新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、外出を控え自宅に待機するよう政府が市民に要請する動きが世界各地で広がっている。一方でこれは、小さな飲食店や食料品・生活必需品以外のものを売るお店など、ローカルビジネスにとっては、大打撃だ。
米ワシントンD.C.にある古本屋、キャピトル・ヒル・ブックスは、約20年地元の人々に愛されてきた。週末に近くで市場が開かれると、店を訪れる客も増える。店の売り上げのほとんどは、週末に集中していた。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を懸念し、3月16日から一時的に店を閉じた。かわりに1日のうち1時間、予約客のみ(4人以下)を店に入れるようにしていた。
もちろん経営状態も悪化をたどり、店主や店員たちが頭を悩ませていると、1通のメールが届いた。
「100ドル(約1万円)払うので、中身のわからない本の詰め合わせを送ってくれませんか?」
店のツイッターアカウントに投稿すると、「ナイスアイデア!」「うちにも欲しい!」など多くの反応が寄せられた。
Favorite email of the day so far: “If I give you guys $100 can you send me a mystery bag of books?” Yes. Yes we can.
「今のところ今日一番よかったメール:『100ドル払うので、中身のわからない本の詰め合わせを送ってくれませんか?』。できます。できますとも」
このリクエストから、店は本の新しい販売方法を編み出した。
好みのジャンルと値段を指定したメールを店に送ると、価格帯に合わせた数のオススメ本が詰まった「ミステリーボックス」が届くという仕組みだ。
25ドル(約2500円)、50ドル(約5000円)、100ドル(約1万円)の3種類がある。
ABCニュースによると、サービスを開始してから2日で約150件の注文があった。
自宅で過ごす時間が増える中、店員が選んだ本がランダムに届くのは、地元の人々にとって良い娯楽になっているようだ。店員たちもまた、本の選定を楽しんでいる。
Just love this!!! @chbooksdc will make all your curated reading dreams come true 💫🧚 #SupportLocalBusinesses https://t.co/YTyaorngzf
「すごくいい!選んでもらった本を読みたい、そんな夢をキャピトル・ヒル・ブックスが叶えてくれるよ」
引用元のキャピトル・ヒル・ブックスのツイート
「社会的距離を保っていて、何か読むものが欲しくてたまらない人へ:ご注文の品を厳選して、発送の準備をしているところです」
「わずかな枠の予約客しか受け入れていない現在、私たちにとってはとても大切(な収入源)です」と、オーナーの一人、カイル・バークさんは地元ラジオ局WAMUの取材に答えた。
店は現在5人の正社員を抱えているが、新サービスのおかげで、今のところ雇用状態に影響はないという。感染予防のため店員たちは皆、除菌した手にゴム手袋をはめて作業にあたっているそうだ。
店を閉じてからは「ストレスの多い日々だった」とバークさん。
「毎朝起きて、もうその時点でわかっているんですよ。同じ時間に歩いて、また同じ時間にガムを噛むって」
「皆さんのサポートには本当に感謝しています。今手を差し伸べてくれている人々は、まさに大きな違いを生み出しているんです」
本が詰まった「ミステリーボックス」は、続々と客の元に届いているようだ。
My mystery box from @chbooksdc arrived! Requested parameters: not depressing.
「私のミステリーボックスが来た!リクエストは『暗くないもの』」
@wamu885 @chbooksdc Thanks @chbooksdc for the awesome mystery bag!
「素敵な詰め合わせをありがとう!」
サムネイル画像:Getty Images