チーム医師による性的虐待事件の影響は今も続く

    米国体操協会のケリー・ペリー氏は3日夜、最高経営責任者(CEO)を辞任した。就任後わずか9カ月、コーチのメアリー・リー・トレイシー氏が解雇されてから4日後のことだった。

    米国体操協会のトップ、ケリー・ペリー氏の辞任は、長期にわたりチーム医師を務めたラリー・ナサー被告が、複数の性的虐待や児童ポルノ関連の罪で有罪判決を受けた影響が続くなかでのことだった。

    米国体操協会理事会のカレン・ゴルツ理事長は、協会長と最高経営責任者(CEO)を兼任していたペリー氏の辞任を発表する声明の中で、「非常に難しい状況の中で指導力を発揮してくれたペリー氏に感謝する」と述べた。

    「当協会の選手と体操界全体に衝撃を与えた恐ろしい出来事を受けて、当協会は、選手の安全確保と選手のために動くという我々の使命の最重要部分を守るため、協会の安定化と新たな道の敷設に向けて前進してきた」

    ゴルツ理事長は、暫定CEOを探す間の運営を行う管理委員会を理事会が立ち上げたことを明かし、永続的なCEOを見つけるための委員会も設置したと書いた。

    米国体操協会は、当時チーム医師だったナサー被告による性的虐待が2016年に明らかになって以来、度重なる激震に見舞われている。

    ナサー被告をめぐっては、医療行為と見せかけて性的虐待を行なったとして、オリンピック金メダリストのアリー・レイズマン選手やシモーン・バイルス選手を含む100人以上のアスリートが被害を訴えていた。ナサー被告は別々に行われた2つの裁判で、禁固40〜175年40〜125年をそれぞれ言い渡されている。

    ペリー氏は3日、就任後わずか9カ月で辞任した。コーチのメアリー・リー・トレイシー氏が、レイズマン選手に連絡したことが原因で解雇されてから4日後のことだった。

    レイズマン選手は、ナサー被告から被害を受けた自身と同じ「サバイバー」のために積極的に声を上げており、トレイシー氏が任命されたことについてTwitter上で疑問を投げかけていた。

    ナサー被告への非難が数多くあったにもかかわらずトレイシー氏が同被告を支持していたと指摘。ナサー被告に虐待された被害者を非難したとして同氏を責めた。「サバイバーに対する侮辱であり、米国体操協会が何も変わっていないことを示すさらなる証拠だ」とレイズマン選手はツイートした。

    USA Gymnastics has appointed someone who, in my view, supported Nassar, victim-shamed survivors, & has shown no willingness to learn from the past. This is a slap in the face for survivors, & further confirmation that nothing at @USAG has changed. What a profound disappointment! https://t.co/lklLiqsOCJ

    インディアナポリスの地元紙インディアナポリス・スターのマリサ・クウィアットコウスキー記者のツイートによると、トレイシー氏はFacebookに声明を投稿。レイズマン選手に連絡したのは謝罪しようとしたためだと説明した。

    トレイシー氏は投稿の中で、「体操界をよりよくするために、そして過去のあらゆる過ちから学ぶために、一緒に努力できるのでは」と思ったと述べた。また、レイズマン選手を始めとする被害者の誰にも連絡をしてはいけないとは聞いていなかった、と加えた。

    Mary Lee Tracy says she has to resign as USA Gymnastics' elite development coordinator.

    米国オリンピック委員会のサラ・ハーシュランドCEOは8月31日に、「米国体操協会は効果的な責務の管理に苦労しているようだ」として首脳陣の変更を求めていた。

    ペリー氏は昨年12月、ナサー被告の事件による影響の対応に協会が苦労する中、スティーブ・ペニー氏からCEOを引き継いだ。協会の対応に関する疑問に答えるため、ペリー氏は米国議会での質疑応答を求められたが、そこでは、十分な改革がなされていないとして非難を浴びた。

    バイルス選手は8月、協会の改革について問われると、「正しい方向に向かっていると思いたい。でもケリー・ペリー氏がはっきりと話すまでは誰にもわからない。だから難しい」と答えていた。

    ゴルツ理事長は、米国の体操界に向けて書いたペリー氏辞任を伝える声明の中で、「ここ数カ月で多くがなされてきた」としつつ、「体操界を前進させるために根本的な変化を遂げようと全員が努力するなか、まだまだ非常に多くの課題が残されている」と述べた。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。
    翻訳:松丸さとみ / 編集:BuzzFeed Japan