1位:山尾志桜里、9歳下のイケメン弁護士と「お泊まり禁断愛」(9月14日号)
どれも現場が一生懸命つくった記事なんで順位はつけたくないんですが、週刊文春らしさや2017年を振り返るにふさわしいものを順不同で3本選んでみました。
山尾さんの記事はいまだに尾を引いてますね。
「男女の一線」というのがひとつの争点になっていますが、マジメな話をすると、それ以上に「政治家としての一線」を越えてしまった気がします。
政治家って言葉を武器にする仕事なので、自分の言葉を重くしなきゃいけない。政治は説得の技術ですから。
「痛みを伴う政策だけど、この人が言うならわかったよ」とか、「この人が言うんだから、将来的には正しいんだろう」とか。言葉に重みと説得力を持たせることが、政治家として一番大切だと思うんです。
だけど彼女は、自分の言葉をものすごく軽くしてしまった。
「ゲス不倫」の宮崎謙介さんをあれだけ批判しておきながら、自分は十分な説明責任も果たしていません。
「あなたにだけは言われたくない」「お前が言うな」っていうのは、「あなたに言われちゃしょうがない」の真逆ですよね。
「シド・アンド・ナンシー」みたいな、2人だけの正義があるのかなあ。人間的な興味は尽きませんけども。
余談ですが、山尾さんに直撃した記者は昨年末の「新語・流行語大賞」で、文春くんのマスクをかぶって一緒に登壇してるんですよ(※文春は「ゲス不倫」、山尾氏は「保育園落ちた日本死ね」でともにトップテン入り)。
直撃の時に「山尾さん、ご無沙汰してます」って言ったかどうかは知りませんが(笑)
2位:船越英一郎が松居一代に離婚調停 全真相(7月13日号)
松居一代さんの件は印象に残ってますね。彼女が動画で「週刊文春は私、松居一代をだましました」と言った影響もあって、その号は完売。山尾さんの号より売れました。
取材の端緒は、彼女が「船越が不倫している。書いてほしい」と人づてに私に手紙を渡したことでした。
我々は彼女の言い分に丸々乗っかるのではなく、客観的な裏付けの取れた部分だけを書いた。双方の主張を精査して、「現状ここまでがファクトです」と示したわけです。
松居さんのあのスクープは、SNSや動画と一体となった拡散の力を、まざまざと見せつけました。ネットと連動させながら紙を売っていくという意味で、すごく今日的なインパクトがありましたね。
きょうも松居さんが離婚会見しましたけど(取材は12月15日)、各社から「以前の記事を使いたい」という依頼がきています。
ワイドショーやバラエティー番組で週刊文春の記事や動画を使う場合、使用料をいただいています。取材費の足しになるぐらいには伸びており、ビジネスとしての可能性を感じています。
3位:下村元文科相「加計学園から闇献金200万円」(7月6日号)
山尾さんの件と対で考えていただくとわかりやすいのですが、週刊文春は与党であれ野党であれ、書くべきことは書きます。
メディアだって、朝日も読売もNHKもまんべんなくやる。これは広く知らせるべきだなと思ったら、相手がどこでも書きますよ。
我々は相手によって方針を変えるということはありません。意図的にターゲットを決めて、最初から「安倍政権を倒すためにやるぞ」みたいなのはおかしいでしょう。ただし、弱いものイジメに見られるようなことは絶対したくない。
僣越ながら、いまの新聞はそういう風に見えてしまっているのかもしれません。
安保問題も憲法問題も含めて、右と左がそれぞれ同じテーマを同じ手つきで批判して、同じ歌を歌っている。で、懐メロを好きな人だけがそれぞれ聴いているっていう。
それぞれが大きなタコツボと化して、決して交わらない不健全な言論状況。片方からもう一方を見て、「あいつらはフェイクニュースだ」とお互いに罵り合っているような。
それは決して好ましくないと思います。だから、週刊文春は常にど真ん中にいたい。何にもしっぽを振らないし、何にもなびかない。どっちも行くぞと。
「文春が言ってるんだからガチだよな」と読者の方々に信頼していただける存在になりたい。それが一番の目標ですね。
〈しんたに・まなぶ〉 1964年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。89年、文藝春秋に入社。『Number』『マルコポーロ』編集部や『週刊文春』の記者・デスク、『文藝春秋』などを経て、2012年から『週刊文春』編集長。著書に『「週刊文春」編集長の仕事術』(ダイヤモンド社)。
BuzzFeed Newsでは、今年で生誕150年を迎える異端のジャーナリスト宮武外骨をテーマに、週刊文春の新谷学編集長にインタビューしました。