我が子に性教育を始めるなら、一体何から教えればいいんだろう?

「月経、精通、セックス」の説明?
大切な話だとはわかっているけど、なんだか、子どもには話しづらいと感じる…!?
こうした思いから、性教育に抵抗感を持つ人は少なくないかもしれません。しかし! 性教育の入り口は決してハードルが高いものではなく、親も子どもも「話題にするのが恥ずかしい」と思うようなものではないのです。
今回、記事で紹介する本は『おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方』(KADOKAWA)です。

著者のフクチマミさん自身、はじめは性教育を「口に出すのも、調べることも恥ずかしい」と感じていたといいます。
しかし、性教育の奥深さを知るにつれて、目から鱗がポロポロ落ちるような経験をしていきました。
3歳から10歳の子どもを対象にした本から最初にピックアップするのは、「プライベートパーツ」という言葉です。
対象年齢を過ぎた人でも学ぶことがあり、「もっと早く知りたかった」と感じるかもしれません。
子どもへの性教育の第一歩は「プライベートパーツ」。大人でも聞き慣れないですが…

親子であってもおしりを触ってふざけるのはよくない…!?

「勝手に見たり触るのが『好き』の表現だと教えてしまうことになりかねないんだ」

親や大人が線引きしないといけない。それは被害者にも加害者にもなってしまう可能性があるから。

「月経、精通、セックス」は性教育のほんの一部
この漫画は、イラストレーターのフクチマミさんが、村瀬幸浩さんとともに執筆した『おうち性教育はじめます』の一部です。
村瀬さんは、高校の保健体育科教諭として25年間勤務後、一橋大学などで25年間講義をしてきました。本を書くにあたって、はじめは知識がなかったフクチマミさんに、専門家として「性教育とはそもそも何か」を伝えました。
その性教育の内容は、生殖にまつわることだけでなく、自分や他者を大切にするために必要なことも含まれていました。
フクチマミさんは、BuzzFeed Newsの取材に「セックスや月経、射精についての説明が難しいと思う人もいると思います。ですがまず、それ以外にも伝えられる話がいっぱいあるんです」と投げかけます。
「プライベートパーツ」もその1つで、「その人の身体はその人のものだから、親であっても侵害してはいけない場所」という考え方を持ちます。
「プライベートパーツは、セックスの話の基礎にもなります。セックスは、大切に守ってきたプライベートパーツを開け放つ行為だからです」
本には「今までは、性教育の一部分しか知らなかった」、そして「幅広さと奥深さをもっとみんなに知って欲しい」という思いが込められています。
読者の方からのお便りには「目から鱗が落ちました」という感想が多かったといいます…
おうち性教育をすんなり理解してくれた娘。
フクチマミさん自身も、村瀬先生から学ぶことで、性教育とは何かを理解していきました。しかし、いざ自分の子ども相手に実践するとなると、はじめは抵抗感がなかったとは言えないといいます。
フクチマミさんは、当時、10歳と7歳の娘2人への性教育をどのように始めたのでしょうか。尋ねると、フクチマミさんも「プライベートパーツ」からおうち性教育をはじめたと返ってきました。
「子どもってお尻とか大好きで、しょっちゅう触りにきたり、触りあったりしています。それをプライベートパーツだと説明しました」

最初、2人の娘は「ここが特別扱いされている」と、遊びの一環みたいに喜んでいました。しかし、生活の中でくり返し伝えるうちに、姉妹間でも「プライベートパーツだから触らないで」といった会話が見られるようになりました。
親が説明することに抵抗を感じやすいセックスについて説明した時も、娘が戸惑う様子はありませんでした。
「性にまつわることについて、冷やかしたり茶化したりせず、常に真面目に伝えています。だから戸惑わなかったのかも。そもそも、性は恥ずかしいものだという意識に、大人の態度が誘導してしまうのかもしれません」
家庭での性教育は、単に子どもが学ぶためのものではありません。親が愛情を伝え、子どもの自己肯定感を育てるものでもあります。
そのためには、親自身が性について学び、子どもに伝え、子どもと一緒に学ぶというプロセスが大切だといいます。
「先日、娘とテレビを観ていたとき、たまたま性教育特集が始まったのですが、私たちの間に気まずい雰囲気が生まれなかったことに驚きました」
親であっても「完璧」を求めなくていい
子どもに性教育をする際は、淡々と科学的な事実だけを伝えることが大切だと説明します。自身の経験や価値観を共有する必要はありません。
とはいえ、「知識を満遍なく吸収してから、子どもに説明しなくてはいけないの?」と考えてしまうかもしれません。でも、その心配はいりません。
だって、誰もが初心者ですから。学校でも、親からも、きちんと性教育を受けていない人も多いのではないでしょうか。
だから、子どもに性教育をする時点で「完璧」を求める必要はない、といいます。フクチマミさんも本を娘と読みながら説明をし、ともに学んだといいます。
村瀬先生も「完璧じゃなくていい」と話していた、とフクチマミさんは振り返ります。

「わからなかったらその場で本に頼る、信頼できるサイトを調べて見ながら子どもに伝える、というやり方でいいと思っています。
どうしても一緒に見るのが恥ずかしかったら、『ここのページ』と教えて別の部屋に行っていてもいい。今、自分のできる中で、伝えようとする姿勢をしっかりと見せることが大切です」
親が自分と向き合いながら性教育をするのが良いように、子どもの成長段階を踏まえて教える内容を考えることも大切です。
例えば、子どもが「プライベートパーツという言葉を理解するのはまだ難しいかも…」という場合は、「お尻と口と胸は大事だよ」と繰り返すのでも十分。
また、子どもが中学生以上になって、直接性の話をしづらい場合は、本を渡して読んでもらうことだって性教育の一環です。
「子どものために…自分のためでもいいんです。一歩踏み出してみると、性教育ってすごく面白いです」