シンガー・ソングライターの遠藤賢司さんが10月25日に死去した。エンケンさんと言えば、浦沢直樹さんの漫画『20世紀少年』の主人公、遠藤ケンヂ(健児)の名前の由来となったことでも有名。BuzzFeed Newsは、浦沢直樹さんに思いを聞いた。
『20世紀少年』は、かつてロックミュージシャンを夢見ていたケンヂが、幼なじみらとともに、世界征服をもくろむ謎の組織「ともだち」と闘う物語。
完結編の『21世紀少年』と合わせて計24巻が刊行されており、唐沢寿明主演で映画化もされるなど、大ヒットした。
浦沢さんは「ケンヂは地球を守る男という設定。苗字を決めることになり、地球を守るケンヂと言えば、遠藤賢司しかいないだろうと。それで、同姓同名にさせていただきました。地球を守る遠藤賢司がいなくなってしまって寂しいです」と語る。
「頑張れ」は素晴らしい言葉
思い入れのある曲を尋ねると、少し悩んだ後にこう答えた。
「亡くなってしまったいまこそ聴くべき、という意味では『夢よ叫べ』でしょうか。もしくは、エンケンさんに不滅の存在でいてほしい、という思いを込めて『不滅の男』ですね」
「不滅の男」に登場する《「頑張れよ」なんて 言うんじゃないよ》という歌詞をめぐって、浦沢さんはエンケンさんからこんな話を聞かされたという。
「あの歌詞によって、『頑張れと言ってはいけない』という風に思われてしまったけど、自分は人に『頑張れ』という言葉を掛けるのは大好きなんだ、とおっしゃっていました」
東日本大震災の後、震災をテーマに漫画を描くことになった浦沢さんが、「頑張れ」という言葉がタブー視されている風潮への疑問を口にすると、エンケンさんは「いや、『頑張れ』はいい言葉だと思うよ」と答えたという。
「ご自身がそう言われた時に、『言うんじゃないよ』と突っ張るのも、ひとつのエンケンさんらしさ。ただ、『頑張れ』が悪いことのように受け止められることに対しては、内心忸怩たるものがあったようです」
「心を込めた『頑張れ』は素晴らしい言葉だ、という思いがあったのではないでしょうか」
いままでで一番いいライブ
今年の6月、渋谷クラブクアトロであったエンケンさんのライブを見に行ったという浦沢さん。「いままでで一番いいライブでした。こんなにいいライブをやるんだ。まだ『伸びしろ』があるんだ。なんてすごいんだろう」と感銘を受けた。
爆音で新曲を披露したエンケンさんに圧倒されたといい、「ただ音が大きいだけじゃない。円熟の大音量。ここまで磨きをかけられるのかと驚嘆しました」と賛辞を贈った。