ブラジル、サンパウロ発 ― サンパウロにあるBuzzFeedオフィスのバルコニーに出ると、曲がりくねった大通りから、「Ele no(エーレ・ナオ)」という叫び声が聞こえてくる。10月に入り、街のあちこちで見かけるようになった落書きと同じ言葉だ。レストランやバーの客も、同じ言葉を繰り返していた。
Ele noは「彼はノーだ」という意味であり、彼とはジャイール・ボウソナロのことだ。しかし筆者にとって、ボウソナロが大統領選挙で勝利したことは驚きではなかった。ボウソナロは私たちの暮らしに影響を及ぼし始めた不思議な力の新たな産物にすぎないからだ。
私たちとインターネットの関係について、何かが変化していると初めて感じたのは10年ほど前。筆者は2010年、今は亡きウェブサイト「Awl」のニュース担当インターンとして、ある解説記事を書いた。「4chan」の荒らしたちが分散型サービス妨害(DDoS)攻撃を仕掛け、今は亡きウェブサイト「Gawker」をインターネットから追放しようとした理由を解説した記事だ。
それは、筆者がよく知っている世界だった。筆者は当時19歳で、いわゆる「シット・ポスティング(クソみたいな書き込み)」に明け暮れていた。情報やプライバシー、政治、文化に関する古い概念がゆがみ始めた時代だ。
以来、筆者はインターネット文化の暗い進化を追い続けている。筆者は世界中で政治戦争が勃発する様子をこの目で見る機会に恵まれてきた。まるで不思議な呪いでもかけられているかのように。
筆者は過去4年間に6大陸の22カ国を訪れ、10以上の国民投票と選挙をじかに体験した。英国ロンドンでは、欧州連合(EU)からの脱退(ブレグジット)が決まり、人々がノイローゼのようになっていく過程。スペインのバルセロナでは、カタルーニャ州が独立を試み、何度も壁にぶつかる姿。スウェーデンでは、国内最大のブックフェアで、ネオナチ活動家がデモを行う現場。そして、現在はブラジルにいる。
しかし、インターネットが私たちにできること、しようとしていることに驚かされる時代はもう終わりだ。これ以上のダメージはないだろう。筆者は今、1つの事実を受け入れようとしている。筆者の残りのキャリアは、この時代の結末を報じることに費やされるという事実を。
2010年に4chanの記事を書いたとき、筆者は寮の部屋でマットレスに座り、壊れたラップトップのキーボードを鳴らしながら、記事を売り込むための電子メールを作成した。しかし現在の新しい闇は、ほぼ例外なく、スマートフォンの世界のみに存在し、ある米国企業のプラットフォームの悪用に関与している。
スマートフォンユーザーの約70%はAndroid搭載機種、残りの約30%はアップル製品を使用している。フェイスブックとYouTubeはそれぞれ20億人、WhatsAppは15億人の月間アクティブユーザーを持つ。そしてデジタルメディアに関しては、フェイスブックとグーグルがデジタル広告市場の60%近くをコントロールし、3位のアマゾンは大きく水を開けられている。
世界のスマートフォンの使い方は、シリコンバレーの少数の企業によって完全に支配されている。現在起きている悪用の原因は、これらの企業が責任を果たしていないことだ。これらのすべてが、表面化から3年で普通のことになり、フェイスブック、YouTube、WhatsApp、Twitterなどのプラットフォームは政治的・社会的な不安を増幅させるという前提が出来上がった。
私たちは今や、プラットフォームは国粋主義的な荒らしに悪用されると考えている。私たちは今や、プラットフォームはデータ企業に悪用されるとわかっている。私たちは今や、プラットフォームが大衆主義的なリーダーのキャリアを手助けするのを待っている状態だ。
もちろん、インターネットが誕生するずっと前から、大衆主義や国家主義、情報戦争は存在した。歴史の弧は必ずしも、筆者が進歩だと思う方向には曲がらない。社会は退行するものだ。今が過去と違うのは、すべてがほぼ例外なく、一握りの企業の手中にあることだ。
なぜ、フェイスブックのような米国企業がインドやイタリア、メキシコ、ブラジルの新聞に広告を出し、現地のインターネットユーザーに向けて悪用や偽情報への注意を呼びかけているのだろう? 私たちの暮らし、社会、政府が、オンラインとオフラインの両方で、見えないフィードバックループと結びついているためだ。しかも、そこから解放されるための明確な手段はない。
最悪なのは、ここにたどり着くまでの道のりに、大きな秘密など隠されていないことだ。
2013年、ロシアのソーシャルネットワークに1つの広告が掲載された。「インターネットオペレーター募集中! 職場はオリギノのシックなオフィス!!! 月給2万5960ルーブル(約4万3900円)。業務内容:プロフィールサイトへのコメント投稿、テーマのある記事、ブログ、ソーシャルネットワークの執筆。業務遂行後、スクリーンショットで報告」
採用された者たちは、サンクトペテルブルクの地下室で働き始め、ロシアの荒らし集団として悪名高い「インターネット・リサーチ・エージェンシー」(IRA)の起源となった。
2014年、ヒンドゥー民族主義者のナレンドラ・モディと、モディ率いるインド人民党が総選挙で圧勝した。この選挙は、インド初のフェイスブック選挙と言われている。モディはバラク・オバマに次ぎ、フェイスブックで2番目に「いいね!」の多い政治家となった。ヒンドゥー民族主義の波は農村部にも広がり、「牛を守る自警団」によるリンチへと発展した。
1カ月後、ミャンマー、マンダレーの通りが人で埋め尽くされた。イスラム教徒の男性が経営する喫茶店が暴徒に囲まれている。店主が、仏教徒の従業員をレイプしたというフェイスブックの投稿が、国粋主義者の僧侶アシン・ウィラトゥによって共有されたのだ。暴徒は次々と車に火を放ち、商店を破壊した。その後、暴力を止めるため、大統領令によってフェイスブックへのアクセスが遮断された。
2015年、27万人のフェイスブックユーザーが「This Is Your Digital Life」というサードパーティアプリを使用していた。このアプリは、ユーザー本人だけでなく、友人約8700万人のデータにもアクセスした。イギリスのデータ企業ケンブリッジ・アナリティカがデータを収集・分析し、「マイクロ・ターゲティング」に利用していた。
2016年5月、フィリピンで、極右のロドリゴ・ドゥテルテ大統領が誕生。フェイスブックが一定の役割を果たしたことは否定できない。フェイスブックは選挙の2カ月前、当時ダバオ市長だったドゥテルテが銃を持つ姿を掲載し、「誰もが認める話題の人」という称号を与えた。この後、インターネットセレブリティーたちが、ドゥテルテを中心としたプロパガンダ・ネットワークをつくり始めた。
1カ月後、ロンドンの初夏としては珍しい晴天の朝、筆者は街の静けさに不安を覚えた。英国民の52%がEU離脱に賛成票を投じた翌日のことだ。その後、ブレグジット支持派のキャンペーングループ「Leave.EU」が数カ月にわたり、ケンブリッジ・アナリティカのマイクロ・ターゲティングを利用していたという主張を聞くことになる。さらに、ロシアのIRAとつながりのあるボットや荒らしが、接戦に持ち込むためのツイートを、国民投票までの48時間で4万5000件も投稿していたこともわかった。
2017年1月、ドナルド・トランプがアメリカの第45代大統領になった。トランプは就任演説で、「アメリカの惨状は今ここで終わる」と約束。米国家情報長官はその後、ロシア大統領のウラジーミル・プーチンが「アメリカの民主プロセスに対する国民の信頼をむしばむ」ための情報キャンペーンを命じたと結論づけた。
2017年4月、極右の政治家マリーヌ・ル・ペンが、フランス大統領選挙の第1回投票を勝ち抜いた。決選投票では、報道規制が敷かれる前の数分間、対抗馬のエマニュエル・マクロンを標的にした「大規模な組織的」ハッキング攻撃があった。当時パリにいた筆者は、街のあちこちで催涙ガスの煙が上がるのを目撃した。目出し帽をかぶった抗議者たちが「全世界が警察を嫌っている」と繰り返し、歩道の車止めを次々と引き抜いた。反ファシストたちの間から、火炎瓶を満載したショッピングカートが現れ、機動隊の列に突進。筆者もローマ花火の直撃を受け、短時間ではあるものの、パンツの片脚に引火した。
1カ月後、極右のユーチューバーのグループが、イタリア警察に拘束された。地中海で難民救助船「Aquarius」号に照明弾を放つ様子を「Periscope」でライブ配信したことが理由だ。グループは「Reddit」や4chanの極右コミュニティーを通じてクラウドファンディンを行い、ある陰謀説を広めていた。「国境なき医師団」のようなNGOは、海上で難民救助に従事しているのではなく、違法な人身売買に関わっているというものだ。
筆者は、こうしたユーチューバーに取材を行おうとして、イタリアのシチリア島東部にある都市カターニアに到着したのだが、ユーチューバーたちのひとりであるローレン・サウザンから、グループはすでに街を出たという内容のメッセージを受け取った。「安全上のリスクがあります。原因はメディアです。彼らは本当に、20歳の若者たちの命を奪う可能性があります」と、彼女は書いていた。
2017年8月、米国バージニア州シャーロッツビルで、白人至上主義者の集会「Unite the Right」が開催された。チャットアプリ「Discord」やReddit、4chanで、白人至上主義者たちが組織した集会だ。集会に抗議する人々も集まっていたが、20歳のジェームズ・アレックス・フィールズ・ジュニアが800メートルほど車を走らせ、抗議集団に突入。白人至上主義者に反対していた32歳の女性活動家ヘザー・ハイヤーが死亡した。
1カ月後、ドイツの総選挙で、「ドイツのための選択肢」(AfD)が3番目に多い票を獲得。半世紀ぶりに、極右政党が連邦議会の一員となった。選挙戦最後の数時間、ロシアのボットネットがTwitterで極右プロパガンダをつぶやき始めた。さらにAfDは、トランプ陣営やル・ペン陣営とつながりのあるデジタルメディア企業と緊密に連携していた。
ベルリンのアレクサンダー広場にある「Traffic Club」のバルコニーにはAfDの党員が現れ、外のテラスには、1000人の反ファシスト運動家たちが押し寄せた。機動隊が盾を持ち、両者の間に壁をつくったとき、筆者は顔に雨粒を感じていた。AfDの党員たちは葉巻を吸い、互いにカクテルグラスを合わせながら、外の群衆に向かって同性愛者への暴言を吐いていた。
その数日後、バルセロナ大学の外で、カタルーニャ州出身の学生たちがジュリアン・アサンジとビデオ会議を行った。アサンジは学生たちに、WhatsAppや「Telegram」などのアプリを使うよう助言。学生たちはアプリを利用し、カタルーニャ州の独立に関する違法の住民投票を決行した。
投票中、スペイン警察が有権者たちを暴行した。数日後、極右の反独立派がバルセロナでデモを行い、「ジークハイル(ドイツ語の「勝利万歳」、ナチスが多用した言葉として有名)」と叫び、ファシストたちの歌を斉唱した。
筆者は、凱旋門で群衆を待ち構えるため、クモの巣のような旧市街の路地を駆け抜けた。筆者は街灯にぶら下がり、カタルーニャ州首相のカルラス・プッチダモンが数千人の独立派に向けて、近い将来スペインから独立することはないと告げるのを聞いた。カタルーニャ州の政治家が複数逮捕され、プッチダモンはベルギーに亡命した。
2017年11月、ポーランド、ワルシャワの街が、赤い炎と国旗、反ユダヤ主義(反セム主義)の横断幕で埋め尽くされた。
1週間後、筆者は凍えるような寒さの中、ポーランド南部にあるチェンストホバという小さな町の丘にいた。サッカーのフーリガンたちが地元チームのため、司祭の祝福を受けている最中で、辺りはワルシャワと同じ赤い炎に包まれていた。
フーリガンたちは、白人至上主義者やネオナチ活動家と腕を組み、ウイスキーのボトルを飲み干し、人種差別的な曲を歌った。その数週間後、ある法案が上院で可決された。ポーランドがホロコーストで果たした役割を認めることを禁止するという内容だ。
2018年2月、保温性下着を2枚重ねて着込んだ筆者は、韓国平昌の丘を走り、オリンピックスタジアムまでの大渋滞を回避しようとしていた。開会式は夕暮れどきに始まった。韓国の国家主義者たちが金正恩の写真を燃やし、警官と衝突。1人の女性が即席の小さなステージに立って太鼓を叩くと、音に合わせて観衆が叫んだ。筆者は、抗議者の一人に声をかけられ、韓国がトランプによる北朝鮮爆撃を求めていることを報じてほしいと言われた。抗議者たちは、米国旗とトランプの顔写真を掲げ、トランプを大統領に選んでくれてありがとうと言っていた。
2018年3月、イタリア。火炎瓶を投げ込まれた反ファシスト図書館は雪で汚れていた。ボランティアたちが部屋に残されたものを片付けている。ボランティアたちは筆者に怖いと明かした。これは政治的暴力の始まりにすぎないと考えていたためだ。予言は的中した。数日後のイタリア総選挙で、ルイジ・ディマイオ率いる反体制派の五つ星運動(M5S)が最大議席を獲得した。いっぽうオンラインでは、極右の大規模なボットネットが猛威を振るっていた。M5Sは、マッテオ・サルビーニ率いる右派政党「同盟(Lega)」と連立を結成。ポピュリストの支持者が急増したサルビーニは、難民救助船の入港を拒否することに一夏を費やした。
2018年6月、イギリスで、トミー・ロビンソンという極右のインフルエンサーが投獄された。リーズにある刑事法院の外でフェイスブックのライブ配信を行い、法廷侮辱罪に問われたのだ。数百人の支援者がホワイトホールに集結。トランプのイギリス訪問への支持を表明し、ロビンソンの釈放を求めた。なぜメディアは報じないのかと支援者の一人が言った。筆者はメディアの一員として報じると伝えたが、メディアとは「BBC」のことであり、筆者はフェイクニュースだという答えが返ってきた。
1カ月後、筆者はメキシコシティの歩道で、ベンチの上に立っていた。左派の大衆主義者アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)の支持者たちがヒルトンホテル前を通過するのを、少し上から見るためだ。ロペス・オブラドールはホテルの中から、「基本的に、私たちがこれから実行する変革は、私たちの国から汚職を排除することです」と語った。
オンラインでは、ボットがツイッターでAMLO支持派のトレンディング・トピックを量産し、フェイスブックのニュースフィードを、次期大統領に関するフェイクニュースであふれさせていた。
そして10月、ボウソナロがブラジル総選挙に勝利した。熱心な宣伝、国家主義、絶対的指導者のような態度という、有害だがソーシャルメディアに最適化された戦略で、ブラジルを軍事独裁制に戻しかねない個人崇拝の雰囲気を生み出した。
ボウソナロはプロパガンダの手段として、WhatsAppを選択したようだ。決選投票前の数日間、国内のマーケティング企業がWhatsAppを使い、有権者のスマートフォンを反左派的なプロパガンダであふれさせていたことが判明した。数日後、ボウソナロはフェイスブックで、もし大統領になったらWhatsAppのルールを変えてみせると発言した。ユーザーが一度に送信できるメッセージの上限に関するルールだ。
しかし実際のところ、どの国にいるかは問題ではない。どこに行っても、同じダンスが踊られているからだ。
読者の皆さんが暮らす国もおそらく、すべてではないにせよ、以下の一部に当てはまっているはずだ。まず、自国のインターネットに、ある種の荒らし問題があるかもしれない。米国の「MAGAsphere」、日本の「ネット右翼」、ペルーの「Fujitroll」、トルコの「AK Troll」などだ。
荒らしたちはおそらく、若い男性を対象にしたオンラインコミュニティーで急進化しているだろう。ゲームDL販売サイト「Gamersgate」や、フランスのビデオゲームサイト「Jeuxvideo.com」、スペインのクルマ掲示板「ForoCoches」、韓国の「日刊ベストストア」、日本の「2ちゃんねる」、イギリスのフェイスブック・ページなどだ。
次に、極右のインフルエンサーが現れ、コンテンツを推薦するアルゴリズムの助けを借りて、閲覧回数を増やしていく。インフルエンサーたちは、フェイスブックやTwitter、YouTubeを使ってコンテンツを拡散し、組織的な嫌がらせや脅しを行う。
次第に洗練されていき、抗議行動や集会を主催するようになるインフルエンサーもいるだろう。小さなファシストによるコミコンのようなイベントはライブ配信され、それを自宅で見る人々にとっては拡張現実(AR)ゲームのように機能する。その後、暴力や個人情報の「晒し」に発展する。
一部の荒らしやインフルエンサーは、極右グループ「プラウド・ボーイズ(Proud Boys)」、白人ナショナリスト運動である「アイデンティタリアン運動」、「自由なブラジル運動(MBL)」といった大規模な運動に乗じて、さらに洗練された極右グループを結成する。
「北欧抵抗運動」、「フットボール・ラッズ・アライアンス」、「ユナイテッド・パトリオッツ・フロント」、「西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者(PEGIDA)」など、歴史ある有力な極右組織、国家主義組織の活性化を試みる者もいる。
1つの極右コミュニティーが形成される間、オンラインではたいてい、フェイクニュースの嵐が吹き荒れる。偽情報が噂として広まる形もあれば、もっと伝統的な「フェイクニュース」、つまり、極めて党派色の強いプロパガンダもある。前者はインドやミャンマー、ブラジル。後者は主に米国、オーストラリア、英国などの英語圏で見られる。
通常、右派の大規模ニュースチャンネルや保守系タブロイド紙がこうしたフェイクニュースをフェイスブックで拡散し、もっと年齢の高い主流層に届ける。その国のメディア環境によっては、極右の荒らしやインフルエンサーが、ソーシャルメディアから新聞、テレビまでのルート全体を乗っ取ろうとするかもしれない。その後、スクリーンショットやミームを量産、共有する。それはフィードバック・ループだ。
波に乗っているポピュリストのリーダーやインフルエンサー軍団は、フェイスブックやYouTubeなどのプラットフォームにフィルターバブルをつくることが可能だと知っている。こうしたフィルターバブルは、安全な時間を約束してくれる。こうした抗議行動、暴力、危機の連鎖、そして果てしないニュースの連鎖が起きる前は、存在すらしなかった安全な時間だ。
トランプは、アメリカを再び偉大な国にしたいと考えている。ボウソナロはブラジルを軍事独裁制に戻したがっている。安倍晋三は帝国主義への回帰を望んでいる。AfDはかつての権威主義を懐かしむ元東ドイツの年配有権者から最も票を集めた。これらすべてのリーダーが、国境を封鎖し、安全を確保すると約束している。もちろんそうなれば、リーダーたちが消えると断言している問題はむしろ深刻化するだろう。もうひとつのフィードバックループだ。
フェイスブックの最高セキュリティー責任者を務めていたアレックス・スタモスは8月の記事で、フェイスブックがロシアやイラン発の偽情報キャンペーンから米中間選挙を守ろうとしても、すでに手遅れだと指摘していた。しかしおそらく2020年までには解決できるだろう。また、先進国や富裕層に限っては、状況が安定する可能性は十分ある。
ほとんどの国で、信頼できる出版物は有料の壁を築き始めている。Amazon プライムやNetflixも、エンターテインメントを定額サービスとして提供している。つまり、有料サービスを利用する余裕がある人にとっては、荒らし、悪用、フェイクニュース、陰謀論を流布する動画、データ漏えい、プロパガンダなどは、いずれ問題ではなくなるということだ。
その反面、貧困層や高齢者、若者が情報弱者になってしまう可能性が高い。これはすでに現実になっている。イギリスで10月に発表された調査レポートは、貧困層が読むニュースは富裕層に比べ、量も質も劣ると指摘している。
また、ピュー研究所の新しい報告によれば、事実と意見を区別できる65歳以上はわずか17%だという。Instagramで健康関連の情報を共有する10代のコミュニティーはもはや、陰謀サイト「Infowars」顔負けの、怪しい情報の巣窟と化している。
ごく普通の人たちが、編集者によるチェックや規制なしに、アルゴリズムが選んだミームやニュースフィード、YouTubeの動画を見せられる「情報砂漠」は、あちこちに存在する。ブラジルのファクトチェック機関は大統領選挙の前、有権者のほとんどはテレビや新聞で見る情報より、友人や家族がWhatsAppで送ってきた情報を信じると指摘していた。
しかし、楽天的なアメリカ人たちが技術進歩の名のもとで略奪的行動を行うことは、特にブラジルのような国では目新しいものではない。ブラジル北部には、フォードランディアという町がある。1920年代、ヘンリー・フォードによってつくられた町だ。フォードは、イギリスによるゴムの独占を回避する方法を探していた。そして、ブラジルのパラー州と、約1万平方キロの土地に関する契約を結んだ。フォードが得た利益の9%をパラー州が受け取り、フォードは輸出税を免除されるという内容だ。
ブラジルの新聞各社は興奮し、フォードがやって来ると大々的に報じた。フォードが適正な賃金を約束すると、フォードランディアで仕事と家を得るため、国中から労働者が押し寄せた。
ところがこのプロジェクトは、考えられるあらゆる点で大失敗だった。フォードはアメリカとそっくりの町をつくり、従業員にアメリカ式の食事を与えた。新しいブラジル人従業員たちはこれらすべてに拒否反応を示した。さらに、自治体がアルコール、女性、たばこ、サッカーを禁止しようとしたため、労働者たちは禁制品をこっそり持ち込んだ。その後、黄熱とマラリアの感染者が現れ始めた。しかも、フォードの幹部たちは熱帯でゴムノキを栽培する方法を知らなかった。結局、胴枯れ病や寄生虫が原因で、ほとんどの木が枯れてしまった。
1930年代までに、労働者たちは暴徒と化した。フォードの幹部はジャングルに逃げ込み、ブラジル軍が介入する事態となった。1934年、フォードランディアはついに放棄された。フォードはその後、合成ゴムの製法を学び、ブラジルのゴムなど不要だったことに気づいた。フォードランディアは2017年まで廃墟だったが、近くの自治体が、機能的な町として復興させることを決断した。
現在、「ソーシャルメディア版のフォードランディア」が世界中で生まれている。これらはおそらく長く続かないだろう。しかし、そのダメージは違う。揺るがされた民主主義、急進化した人々、誘発された暴力は、長く尾を引く可能性が高い。それでも、企業が立ち去った後、私たちがきちんと機能する社会を再構築するまでに、100年もかかることがないよう願っている。
この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan
