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私は子宮頸がんになって子育て、性生活を諦めた 愛し合うことが傷つけ合うことにならないように知っておきたいこと

妊活中に子宮頸がんにかかり、子宮を摘出することになったYokoさん。再発したがんの治療をしている今、夫との性生活も断念しました。今、健康でいるあなたに、ライフプランを大きく変える性感染症を防ぐ術を伝えます。

未来の子どもたちのために、やりたいことが見つかった頃。自分の子どもを授かることについても、ようやく真剣に取り組もうと思った頃のことでした。

Yokoさん提供

再発した子宮頸がんを治療中のYokoさん

32歳、結婚して起業した矢先、子宮頸がんが発覚。33歳の時には手術で子宮を取り出しました。

そして、37歳になった現在、私は再発した子宮頸がんの治療を続けています。この病気は私の健康だけでなく、パートナーとの性生活も大きく変えることになりました。

比較的早いステージでがんが見つかったにもかかわらず、思い描いていた子どものいる家庭は築けなくなってしまいました。

妊活中に子宮頸がんがわかり、性生活も避けるように

パートナーとは11年の付き合いで、2015年に結婚しました。妊娠率が下がる35歳までには子どもがほしいと思い、妊活をはじめたところ性交痛あり、不正出血がありました。

クリニックを受診すると、綿棒を使った細胞診で、がんではないけれども細胞に異常がある「異形成」という診断が2回続きました。

ところが、原因解明のために大学病院で組織を採取して検査をしたところ、子宮頸がんと診断されたのです。

子宮頸がんは主にセックスなど性的な接触でうつる「ヒトパピローマウイルス(H P V)」が原因で起こるがんです。感染してもほとんどは自分の免疫の力で排除されますが、ごく一部がそのまま感染し続け、前がん病変である「異形成」から浸潤がんへと進行します。

HPVの有無を調べる検査をしたところ、特にがんになりやすい16型を検出しました。

ところで、HPVは子宮頸がんだけの原因になるわけではなく、男性がかかる中咽頭がんや肛門がんなどのリスクでもあります。

「性生活のあるパートナーも感染しているのでは?」

そのことを知って、パートナーもHPV検査をしましたが、幸いに陰性でした。

でも、自分との性生活でパートナーにも感染リスクがあると思い、私は性生活を避け始めました。

がん治療が妊娠・出産にも影響

私の治療は、がんの進行度を調べるための「円錐切除」という子宮頸部の一部だけを切り取る手術を受けることからスタートしました。

Nozomi Shiya / BuzzFeed

初期の場合は子宮頸部の一部を切り取る円錐切除手術が行われる

子宮を残すことができるこの手術さえも、早産や流産のリスクにつながることを知り、当時、妊活中だった私はショックを受けました。

円錐切除の結果、がんは予想よりも大きく広がっており、主治医から子宮全摘しか生きるための選択肢がないと知った時は頭が真っ白になり、その場で泣き崩れました。

子どもが産めなくなる、2度と性生活もできなくなると思いました。

Yokoさん提供

妊活中に子宮頸がんが発覚し、子どもを育てる夢を諦めることになった

その後、性生活をする方法、手術前に体外受精をする方法、子宮がなくとも代理母出産する方法、子宮移植する方法など、様々な情報を医師、家族、友人から教えてもらい、冷静になりました。そして、やっと子宮摘出手術を決意したのです。

がんはリンパ節にも転移しており、再発を防ぐために、手術後に抗がん剤治療も受けました。その副作用で体調も悪く、妊娠の機会を失った事実を受け入れるのに、しばらく時間がかかりました。

それでも手術では卵巣を残してもらい、自分の卵子で子どもを授かる希望は持ち続けていました。

35歳で再発、子育てを諦め、性生活を辞める

治療も終え、気持ちを切り替えて特別養子縁組の説明会に参加していた35歳の時、再発が見つかりました。

3ヶ月に一度のCT検査で、骨盤内に複数のがんが見つかったのです。

放射線治療により放射線が卵巣に当たると、卵巣機能がなくなります。私の卵子によって子どもを授かる可能性を失いたくなくて、卵巣を凍結保存する「卵巣バンク」を運営している不妊治療専門医に相談しました。

しかし、腹腔鏡下手術の専門医から、卵巣を取り出す手術によって、がんを腹膜内に広げてしまう可能性があると指摘されて卵巣摘出を断念することになりました。

Yokoさん提供

鼠径部に再発したがんは、下腹部や陰部の皮膚にも転移している

その後も、がんは鼠径部に再発し、下腹部から陰部の皮膚へも転移しました。皮膚転移は見た目も悪く、触れられれば痛みます。

私は、完全に性生活を止めることにしました。

医者でもない、教育者でもない、生殖医療と細菌学の研究者である私が、自分の体験から、みなさんに伝えたいことがあります。

子どもを授かるための性行為によって、逆に子どもが授かりにくい病気にかかったり、パートナーに病気をもたらしたり、親から子どもに感染が広がって子どもを危険にさらす可能性があるということです。

自分が望まぬ「加害者」にならないためにも、受け身の性行為をしないということ、性行為によって引き起こされる病気とその予防方法について知っておいてほしいのです。以下にその一部を紹介します。

性行為は誰のため?自分で意思決定をすること

好きと言ってくれた人、自分を好きな人、遊び相手の人、結婚を決めた人と性行為をするとき、自分はどんな気持ちなのか、自分の心の中を覗いてみましょう。

  • みんながしているから自分も経験したい
  • 自分が可愛くないから、相手を選べる立場にない
  • 雰囲気が良ければ、セックスの同意を得なくてもいい
  • 避妊してと言ったら嫌われる

そんな考えが脳裏をよぎるかもしれません。

受け身な性行為をしていると、その場の雰囲気に流されているのが「楽」だったり、「避妊しなくても大丈夫」という言葉を信じたり、危険な状況で性行為をしているということに気が付かなかったりすることが多くあります。

Yokoさん提供

治療の影響でリンパ液が滞るリンパ浮腫にも悩まされている

自分の意思でする性行為とは何でしょう?

子どもができたらどうするのか、互いに病気をうつすことはないか、相手と自分を守るために何ができるのかを考え、対策をとり、自分にも同じ対策をしてくれる人と性行為をすることです。

自分で意思決定をするためには、偏っていない正しい知識が必要です。性行為の利益と不利益、喜ばしいことも怖いことも、バランスよく基礎知識としてもっていることが非常に重要となってきます。

もし知識がないなら、「今の段階では決められない」とはっきり言うことで、流されることはなくなるでしょう。

誰もが関係する 性感染症とは?

人から人に感染する性感染症のうち、この記事では、将来赤ちゃんがほしいと思ったときにトラブルとなる、生殖機能に障害を与える病気や、親子の感染が怖い病気を紹介します。

★HIV

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、主に性的な接触により、血液や体液の接触を介して感染します。無症状のまま免疫の働きが少しずつ低下していき、健康なときにはかかりにくい感染症やがんなど23の病気にかかるとAIDS(エイズ)と診断されます。

HIVは出産時に母から子に感染するため、妊婦は必ずHIV検査を受けます。妊娠を継続するかどうか、出産の方法や、自分と子供の治療方針を医師と相談して決める必要がでてきます。

2019 年に報告された HIV 感染者は 903 件、 AIDS 患者は 333 件であり、HIV 感染者と AIDS 患者を合わせた新規報告数は 1236 件です。

★クラミジア・淋菌

クラミジアや淋菌は細菌で、男性では尿道や精巣に感染すると、尿道炎および精巣上体炎を引き起こします。女性では感染が腟内から子宮~卵管~骨盤内へと広がり、卵管炎や骨盤腹膜炎などを起こして、卵管周囲の臓器と臓器がくっついてしまうと不妊の一因となります。

また、妊婦の感染は新生児の「クラミジア産道感染」の原因となり、新生児肺炎や結膜炎を起こす可能性があります。

男性は感染すると排尿痛、 尿道の不快感、かゆみなどの自覚症状がでますが、女性では自覚症状が乏しい場合が多いのも特徴です。生殖医療の専門病院によっては、初診時に必ずクラミジア検査を実施することがあります。

2019年に報告されたクラミジアの感染者数は約27000人と、過去10年間で最も増えています。20代前半では性交経験のある女性の5~10人に1人は感染していると推測されています。

★梅毒

梅毒は、主に性的な接触によってうつる感染症です。梅毒トレポネーマという病原菌が原因で、感染すると全身に様々な症状が出ます。

2019年には6639人と10年前の10倍以上に急増しており、近年、10代、20代の若い女性にも多いことが話題となっています。

早期の薬物治療で完治が可能です。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、脳や心臓に重い合併症を起こすことがあります。時に無症状になりながら進行するため、途中で治療をやめてしまわないようにすることが大事です。

★HPV

HPV(ヒトパピローマウイルス)は、ヒトの上皮細胞に侵入し、子宮頸がん、喉頭がん、中咽頭がんなどの6種類のがんの原因となるウイルスです。潜伏期間には自覚症状がなく、症状が出てきた時にはもうがんを発症していることが多いです。

HPVの持続感染者数は、日本で推定100万人いるといわれ、持続感染によって前がん病変の「異形成」となっている患者数は推定10万人といわれています。前がん病変を経て、子宮頸がんを発症する女性は年間1万人います。

治療は、手術、化学療法、放射線治療がメインで、初期のがんであっても、子宮の一部を手術で取り出すことにより、将来、妊娠したときの早産リスクが高くなります。子宮摘出により妊娠できなくなる可能性もあります。放射線治療は、卵巣機能にダメージを与え、卵子を作れなくしてしまうことがあります。

HPVはHPVワクチンを接種することで感染を防ぐことができます。日本では小学校6年生から高校1年生の女子は無料で接種できる定期接種となっています。男性への接種も昨年承認され、定期接種となることが願われています。

最近は、膣内の微生物群が健康に保たれているかどうかで、がんになりやすいHPVに感染しやすくなるかが左右されそうだという話題が注目されています。

ウイルスや細菌の感染から自分を守る方法

自転車は、誰でも簡単に乗れて、道路交通法を知らなくても運転できるため、とても事故を起こしやすい移動手段です。学校では、自転車が巻き込まれやすい様々な危険や、事故の対処の仕方を必要最低限教え、あとは、個人の自己判断能力や意思決定に委ねます。

性行為も同じです。現代社会は、性的な興奮を引き起こす情報を目にしやすく、手軽に性行為を行える環境があります。

誰もが、性感染症に巻き込まれる可能性が高いにも関わらず、危険を知らず、正しい運転の仕方を習っていません。

性行為も自転車と同じで、安全に運転することで、事故に巻き込まれる確率を下げることができます。

「怖い病気のリスクがあるから性行為をしない」という極端なことをしなくてよいのです。

性行為をするのは、全ての生き物にとって当たり前のことです。その上で、どう自分の身を守るかが課題でした。人類もずっとその課題に悩み、考えてきていますので、解決する様々な製品や法律が生まれてきたのです。

ここでは性行為感染症を予防できる一部の方法を紹介します

  • 一度でも性行為をしたことがあれば、HIVとHPVに感染していないかどうかを調べる
  • コンドームなどの避妊具を使用し、粘膜の直接的接触を減らし、菌やウイルスの感染リスクを減らす
  • ワクチン接種により感染リスクを限りなくゼロに減らす
  • 男性の生殖器を清潔に保つ
  • 喫煙を辞めることにより発がんリスクを減らす

性行為感染症のこと、感染症からの守り方を知ることで、性行為に関する行動を自分で決める手助けになったでしょうか。

相手と話をすることは、もっと難しいかもしれません。

問題なのは、相手は自分と同じ知識の上に立っていないかもしれないということです。

まずは、2人お互いがもっている知識を共有する時間をしっかりととり、性感染症で一生残る障害のリスクがあるのだとお話しましょう。

二人のつながりや雰囲気を壊さずに、解決できる方法がたくさんあります。

【参考】性感染症のいろいろ

【Yoko(ようこ)】子宮頸がん当事者

医学部研究員を経て、検査会社社員に。2017年33歳のときに子宮頸がんが発覚し、ツイッターでは「なんかのはかせ(@piyoko_hakase)」名義でつぶやいている。