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僕がファミコンの「新作」をつくり続ける理由

2008年以降、10本以上のソフトを手がけた男が語る

1983年に発売され、2003年に生産が中止されたファミリーコンピュータ。しかし、いまなお「新作」のファミコンソフトをつくり続けている人がいます。

自作ソフトで遊ぶ関純治さん
Ryosuke Kamba / BuzzFeed

自作ソフトで遊ぶ関純治さん

スマホ向けゲームなどを開発する「ハッピーミール株式会社」の社長、関純治さん(45)は、これまでに10本以上のファミコンソフトを制作してきました(※任天堂のライセンス製品ではありません)。

幼いころからのファミコン好きが高じ、いつか自作ソフトをと夢見てきた関さんは「2次元のドット絵を見ていると、ゲームをやっているという実感が湧く。ライフワークとしてつくり続けていきたい」と語ります。

2008年からソフト制作

最後のファミコンソフトは、公式には1994年発売の「高橋名人の冒険島Ⅳ」だと言われてきました

ところがここ数年、「8BIT MUSIC POWER」「キラキラスターナイトDX」(2016年)、「NEO 平安京エイリアン」(2017年)といったソフトが相次いで発売され、改めてファミコンへの注目が高まっています。

関さんはこうした動きに先駆けて(というよりはファミコンブームに20年遅れて)、2008年からファミコンや互換機で動くソフトの制作に乗り出しました。

関さんが友人のプログラマーとともにつくったソフト
Ryosuke Kamba / BuzzFeed

関さんが友人のプログラマーとともにつくったソフト

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ガラケーで「懐かし」のゲーム

関さんの新作ファミコンづくりには「前史」があります。

2007年、別の会社でガラケー向けゲームサイトを運営していた関さんは、利用者のサービス継続を促すため、ポイントを貯めるとおまけのゲームアプリ「チョイスゴコンピュータ(チョイコン)」で遊べる仕組みを考えました。

「僕がファミコン好きだったこともあって、チョイコンは昔のゲームっぽくしたんです。ドット絵ならグラフィック制作にかかる作業量を減らせる、という狙いもありました」

チョイコンのチラシ
Ryosuke Kamba / BuzzFeed

チョイコンのチラシ

  • 画面上の仮想カセットをハードに挿すところからゲーム開始。
  • バグった時は、フーフーして挿し直すと直る。
  • 徐々に本体が黄ばみ、時にはセーブデータが消えることも。


上記のような「ファミコンあるある」をガラケーで忠実に再現。細部までこだわり抜いたチョイコンは人気を博し、最終的に16のラインナップを展開するまでになりました。

つくりこまれたレトロ感に、仕事相手から「このソフト、昔やってました」と間違えられたことも。

「新しくつくったものだから、そんなハズないんですけどね(笑) でもその時は、勝った!と思いました」

YouTubeでこの動画を見る

支部長全ファミ協会 / Via youtu.be

テレビCMに模した「チョイコン」のPR動画

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ドキュメンタリーがキッカケに

そこからファミコンソフト制作に至るきっかけとなったのが、2008年に発売されたDVD「TVゲームジェネレーション~8bitの魂~」です。

前年にCSで放送されたドキュメンタリー番組をDVD化したもので、eスポーツプロデューサーの犬飼博士さんが、新作ファミコンソフト「ミスタースプラッシュ!」を開発する様子を収めています。

一部店舗での購入特典として、実際に「ミスタースプラッシュ!」を組み立てることのできるロムと基板が付属していました。

「同じものをそろえれば、ウチらでもつくれるな」

関さんは手応えを感じ、友人のプログラマーの協力を得て、ファミコンソフトづくりに着手します。

「チョイコン」から移植

手始めにチョイコンから移植したのが、「忍者カイ」というソフトでした。

縦スクロールのアクションゲームで、忍者がなぜか雲の上をひたすら登っていくという、なかなかにシュールな仕上がり。2人プレイも楽しめます。

「忍者カイ」
Ryosuke Kamba / BuzzFeed

「忍者カイ」

「忍者カイ」のプレイ画面
Ryosuke Kamba / BuzzFeed

「忍者カイ」のプレイ画面

ほかにも定番ゲームの「リバーシ」や、ウサギのキャラクターをあしらったパズルゲーム「ハートフレーバー」など、次々にチョイコンからファミコンへの移植を実現していきました。

ソフト制作に欠かせない部品が、ロムと基板。ロムは一般にはほとんど流通していないため、秋葉原の電器店で買い集めたそうです。

当初は中古ソフトを分解して基板を抜き出し、そのゲームの情報が入ったロムを外して、新たなロムをはんだ付けしていました。

作業の手間暇を考え、途中からは外部の工場に発注した基板を使うようになったといいます。

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緑色の基板の上に黒いロムが乗っている
Ryosuke Kamba / BuzzFeed

緑色の基板の上に黒いロムが乗っている

こうして10本以上の新作ファミコンが誕生したものの、身内でプレイして楽しむのが中心で、販売はしてきませんでした。

「自作のファミコンソフトがほしい!という趣味の話で、売るつもりもなかった。チョイコンを紹介してくれた雑誌に、読者プレゼントとして提供したぐらいです」

究極のクソゲー「電子艦隊ナック」

以前いた会社がゲーム事業から手を引くことになり、関さんは2012年にハッピーミールを立ち上げ、ゲームの権利を引き継ぎました。

チョイコンからファミコンへの移植作のうち、もっとも人気があるのが「電子艦隊ナック」です。

「電子艦隊ナック」のソフト。実在のゲーム「頭脳戦艦ガル」へのオマージュを込めたという
Ryosuke Kamba / BuzzFeed

「電子艦隊ナック」のソフト。実在のゲーム「頭脳戦艦ガル」へのオマージュを込めたという

縦スクロールのシューティングゲームで、開始早々に異様な数の敵が発生。私もプレイさせてもらいましたが、何がなんだかわからないうちに数秒で撃沈しました。

「クソゲーなんです(笑) 子どものころ、人気タイトルの抱き合わせで売られていた粗悪ゲームを再現しました」

全100面に隠された26のパーツを集めないと真のボスが出現しないのに、そのことについて一切説明がないという極悪仕様。

「ノーヒントなうえに、やることが多くて複雑。操作性もわざと悪くしてあります。ゲーム制作でやっちゃいけないことを全部やってますね」

「電子艦隊ナック」のプレイ画面
Ryosuke Kamba / BuzzFeed

「電子艦隊ナック」のプレイ画面

Switchソフトのおまけに

そんな究極のクソゲー「ナック」は、実はNintendo Switchでも遊ぶことができます。

2月にハッピーミールが発売したダウンロード専用ソフト「協撃 カルテットファイターズ」に特典として収録されているのです(データのみでファミコンソフトは付属しません)。

YouTubeでこの動画を見る

Happymealvideo / Via youtu.be

「協撃 カルテットファイターズ」ゲーム紹介PV

念のため補足しておくと、「協撃」は4人同時プレイもできる真っ当なシューティングゲーム。「ナック」のようなクソゲーではありません。

「スターソルジャー」「迷宮組曲」などの名作ソフトの音楽を手がけた、国本剛章さんがBGMを担当する本格的な内容です。

「最初は『ナック』だけ出そうと思ったのですが、あえてのクソゲーというコンセプトを理解してもらえないかもしれないと。そこで、『協撃』というちゃんと遊べるソフトをつくって、『ナック』はボーナスゲームにしました」

「ナック」で最高得点を出した人に、非売品のファミコンソフト「協撃 カルテットファイターズ オリジナルサウンドトラック」をプレゼントするキャンペーンも実施しています。

「昔、抱き合わせのクソゲーにムカついた人たちに、今度は楽しくつらい思いをして、懐かしんでもらえたら」

「協撃 カルテットファイターズ オリジナルサウンドトラック」
Ryosuke Kamba / BuzzFeed

「協撃 カルテットファイターズ オリジナルサウンドトラック」

最新作を開発中

関さんはいま、新たなファミコンソフトの開発に取り組んでいます。

ファミコンの発売から35年。ハードの性能は飛躍的に向上し、映画のように美麗なグラフィックや、VR技術による現実さながらのゲーム体験も可能になりました。

そんな時代にあって、ファミコンの魅力はどこにあるのでしょうか。

「制約のなかのアイディアで勝負できるところですね。3D映像より2次元のドット絵。ルールやシステムなど、ゲームの根源的な面白さを追求したいんです。昭和の人間なので、手にとれるカセットでつくりたいという思いもあります」

「中学生の時にゲームづくりを仕事にしようと決めました。いつかは自作ゲームをと思っていたので、自分の考えたものがファミコンソフトになるのは嬉しい。ゆくゆくは自作ファミコンソフトの本数でギネス記録に挑戦したいです」

「ゲームの根源的な面白さを追求したいんです」
Ryosuke Kamba / BuzzFeed

「ゲームの根源的な面白さを追求したいんです」

8月26日午後6時半から東京・新宿の「NAKED LOFT」で、「電子艦隊ナック」の10周年記念パーティーが開かれます。前売2800円、当日3300円。

国本剛章さんのバンドによる生演奏のほか、「協撃 カルテットファイターズ 」のゲーム大会も開催予定。個人戦の優勝者には「電子艦隊ナック」の非売品ファミコンカセットが贈られます。

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なにが「遊び」なのかは、人それぞれ。ゲームをしたり、写真を撮ったり、どこかへ出かけたり。つまらないと感じることでも、ある人の視点を通すと、楽しくなって、それが「遊び」に変化することもある。「遊び」には、限界がないのです。BuzzFeed Japanは、人それぞれの「遊び」を紹介し、平成最後の夏を思いきり楽しむ!