浅野忠信を父に、Charaを母に持つ佐藤緋美が、東京芸術劇場で10月7日から始まる舞台「書を捨てよ町へ出よう」で俳優デビューを果たす。
「感じて、感じさせるのが俳優。最近、楽しさがわかってきました」。飄々と、淡々と。演技、音楽、ファッションと多方面で才能を発揮する18歳はこう語る。

未知の世界に興味
――寺山修司の代表作を、「マームとジプシー」主宰の藤田貴大さんが3年ぶりに演出する注目の舞台です。どういう経緯で演劇に初挑戦することになったのでしょう。
事務所のマネージャーさんからオーディションがあることを聞いて、受けてみようと思いました。
もともと舞台は観たことがなくて、寺山さんも藤田さんも知らなかった。まったくわからない世界だからこそ、逆に興味が湧いてきたんです。
初めての経験なので不安ですけど、周りの人はみんな「どうにかなるよ」と言ってくれているので、それを信じてやるだけです。

セリフは「音」で記憶
――舞台のどこに面白さ、難しさを感じますか。
難しさは、セリフをすんなり言えないと変な感じになっちゃうから、ちゃんと覚えなきゃいけないということ。言いながら動きもありますし。
面白さは、それを言えた時ですね。あ、全然できる、みたいな。繰り返し、繰り返し、ずっと読んでると意外に覚えられる。歌詞とかも覚えるのが早いので、「音」で記憶しているのかも。
あとは、みんなと仲良くできること。ずっと一緒に稽古してますから。共演者の皆さんのお芝居からは、かなりインスピレーションを受けています。
これから地方公演に行って、おいしいご飯食べるのも楽しみ。藤田さんから「札幌でおいしいスープカレー食べに行こう」って言われてます。
あとは札幌ラーメン。最後にパフェ食べてシメパフェとかいいなって。

父からのアドバイス
――出演が決まって、お父さんからはどんな言葉をかけられましたか。
「おめでとう」と言われました。父は舞台に出ていないのですが、「逆にいいね」みたいな。「俺は一回も舞台出たことないから…」って。
一応、セリフはどう覚えたらいい?っていうのは聞いて。「自分の覚え方を見つけるのが大事だ」とアドバイスをもらいました。それは僕も最初からわかってたんだけど…っていう(笑)
あと、これは舞台じゃなくて映画の場合ですけど、何度も読み返して自分が言わないようなセリフだった時は、監督とちゃんと話せと。一回、自分の言い方に変えて台本に書いてみるのもいい、と言ってましたね。
――お母さんからは何と?
母は「がんばってね。観に行くよ」って言ってましたね。
「それより英語の歌詞、手伝って」みたいな。僕がインターナショナル・スクールに通っていたので。そんなフランクな感じです。

名前の由来
――「緋美(ひみ)」という名前の由来は。
父がつけました。姉のSUMIREがすみれ色で、僕は緋色っていうのが由来です。英語だとスカーレット。綺麗な赤ですね。
――どんな子どもでしたか。
スポーツと音楽とゲームが大好きでした。
小学2年生から5年生ぐらいまでサッカーをやって、5年生からバスケ。小さいころは喘息気味で、鍛えるために水泳にも通っていました。
中学はインターナショナル・スクールだったから、シーズンごとにバスケ、サッカー、野球と順番にやって。バスケはキャプテンも務めました。

カラオケでジェームス・ブラウン
――音楽との出会いは。
子ども用のちっちゃいギターを弾いたり、ドラムを叩いたり。姉とも一緒にやったりして。小学校の音楽の授業で叩いたこともありました。
ドラムとギターとベースは同じぐらい好き。高校で1年間、シドニーに留学して。帰ってきてから友達とバンドを始めました。
マイケル・ジャクソン、プリンス、デヴィッド・ボウイ、山下達郎さん、ユーミンさんはずっと聴いてます。R&B、ヒップホップ、ソウル、パンク、ロックも聴くし…。
踊れるのも好きで、最近聴くのはアース・ウィンド・アンド・ファイアー、スライ&ザ・ファミリー・ストーンとか。カラオケでジェームス・ブラウン歌ったりもしますよ。
――そういえば、浅野さんは緋美さんから最近の音楽を教わっていると言ってました。
そうですね。僕が車のなかで曲を流すんです。「最近いいのないの?」って聞かれるので、「この曲はね…」と教えてあげて、父がメモして、みたいな。

家族でマリカー
――ゲームは相当、やりこんでいたらしいですね。
結構ゲーマーだったんで。オープンワールド系のゲーム(プレイヤーが舞台を自由に動き回れるもの)とか300時間ぐらいやりました(笑) あとは家族でマリオカートやったり。
ゲームの映像やCGが好きで、そこから映画やアニメに関心を持つようになった面もあります。あ、でも映画はめっちゃ好きな人に比べたら全然観てません。普通って感じです。
――Netflixをよく見るとか。
ネフリは結構ハマってますね。アニメの「バキ」とか「テラハ(テラスハウス)」とか、毎週更新を待ってます。
ドラマも、流行ってるのはちゃんと見て。特に見るものがない時も、何かあるかなと探してる感じです。

ラフォーレの看板は…
――モデルとしてもご活躍です。昨年4月にラフォーレ原宿に掲出された、浅野さん、SUMIREさんとの共演看板は話題を呼びました。
実は一回も見てないんです、自分では。ちょっと恥ずかしくて…。
みんなから「(看板に)いるよ」って写真が送られてきて、「えー!」みたいな。ふと思い出して見に行ったら、もうありませんでした(笑)
――ファッション、音楽、そしてお芝居と幅広く活動しています。
アートが大好きなんです。音楽やりたいし、ファッションも好きだし。
娘と息子とラフォーレの看板やってます!(^o^)!
感じて、感じさせるのが俳優
――俳優業はいかがですか。
感じて、感じさせるのが俳優。音楽もそう。感じさせながら、自分でも感じたい。だから、ひとつじゃないのかもしれない。
自分が感じたものを、相手にあげるのがパフォーマー。それって結構楽しいものなんだと、最近わかってきました。
――役者としての抱負は。
いろんな役を演じたいです。明るい、暗い、怖い、暴力的…。いまはとにかく、様々なキャラクターを演技できるようになりたい。
「アウトレイジ」の加瀬亮さんの役とか、めっちゃいいですよね。あのメガネいいなって。しかも、英語もしゃべれて…。
――緋美さんも英語が堪能ですよね。浅野さんのようにハリウッドを目指すお考えはありますか。
もしやれるなら、ぜひやりたいです。

重ならないから面白い
――「書を捨てよ町へ出よう」では、万引き常習犯の祖母、無職の父、引きこもりの妹と貧乏長屋で暮らす、18歳の「私」を演じます。
18歳の童貞の役です。自分を探して、迷っている思春期のキャラクターなのかな。家族みんな嫌い、みたいな。
――ご自身と重なる部分もあったりしますか? 「家族が嫌い」というところは違いそうですが。
そうですね。家族は大好きなんで。主人公は兄だけど、僕は弟だし。重ならないところが多いから、逆に面白いです。
――緋美さんは「自分」をもう見つけましたか。
いつも探してる。きっと、死ぬまで探してますよ。

〈さとう・ひみ〉 1999年、東京生まれ。インターナショナル・スクール在学中にシドニーに留学。現在は高校3年生。俳優、音楽、モデルなどマルチに活動する。
佐藤が主演する「書を捨てよ町へ出よう」は、東京芸術劇場で10月21日まで。問い合わせはボックスオフィス(0570-010-296 / 休館日を除く10〜19時)へ。
東京公演後は、長野・上田、青森・三沢、札幌を巡回。パリでの公演も予定している。