いつまでもさわっていたい。世界が注目する楽器の原点は日本にあった

    いい話すぎて。

    文字を書くように、音楽を奏でる。これは未来ではなく今日起きていることです。

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    この小さな箱の名前は「ライトパッド・ブロック(Lightpad Block)」。指の動きや力加減を変えながら、かんたんに演奏や作曲ができるポケットサイズの電子楽器です。

    大ヒット曲「Happy」などで世界の音楽シーンを牽引してきたファレル・ウィリアムスも魅了され、なんとこの楽器を作ったイギリス企業ROLIのチーフ・クリエイティブオフィサーに就任。

    さらにユニバーサル ミュージック グループなどから投資を受けたりと、いま世界の注目が集まっています。アツイ未来しか見えない…!

    そもそも、どうやってこんなすごいものを思いついたんでしょうか? 1月16日、アップルストア銀座のイベントでROLIの創業者ローランド・ラム(Roland Lamb)さんに話を聞きました。

    ジャズピアニストだった僕。ギターやサックスへの嫉妬が開発の原動力に

    禅を学ぶため、日本に住んでいたこともあるローランドさん。ROLIの画期的な電子楽器が生まれた背景には、日本での経験が大きな影響を与えてくれたそうです。

    「20代のころ、僕はジャズピアニストとして日本でバンド活動をしてました。でも、サックスやギターのソロを聴くたびに、ちょっっ っ っ とだけジェラシーを感じてたんですよね」

    ギターのように音をビブラートさせたり、サックスのように息づかいで音量をコントロールしたり… 楽器の王様とも言われるピアノにもできない音楽表現がある。

    「何年か経ったあとも、その嫉妬心は頭から離れませんでした。ピアノの前に座りながら、どうしたらピアノの音を変化させられるか考えてましたよ。そんな強い欲求が、発明の原動力になったんです」

    書道が教えてくれた、すべての音楽を奏でる5つの基本動作

    悩む日々の中、ローランドさんは10代のころに日本で通った書道教室のことを思い出します。

    「書道って文字の見た目をコントロールするでしょう? 筆をつける速さと強さがあり(Strike)、押しつけたり(Press)、左から右に滑らせたり(Glide)、上から下に動かしたりして(Slide)、筆を浮かす(Lift)。止め、はね、はらいなどの筆運びは、5つの基本動作から構成されていると思いました」

    もし書道で学んだ5つの基本動作をピアノのような鍵盤で実現できれば、すべての楽器のすべての表現を自分の指で捉えられるのではないか?

    それがインスピレーションの根源となったのです。

    さまざまな楽器の音楽表現を可能にした最初の発明

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    うーん。すごい。ジャズライブからリサイタルまで自由自在ですね。

    しかしここでは終わりません。書道から得たインスピレーションは「電子音楽の表現を豊かにするための手法においても、基礎となる重要な考え方」にもなっていたのです。

    もっと簡単に、もっと手頃な価格に

    ローランドさんが通っていた書道教室には5歳児もいました。つまり基本動作だけなら子どももできるはずです。

    「もっと簡単に使えて価格も下げられれば、もっと多くの人のクリエイティビティが広がる可能性は十分にあるのでは」

    そんな考えが、5つの基本動作がそのまま使える冒頭動画の「Lightpad Block」という小さな楽器の誕生へとつながりました。すごい!

    さっきのSeaboardと一緒に演奏するとこんな感じ。

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    いいなあいいなあ。見てるこっちまで幸せになるなあ。

    SeaboardやLightpadはMacの音楽制作ソフトとも連携できますが、専用のiOSアプリと連携させるのが手っ取り早くておすすめ。

    ファレルの「Happy」をパート別にバラしたサンプル音源セットも無料で使えます。なんて太っ腹なんだ!

    書道が生んだ新しい楽器と音楽表現。人々のクリエイティビティが今後どんな風に開花していくのか楽しみですね。