もがき、傷つき、倒れた人も、きっともう一度立ち直ることができる――。
2人の男女の30年にわたる愛の軌跡を「3月」だけにフォーカスして描いた映画『弥生、三月 -君を愛した30年-』が、3月20日(金・祝)に公開された。
罪悪感に苛まれながらも再生へと踏み出すヒロイン、弥生を演じる波瑠は「正義でただ人を叩き続けることの何が面白いんだろう」と語る。
転んでしまったことよりも…

――国語教師の弥生が授業で紹介した「あなたが転んでしまったことに関心はない、そこから立ち上がることに関心がある」という格言が胸に残りました。最近は不倫でも何でも、一度転んでしまった人は二度と立ち直れないぐらい叩かれる風潮がありますね。
難しいですね…。でも私は「この人が間違ってます!」って大きい声で言うことも、自分の中の正義でただ人を叩き続けることも、何が面白いんだろうと思います。もっと面白いこといっぱいあるのに…って。
私も不倫する役を演じた時に批判されたことがありますが、そういうものって人をヒートアップさせるんでしょうね。
全否定は怖い

――「転ぶ」ことよりも「立ち上がる」ことに関心が向くと、もう少しいい世の中になるかもしれないですね。
間違ったことをしたら、その人の存在そのものを否定するという今の風潮は怖いです。
たとえば友達に対してでも、「あなたのことは好きだけど、こういう時にこういう行動を起こすのは好きじゃない」みたいなパターンは、すごくたくさんあると思うんです。
全部を好きになって、100%受け入れて友達やってるわけじゃないし、人間ってそういうものじゃないのかなって。
――罪を憎んで人を憎まず。
そうですね。
3月は「流れが変わる月」

――3月は卒業や別れの季節でもありますが、波瑠さんにとって転機になった出来事はありますか。
個人的なことですけど、私が今の事務所に入るきっかけになったオーディションを受けたのが3月で。朝ドラ『あさが来た』のオーディションを受けたのも3月なんです。
4月はいろいろな転機、芽吹く時期だと言われますけど、私にとっては3月の方が「物事の流れが変わる月」っていう感覚がすごくあって。
3回落選、4度目の正直

――『てっぱん』『純と愛』『あまちゃん』と朝ドラのオーディションに3回落選し、『あさが来た』が4度目の正直だった、というのは本当ですか。
本当です。4回目で受かったのなんてラッキーで、10回受けて1度も受からなくてもおかしくない。
朝ドラのヒロインって、それだけすごい競争の先にあるものだから、私は「落ちて当たり前」と思ってました。
だけど、『あまちゃん』と『純と愛』で最終審査まで進めるようになって、朝ドラヒロインをやるってことがとても近く感じたんですよ。
そこで初めて「あとちょっとだったのに…」という悔しさが生まれた気がします。『弥生、三月』の遊川監督とは、『純と愛』のオーディション以来ということになりますね。
未知の方へ
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映画『弥生、三月 -君を愛した30年-』予告
――新入学、新社会人など新たな門出を迎える人たちに、メッセージをお願いします。
「できれば変わりたくない」という人もきっと多いと思うんですけど、環境の変化ってすごく大事。
自分が今までやってきたものから段階を上がっていく時に、コントロールできる状況にとどまるよりも、未知の方へ行く方が面白いと思うんですよね。
あとは、健康だけは気をつけてほしいです。健康であれば、何事も前向きな風が吹く気がするので。
優しくなりたい

――波瑠さんご自身としての抱負は? 1月1日のInstagramで《もう少し優しい人になれるよう、がんばってみようと思います》と書いていらっしゃいましたが。
いや、本当にその言葉の通りで。やっぱり自分も優しくなりたいし、人の優しさをたくさん見逃さずに受け取れる人でもありたいなと。
このお仕事も当たり前のものではなくて、いろんな人の優しさで毎日毎日できているのだと思います。
その人たちのためにも、自分がもうちょっとその優しさに意識を向けて、周りを見なくちゃいけないなっていう気持ちですね。
〈波瑠〉 1991年6月17日生まれ。東京都出身。2006年、ドラマ『対岸の彼女』(WOWOW)でデビュー。翌年からファッション誌『Seventeen』で専属モデルを務める。主な出演映画に『マリア様がみてる』『がじまる食堂の恋』『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』など。2015年にはNHKの連続テレビ小説『あさが来た』に主演した。