注意:この記事には、悲惨に感じられるかもしれない画像が含まれています。
「全米ライフル協会へ。これが私の、『自分の持ち場』です」
医療を専門とする人々が、銃による犠牲者を治療するという現実がどんなものかわかる凄絶な写真をシェアしている。
「私たちは銃による犠牲について、口を閉ざしたりはしません。私は患者のために、そして二度と前と同じにはなれない患者の両親のために、こういった状況を経験する必要がなかった全ての人のために声をあげます。これは、みんなの『持ち場』なんです」
全米ライフル協会が、銃規制を支持する医師に「自分の持ち場にとどまれ」と忠告するツイートに対する反応である。
カリフォルニア州のサウザンドオークスのバーで12人が犠牲となる銃乱射事件が起きた11月7日と同じ週に、全米ライフル協会はTwitterに投稿。
「銃に反対している偉ぶった医師たちに、自分の持ち場にとどまっていろ、と誰かが言うべきだ」
銃暴力の問題への取り組みを提案した、米国内科学会の研究論文に対する批判だった。
これを受けて、全米ライフル協会は、銃による犠牲者を日常的に治療している医師らから多数の非難を受けている。
「毎週、遺体からどれだけの弾丸を抜き出しているか、想像がつきますか? これは単に私の持ち場の話ではないんです」と法医学者のジュディー・メリネック氏はTwitterで返信した。
「これが、いまいましいことに私の戦場ですよ」
他の医療関係者も、銃被害の最前線にいる現実がどんなものかがわかる凄絶な写真とエピソードをシェアして、全米ライフル協会に反論を試みている。
そのうちの4人が12日、BuzzFeed Newsの取材にメールで答え、仕事の中でもっとも辛い部分は、犠牲者の家族に話をすることだと話した。
ロサンジェルスにあるカリフォルニア大学の心臓胸部外科研修医ロバート・ライアンズ氏は、BuzzFeed Newsに「その時の生々しい感情は、全ての医師のなかに留まり続け、消えることはありません」と話す。
「患者の死は、家族とその患者を助けようと力を尽くした全ての人に影響を与えるのです」
「16歳の患者。大動脈を銃で打たれた傷。患者の母親が待合室にいます」。ライアンズ氏はマスクに血が飛び散った写真とともにTwitterに投稿。
「全米ライフル協会へ。母親に子供は助からなかったと伝える勇気はありますか。ないでしょうね。 #自分の持ち場にとどまれ #これこそが私の持ち場」
「写真に現れていないのは、大多数の看護師や医師、技術者、スタッフが全身全霊で、この犠牲者だけではなく、ここにやってくるすべての犠牲者を治療している姿です」と彼は話す。
フィラデルフィア州ペン胸部外傷センターの理事のアダム・シロフ氏は、銃による犠牲者を10年以上治療している。
「Twitterで友人や同僚が何度も伝えているように、最もつらいのは、複雑で危険性の高い手術といった技術的な面ではなく、人間的な面。家族に訃報を伝える前に、血まみれの手術着を着替えなければいけないときです」と彼は話している。
「助からなかった人の血を洗い流すために、流し台で手を6回洗うとき。手術中は時間がないので、手袋に穴が開いても変えられないから」
「手を洗いながら、犠牲者は自分の息子だったかもしれないし、娘、父親、母親だったかもしれないと思うのです。なぜなら弾丸は、黒人か白人か、裕福か貧乏か、なんて関係なく飛んでくるのですから」
「患者の死は、医療チームを壊滅的な気持ちにさせます。そして、私たちは日々それを経験しているのです」
また別の医療従事者とみられる人も、血まみれの病室の写真とともに「彼女は助かりませんでした」と投稿している。
オレゴン健康科学大学の准教授エスター・チュー氏は、今までずっと都市部の外傷センターで救急医として働いてきて、銃器によって怪我をした数え切れないほどの患者を治療してきた。
「銃暴力で子供が亡くなったと母親に伝えるのは、絶対に慣れることはできません。慣れることがないよう願います。そして私たち全員が、銃規制の分野で、科学の発展と公衆衛生による対策に失敗してきたことを許すことはできません」
SNSで全米ライフル協会に反論したことで、注目を集めたサンフランシスコの法医学者のメリネック氏。BuzzFeed Newsに、300以上の銃による傷のある遺体を検死してきたことを話した。
「1つしか銃痕がない遺体もあれば、43もの銃痕がある遺体もありました。銃撃に巻き込まれてしまった子供を検死したこともあるし、両親に意図を持って殺された子供さえ担当したこともあります」
しかし、メリネック氏は、「解決方法はある」とアメリカに知ってほしいという。
「医師や科学者は、私たちに自動車やタバコによる死をどうやって軽減すればいいか伝えました。銃による死を減らしたいと思うなら、銃による暴力を研究している医師や科学者の話を聞くべきです」
シロフ氏もアメリカにいる人々に「この問題の幅広さを理解すること」を求めている。
「サウザンドオークやピッツバーグで起こったような、大量の死傷者を出す事件は、もちろん恐ろしいことです。しかし実際には、アメリカのすべての主要都市で毎週、銃による多数の死者が出ているのです」と彼は言う。
「医療業界にいる大多数の人々は、銃に反対しているのではなく、無意味で避けられる死に対して反対しているのだということを、人々に理解してほしいです」
この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:フェリックス清香 / 編集:BuzzFeed Japan