半世紀近く街頭で踊り、「伝説の大道芸人」とも称されるギリヤーク尼ヶ崎さん(87)が10月9日、東京の新宿三井ビル「55ひろば」での青空公演を成功させた。病に苦しみながら、なお路上に立ち続けるギリヤークさんが、いま一番伝えたいことは。
午後2時、ギリヤークさんが車椅子に乗って姿を現すと、会場を埋め尽くした千人近い観客から大きな拍手が送られた。
この日は計4演目を披露。時に数珠を振り乱し、バケツの水をかぶったり、地べたに転がったりしながら、鬼気迫る熱演を見せた。
ギリヤークさんは38歳の時に大道芸人としての一歩を踏み出して以来、日本国内はもとより世界各国で街頭公演を行ってきた。
ところが、数年前からパーキンソン病と脊柱管狭窄症を発症。体の震えや痛みといった症状に悩まされるようになり、公演をキャンセルせざるを得ないこともあった。
それだけに、この日の公演に向けて数ヶ月前から練習を重ね、体調管理に努めてきたという。
亡くなった母や妹への思いをこめた「念仏じょんがら」のラストでは、母の遺影を掲げながら「母さん、一生懸命生きてるよ。誇りを持って踊るよ」と絶叫。客席から投げ銭が乱れ飛んだ。
「若い人に世界で活躍してほしい」
演目の合間や終わりにギリヤークさんがあいさつしたものの、涙で言葉に詰まったり、マイクを外していたりで、ところどころ聴き取りづらい部分もあった。
そこで、公演後に改めてギリヤークさんに取材したところ、「若い人たちに夢を持ってほしい」と語り出した。
「僕は自分だけの踊り、日本人の踊りをつくりたくて、禅を組んで仏教の精神を振り付けに取り入れたりしました。アメリカやロシア、東南アジアとか、海外の人たちもそれに感激してくれた」
「いまの若い人たちは僕なんかよりずっと頭もいいし、外国でも十分に通用する力を持っている。だから、日本の文化をよく学んで、世界で活躍してほしいんです。踊りに限った話ではなくね」
ギリヤークさんは来年、街頭デビュー50周年を迎える。
「病気もあるけど、来年の50周年に向けて全力で頑張る。今度はもっとちゃんと踊りますよ。頑張りますので、応援をよろしくお願いします」