のようになっています。
スカイダイビングを飛ばされたり、ディナーショーみたいに歌ったり…。
ももいろクローバーZのライブに行くシーンがあるので、「ヲタ芸」も相当練習しましたね。

吉永さん演じる幸枝さんは家庭の中で孤独を感じていて、天海さん演じるマ子さんは会社の中でひとりぼっちで寂しさを抱えています。
病気の宣告まで受けて暗い話になりつつあるところで、2人が前を向き始める。僕はそのお手伝いをする立場。悲観的になっても仕方がないので、感情をニュートラルに表現したつもりです。
2007年のハリウッド版では、ショーン・ヘイズが秘書役を演じていて。いつか自分もああいう役ができたら、と思っていたので、めぐり合わせで演じることができて非常に嬉しかったですね。
半笑いの医師の思い出

――今回の秘書役もそうですが、ムロさんの演じる役柄はどこか憎めないキャラクターが多い気がします。なんとなく「半笑い」のイメージというか。
ニヤニヤとは違うんだけど、どっかで半分笑ってる感じ。それはどうだろう。
笑わせようとする意図がバレるとお寒いものになるので、それを隠そうとした結果の半笑い、かもしれません。
高校1年生のころ、ケンカして殴られて病院に行ったんですけど、主治医の先生がまさに半笑いでした。
拳が八重歯に当たって、唇を貫通して。「バカだな〜」とか言いながら、詳しい理由も聞かずに「殴られたでしょ? ここ、貫通するんだよ」って。
100点の対応

――半笑いのお医者さんっていうのもすごいですね(笑)
「おい!大丈夫か!?」って真剣に心配するのもおかしいし。
先生は多分、いまの僕より若い40歳ぐらいだった気がしますけど、「殴られた高1」への接し方としてはおそらく100点だったんじゃないですか。
ムロツヨシの棺桶リスト
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映画『最高の人生の見つけ方』予告編 2019年10月11日(金)公開
――もし、ムロさんが映画のような「棺桶リスト」をつくるとしたら、何を書きますか。
正直、考えたこともないですが…。「死ぬまで役者をやりたい」と思っているかどうかもわからない。ジャック・ニコルソンだって引退してますからね。
まだやってないことで、やりたいことは色々あります。ヨーロッパへサッカー観戦に行って香川真司選手を応援したい! メジャーリーグで大谷翔平選手も見たいです。
それから、今回の役みたいな縁があったらいいですね。まだ共演していない役者さんとも共演できたら。同い年の劇作家がいるんですが、そいつとも一緒に仕事をしたいですし。
30代の時より楽しめる舞台をつくりたい。これは棺桶リストというより、野心ですね。

〈ムロツヨシ〉 1976年、神奈川県生まれ。1999年、作・演出・出演するひとり舞台で俳優活動をスタート。テレビ、映画、舞台で幅広く活躍している。代表作にNHKの大河ドラマ『おんな城主 直虎』、連続テレビ小説『ごちそうさん』、『大恋愛』(TBS系)、映画『空飛ぶタイヤ』など。『最高の人生の見つけ方』『ダンスウィズミー』が現在公開中。