縄文時代にタトゥーはあったのか――。そんなテーマのトークイベントが22日、東京・五反田のゲンロンカフェで開かれた。当時の文様を「再現」したというタトゥー作品が披露され、アートや考古学の垣根を越えた活発な議論が交わされた。

イベントを主催したゲンロンの代表・東浩紀さんが司会を務め、日本考古学協会理事の大島直行さんや、縄文タトゥーの復興を目指すアートプロジェクト「縄文族 JOMON TRIBE」に取り組む、彫り師の大島托さんとジャーナリストのケロッピー前田さんが登壇した。

土器や土偶の文様をヒントに
3世紀に書かれた中国の史書『魏志倭人伝』には、弥生時代の日本の男性が刺青を入れていたと記録されている。
だが、縄文時代については諸説分かれており、はっきりしない点も多い。
托さんとケロッピーさんは、3年前から「JOMON TRIBE」プロジェクトを展開。
縄文土器や土偶の文様をヒントに現代アート風に洗練させたタトゥー作品を、国内外で展示している。

ケロッピーさんは「失われつつある部族・民族のタトゥーを復興する取り組みが世界中に広がっており、そうした動きに触発された。日本で僕らができることは、縄文時代のタトゥーの復興」と話す。

一方、『月と蛇と縄文人』などの著書がある直行さんは「縄文時代の人たちには『再生』への願いがあり、そのシンボルとしてタトゥーがあったのではないか」と自説を述べた。
縄文文化の特殊性を強調する議論に対し、東さんが「日本の特殊性を過大評価しているのでは。縄文的なものをグローバルな影響関係で捉えるとどうなるのか」と疑問を投げかける場面もあった。

会場には、托さんがこれまでに縄文タトゥーを施した6人も参加。体に彫り込まれた作品を披露した。
托さんは「こちらは土偶から文様をとった作品。同時代の中国の青銅器の柄を取り入れたものもあります」とコンセプトを解説。
東さんは「これは芸術的。すごいですね」と感嘆していた。


摘発強化「タトゥーはアート」
当初はイベントでタトゥー施術を実演することも検討したが、法律的な制約から断念したという。
背景には、ここ数年相次いだ医師法違反容疑での彫り師の摘発劇がある。
医師免許なしに客にタトゥーを入れることは医師法違反にあたるとして、大阪府警は2015年から取り締まりを強化。
摘発を不服とする彫り師の一人は無罪を訴えて大阪地裁で法廷闘争を繰り広げており、27日には判決公判が開かれる。

ケロッピーさんは「医者でないとタトゥーを入れちゃいけない、というのは普通に考えてかなり変」と法規制を疑問視。
「日本では『タトゥーはヤクザやアウトローのもの』という偏見が根強いが、縄文タトゥーを通じて、アート、カルチャーとしての側面を示せたら」と語った。

医師法によるタトゥー規制をめぐり、東さんは「グレーゾーンで警察にお目こぼしをしてもらう関係を続けているうちは、(彫り師の側も)強く出られない。クリアにした方がいい」と指摘した。