「どんな人でも救えるよう、言葉を選ぶ力を諦めてはいけない」。デパートの化粧品売り場で起きたこと。

人に渡す言葉を考える機会になればーー。勇気を振り絞って口紅を買おうとした人が投稿したツイートに称賛の声が集まっています。

勇気を振り絞って口紅を買おうとした人が投稿したツイートに称賛の声が集まっています。

いちとせしをり @liegirl_1chan

今日帰り道、デパートの化粧品売り場に寄ったんだけど、そこで"欲しかった"口紅を眺めていたら店員さんがわたしに「この色とっても素敵ですよね、試してみますか？」と言ってくれた。「プレゼント用ですか？」と聞かれなかったのだ。男のわたしに対しても、こんな接客がもっと広まったらいいな。

12:19 PM - 15 Jul 2020

いちとせしをりさんのTwitterより / Via Twitter: @liegirl_1chan

「試してみますか？」そう言われたという投稿。

人へ渡す言葉を考える機会になればーー。そんな思いからTwitterに投稿しました。

「完璧に全ての人を包むのは難しいかもしれない。ただどんな人でも救えるよう、言葉を選ぶ力を諦めてはいけない」

投稿したいちとせしをりさんにBuzzFeedは話を聞きました。

デパートに行ったきっかけ。それは27年間の人生すべての勇気を振り絞っても買えなかったマニキュア。

いちとせしをりさんのTwitterより

（友人からプレゼントされたマニキュアを塗った爪）

何度ドラッグストアに足を運んでも、目の前にあるのに買えず、法律に違反しているかのような気持ちになったと話す、いちとせさん。

そんな中、友人から人生ではじめてのマニキュアをプレゼントしてもらいました。

「そこでマニキュアの色に合う口紅が欲しいと思っていました。そんな日常の中、いつもと違う帰り道でデパートの近くを通って、そこでふと『欲しい』感情を抑えきれなくなり化粧品売り場まで向かいました」

化粧品のフロアになんとか辿り着いてからぐるりと、まずは一周してさりげなく、欲しかった口紅を視界に入れました。

店員さんと目があったとき、とっさに「怒られてしまう」。そんな思いがよぎりました。

近づいてきた店員さんと向かい合い、そのままありえないほどの涙を流したといいますが、マニキュアをくれた友達と同じように、ひたすら温かく接してくれたのだそう。

「この色、とっても素敵ですよね。試してみますか？」

Igor Ovsyannykov / Getty Images

以前、初めてひとりでワンピースを買った日、いちとせさんは店員さんに言われた一言が印象に残っているといいます。

それは「プレゼント用ですか？」という言葉。

でも今回は「試してみますか？」という言葉。

後から気づいたことだと言いますが、このワードは「来店した多くのお客さんをすくう、魔法の言葉」なのだと自身のnoteで語っています。

「なにも、絶対に唇に塗れとは言われていない。自分用として来たわたしはそのまま口紅を試すことができ、プレゼントだった場合は、手の甲などで色味を確認して実際に見る動作に入れる」

結局口紅は買わなかったけど。

Peter Dazeley / Getty Images

「わたしが口紅を塗ってもいいですか？」

そう店員さんに尋ねると……

「もちろんです。もうすでにわたしは、お客様に似合うお色が、見えていますよ」

店員さんは最後まで、いちとせさんに合った言葉で寄り添ってくれたといいます。

これからも、自分らしく生きるために。そのときはきちんと、買わせてくださいーー。

精一杯の約束を心の中でしたといいます。

いちとせさんはこの出来事から得た気づきをこのように語ります。

「性別関係なく『自分らしく生きる』、それを包んでくれる人は思っているよりもいるというところでしょうか。わたし自身も包める人になりたいと、より思いました」

Twitterで26万6千以上のいいねを集めたこの出来事（7月20日現在）。

リプライでは「自分の中の『当たり前』を押し付けない対応って素晴らしいです」「現在美容部員をしていますがLGBT研修や男性が来店したときのために『プレゼント用ですか？』は禁句になってます」などの声が寄せられています。

反響を見て、このように話します。

「自分らしく生きることに優しい人がたくさんいるというところです。とはいえ、自分の思いが『当然受け入れてもらえる』と思いすぎないようにはしたいですね。お互い寄り添う言葉を育み、心を尊重し合いたいです」

「お化粧をしたい人は、どんな人でも楽しめるようになってほしいと思います」

出来事の様子を綴っている、いちとせしをりさんのnoteはこちら。