
歌手の鈴木雅之(63)が、デビュー40周年を記念して3枚組アルバム『ALL TIME ROCK ‘N’ ROLL』を出した。
目玉のひとつが、シャネルズ時代の名曲を小西康陽が再構成した『Ultra Chu Chu Medley』。7月15日には、このメドレーの7インチアナログ盤も発売した。
インタビュー連載第3回は、70歳での「古希ソウル」を目指して意気軒昂な鈴木に、「違う、そうじゃない」と思うことを聞いてみた。
連載第1回:「今日で解散します」と言うはずだった。バンドの未来を変えた運命のイタズラ
連載第2回:鈴木雅之は告らせたい。1300万回再生された男は、「うるせぇバーカ」に涙した
連載第4回:大瀧詠一さんに、夢でもし逢えたら
実は意外と…

――代表曲『違う、そうじゃない』は、ジャケット写真がSNSで盛んに使われるなど、インターネットミーム的に親しまれています。前々から伺ってみたかったのですが、鈴木さん自身が「違う、そうじゃない」と思うことってありますか?
「ワイルドだと思われているかもしれないけど、実はものすごく繊細だよ」っていうこと。そこは声を大にしてとまで言わないけど、言いたいことかな。
――何となく「細かいことは気にしないぜ」みたいなイメージでした(笑)
逆だね。ものすごく繊細。キレイ好きなところもあるし。
――指でなぞって「ホコリがあるぞ」みたいな。
そこまで細かくはないんだけど、意識はするね。新型コロナの自粛期間中は、衣替えでクローゼットの服を整理したりもして。
坂上忍さんの着物のコマーシャルで「5年着てないならもう着ないって」っていうのがあるでしょ。確かにそうだなと思って、ときめかないやつは捨てて。
江戸っ子気質もあるけれど

――こんまりメソッドで「コロナ断捨離」されてたんですね。
そうそう。意外にそういうことを考えてます。
俺、乙女座でAB型なんだけど、それがなせるワザかもね(笑) 必要以上に石橋を叩いて渡らないタイプだから。
大森育ちだし、「どうってことねえよ」「行くときは行く」みたいな江戸っ子気質も多少あるんだけど、そういう面はアーティストとしてステージで変身、発信してると思うんだ(笑)
かたやプライベートだと、「いやいやいや」「お先にどうぞ」ってなっちゃう。でもね、意外に江戸っ子ってそういうところがあるんだよ。
小西康陽との豪華コラボ

――『Ultra Chu Chu Medley』についてもお伺いしたいのですが、小西康陽さんとのコラボはどのように実現したのでしょうか。
小西がDJでシャネルズの曲をかけたりした時に、「『ハリケーン』は盛り上がるんですよ。テッパンですね」みたいなことを言ってくれたのを思い出して。
「シャネルズ時代の曲のDJミックスをつくってくれないか」って頼んだのが、最初の取っかかりだったんだよね。
40周年のアニバーサリーに、楽曲の魅力をわかりやすく伝えるにはこれだなって。
「アナログにしなきゃ男が廃る」

――7インチのリリースは32年ぶりということですが、音楽配信やストリーミング全盛の時代に、あえてアナログレコードを出す狙いは?
やっぱりいま、配信が中心の世の中だからこそ、あえてアナログの温かい音で聴いてみるのもいいんじゃないかなと。
アナログで育った世代の俺たちが、いままたアナログで出すこだわり。
同じアナログ世代に喜んでもらいたいし、知らない世代にも「こういうものがあるんだ」って針を落とす喜びを感じてもらえたら。
『Ultra Chu Chu Medley』のミックスを聴いている時に、小西が「アナログでも聴いてみたい。DJで回してみたい」というようなことを言ったの。
これはアナログにしなきゃ男が廃るなと思って(笑) 小西の気持ちに応えたいなと考えていた矢先に、Epicからアナログ化の話がきたわけよ。
山下達郎に奮い立つ

――アナログを出す一方で、TikTokで『め組のひと』が話題になり、『DADDY ! DADDY ! DO ! feat. 鈴木愛理』のミュージックビデオがYouTubeで1300万回以上再生されるなど、ネットの世界でも存在感を増しています。
「日々チャレンジ」っていうことを、体現できているのはありがたいよね。
ボーカリストとしても、いまが一番調子がいい。声帯って生ものだし、筋肉だからどうしても衰えて減速していくものなんだけど、俺の場合は音域的にもいまが一番出ている。
山下達郎さんとウチの舞台監督は同じ人で、達郎さんのツアーが終わったら鈴木雅之っていうローテーションがあって。
その舞台監督が「いま達郎さん、こんな感じでやってるよ」って教えてくれるの。それが俺の次の基準になってくるから。
「古希ソウル」届けたい

――先輩の達郎さんに刺激を受けて。
「達郎さんがここまで到達してるんだから、限りなく近づけなきゃ」って思う。基準が高いからこそ、自分を奮い立たせられるわけ。ありがたいですよ。
60歳の時に「還暦ソウル」と銘打って活動したんだけど、70歳になったら「古希ソウル」を届けたい。それを考えたら、面白くてしょうがないよね。
古希ソウルをカッコ良くやれるかどうかは、これから一年一年、いかに丁寧に、質を大事に歌い続けていけるかにかかってる。
いまコロナでちょっと足踏みしちゃってるけど、目標はやっぱり古希ソウルだね。
連載第4回に続く。

〈鈴木雅之〉 1956年、東京都大田区生まれ。
1980年、シャネルズ『ランナウェイ』でデビュー、100万枚超を売り上げた。1983年にラッツ&スターへと改称してからも『め組のひと』『Tシャツに口紅』など、多くのヒット曲を残す。1986年、『ガラス越しに消えた夏』でソロデビュー。代表曲に『もう涙はいらない』『違う、そうじゃない』など。
2011年、初のカバーアルバム『DISCOVER JAPAN』で日本レコード大賞「優秀アルバム賞」。2016年に日本レコード大賞「最優秀歌唱賞」。2017年には、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した。
近年はTikTokで『め組のひと』が話題となり、人気アニメ『かぐや様は告らせたい』の主題歌も手がけるなど、「ラブソングの王様」として幅広い世代に親しまれている。2020年、デビュー40周年記念アルバム『ALL TIME ROCK 'N' ROLL』を発表。7月15日には、同アルバム収録の『Ultra Chu Chu Medley』を7インチのアナログ盤としてリリースした。