タトゥーは生き様――。歌手・俳優のミッキー・カーチスさん(79)は、60代で腕にタトゥーを入れた。
かつて映画「スワロウテイル」で医師兼彫り師の役を演じたこともあるミッキーさんが、BuzzFeed Newsの取材に応じ、入浴施設の対応や法規制のあり方などについて語った。

「歯医者の方がよっぽど痛い」
――いつごろタトゥーを入れたのですか。
15年前かな。64歳ぐらいの時、「若気の至り」で左腕に入れたんだよ。もうこの年だし、いいんじゃないのって。
痛くないかって聞かれるけど、チクチク気持ちいいだけ。歯医者に比べれば全然痛くないよ、あんなもん。
歯医者の先生に「よくやるな」って言われたから、「お前にやられる方がよっぽど痛いよ」って言ってやったもん(笑)
――長い間入れずにきたのはなぜでしょう。
入れたくなったこともあったけど、アイドルだったからね、一応。

落語のネタがモチーフ
――どんな図柄を入れているのですか。
スカルの上にカラスが止まっている柄。「野ざらし」っていう落語のネタが元になってるの。ドクロの近くからカラスがパーッと飛び立つ場面があるんだ。
子どものころから海賊にあこがれてて、スカルが好きだったっていうのもあるし。
――見せてもらってもいいですか。
いいけど、恥ずかしいから写真はダメだよ。ほら。
――おお! カッコイイですね。
上がカラスで下がスカル。ロックをやってる時、Tシャツ姿だと下のスカルの部分だけが見えるのよ。
で、落語の時は楽屋で着物に着替えるじゃない? そうすると和彫り風になっている上のカラスの部分も見えて、落語の人は「あ、野ざらしだ」ってわかるわけ。
本当は右腕にもやりたいんだけど、心臓にペースメーカーが入ってる関係で血が流れやすくなる薬を飲んでるから、よくないかなと思ってやめてるんだ。

オリンピックはどうするの?
――日本ではタトゥーや刺青に対する悪いイメージが根強く、利用を禁止している入浴施設も多いです。
スミがなければ、たとえヤクザでも入れるってこと?
東京オリンピックはどうするんだよ。選手もお客さんも、海外の人はみんな入ってるぜ。ベッカムやジャスティン・ビーバーだって体中に入れてるじゃん。
そういえば少し前に、マオリの人が温泉に入れなくて揉めたこともあったよね。
――「シールで隠せばOK」など、条件付きでタトゥーを認める宿泊・入浴施設もありますが。
意味がわからない。余計に変だよ。
まず、「入れ墨」っていう言い方がよくない。「入れ墨」ていうのは昔、悪いことをして島送りになった人とかに入れていたんだからさ。「彫り物」って言ったらいいんだよ。

音楽番組は問題ないが…
――テレビや映画の出演時は?
役のこと以外は何にも考えてないな。入っていない役だったら(メイクで)消してもらうし、ヤクザ映画なら、いま入ってるタトゥーに牡丹とかを足してもらうこともある。
テレビだと、音楽番組はいいんだよね。バラエティーで温泉に入る時とかは、テープで隠さないといけないんだけど。
――ミッキーさんは昨年タイに移住されましたが、タイの人たちのタトゥーに対する認識はいかがですか。
タイに行くとすごいよ。もう描くところがないぐらい、全身に入ってる人もいる。変わった洋服来てるな、と思ってよく見たら裸なの。ムエタイの選手も入ってるし、王様だって入れているから。
あとは、お坊さんがお寺で入れてくれることもある。お経の文字とかをトントントンって。痛いらしいけどね。そういう宗派もあれば、タトゥーはダメって宗派もあるし。
タイ人だけじゃなくて、西洋人も大勢入れてる。ギンギンに入ってるのを見ると、こっちもちょっと腕まくりしたくなっちゃうよね。俺も入ってるぜって。
――偏見はないんですか。お風呂に入っちゃいけません、とか。
ないない。
プケットにもクリスマスムードが(笑) 雨降りでウォーキングに行けなかったが銀行に用事あってセントラル フェスティバルと言う巨大なモールに行ったらウォーキングよりたくさん歩いた(笑)
2016年にタイへ移住した
医師法での摘発「おかしいよね」
――日本では近年、「医師免許なしでタトゥーを入れた」として、医師法違反容疑での彫り師の摘発が相次いでいます。
日本の変な法律、あるんだよ。医師免許がないとピアスの穴も空けられないんだから。
(※厚生労働省によると、ピアス施術をできるのは、医師本人か医師の指示を受けた看護師らに限られる)
――医師免許の取得は非常に難しいので、事実上の「タトゥー禁止令」ではないかとも言われています。
おかしいよね。彫り師はみんな医師免許なんて持ってない。難しい試験に受かるぐらいなら、医者になってるよ。
タトゥーは医者の仕事?
――映画「スワロウテイル」(1996年)で、医者であり彫り師でもあるロック・ドク役を演じていましたね。少女に「タトゥーってお医者さんの仕事なの?」と聞かれ、「いや、もっと他の才能が必要さ。まず絵描きの才能、それから占い師の才能」と答える場面が印象的でした。
まあ、そうだろうね。あの映画見て、アゲハ蝶のタトゥー入れた女の人は多いみたいだよ。

「タトゥーは生き様」
――ただ、タトゥーを入れたことを後悔する人も少なくありません。
男や女の名前を彫るのはやめとけよ、とは思うね。消すのにはお金もかかるし、痕も残る。いつ別れるかわかんないんだからさ。実際、入れて別れちゃった人も知ってるけど。
入れたいヤツは入れればいいし、後で苦労したり、嫌な思いをしたりするんだったら入れない方がいい。タバコなんかと一緒だよね。
――迷っているぐらいなら、入れない方がいい。
そうだね。入れたら吹っ切れて、人生変わっちゃうかもしれないし。
――「スワロウテイル」の「入れ墨は体に別な生き物を飼うようなもんだ。そいつが人格を変えてしまうこともある。そして運命さえも。何でも彫ればいいってわけじゃないんだ」というセリフそのままですね。
そうそう。そういう面があるよ。
――ミッキーさんにとってタトゥーとは。
生き方、生き様かもね。「親が生んでくれた体に」っていう人もいるけどさ、自分は自分だろ。

〈ミッキー・カーチス〉 1938年生まれ、東京都出身。父方の祖母と母方の祖父は英国人。58年、日劇ウエスタン・カーニバルに出演し、「ロカビリー3人男」として人気を博す。同年に映画「結婚のすべて」で俳優デビュー。「KAMIKAZE TAXI」(96年)ではキネマ旬報助演男優賞を受賞。落語家「ミッキー亭カーチス」としての顔も持つ。2016年3月にタイのプーケットへ移住。著書に自伝『おれと戦争と音楽と』(亜紀書房)。