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2018年6月28日

生理中の水泳の授業 産婦人科医として考えた

医学的に可能でも、とにかく強制は厳禁です

私は普段、「タビトラ」名義でツイッターを楽しんでいます。

先日、こんなツイートをしたら、大変大きな反響がありました。

娘の学校、生理中でもタンポンいれてプールに入ることが強制されてて、産婦人科医としてどう思いますかってきかれたんだけど、使用する生理用品を強制的に決められたり代替の講義(スポーツ理論を学ぶとかいくらでもやり方あんだろ)を用意しないあたり医者ってより人間として日本の体育教育の狂気を感

タビトラ

「娘が学校の水泳の授業で、月経中であってもタンポンを使用してプールに入るよう強制されているのですが、産婦人科医としてどう思うか」

診察中にこんなことをお母さんの患者さんに聞かれ、カッとなってツイートしたものです。なぜこんなことが今の時代にも起きているのでしょうか? そして、生理中の水泳はどう考えるべきなのでしょうか?

Teppei Ogawa / Getty Images

生理だからと言って水泳を禁止する必要はないですが、強制されるべきでもありません

私の背景 辛いのは運動ではなく、体育の授業でした

私は学校の体育の授業が嫌いでした。運動することは好きなのです。この矛盾、わかってもらえる人は多いと思います。

今は違うのかもしれませんが、現在、中年の私が学生だった頃、体育の授業で、運動に関する筋肉や栄養の話、球技を行うにあたっての戦略的な考え方の指導、そういうものを一切習った記憶がありません。

なんでそういうことを教えずにいきなり実技なんでしょう。身体壊しますよ。

体育のできない者は嘲笑されることも多かったですし、スキルの向上より、先生への絶対服従、意味不明な規則の遵守、連帯責任といったことが重んじられ、屈辱とハラスメントの場となっていました。

そんな体育および学校教育にネガティブな感情を持っているという背景が私にはあることを告白しておきます。そして、私は産婦人科医です。

医学的には可能 でも絶対に強制されるべきではない

最初のツイートについての私の考えをまず言っておきますと、こうなります。

  • 生理用品を使用する時に何を選ぶかは個人の自由であって強制されるべきではない
  • 月経中に泳ぐことは可能だが、経血量など体調次第で水中に入るかどうかは教師ではなく個人か保護者が選択できるようにするべき
  • 月経中で体育への実技参加ができなかったとして、他の実技を課すにしても罰則的なものであってはいけないし、生徒の成績に不利益があってはならない


日本産科婦人科学会の公式見解はどうなのでしょう?

同学会の小児・思春期問題委員会は1989年に「月経期間中のスポーツ活動に関する指針」で、まず月経期間中のスポーツ活動全般についてこう述べています。

基本的には、本人の自由意志が大切であり、とくに禁止する必要はないと考えられる。本人の自由意志で行われる場合には問題は少ないが、画一的に強制して行わせることには問題がある。また逆に、自由意志を尊重し過ぎて、ただ月経期間中であるという理由のみで絶対行わないということにも問題があり、健康管理の面(月経痛対策など)からも、ある程度のスポーツ活動を月経期間中であっても、むしろ行うことが望ましいと思われる。

その上で、水泳については、このような提言を行っています。

  • 小学生では、精神的にも身体的にも、なお未熟であることから、強制的に行わせるべきではないと考えられる。
  • 中学生以上では、「生理用品」を使用しない状態での水泳が望ましい。すなわち、プール外での経血の流出との関係もあるので、経血量が減少してから行う方が良いと思われる。なお、経血の流出量がある程度以上ある状態で水泳を行う場合には、内装具の使用が必要となるが、この場合には水泳時に限っての使用に制限するべきである(高校生以上を原則とする)。


「内装具」とはタンポンのことですが、タンポンの使用についてもこの提言は触れています。

思春期少女の場合には、内性器の発育状態、清潔に取り扱うことの困難さなどから、中学生以下ではタンポンの使用は避けるべきであり、とくに小学生では禁止するべきである。

まとめると、医学的にみて禁止する必要はないが、強制するべきではない、タンポンは中学生以下では避けるべきで、水泳をするにしても経血量が減ってからにした方が良いだろう、ということですね。

生理中のタンポン、水泳強制、許されるべきではない

さて、最初のツイートの件に戻ります。

私は産婦人科医として、性行為をしたことのない方も診療することがありますし、他人にプライベートゾーンを見せることや腟の中に何かを自分で挿れることに恐怖や不安を感じる方、やり方がわからず非常に抵抗感を覚える方も診ています。

私自身、ナプキンはつけ方を習ったものの、タンポンについては習わず、大人になってから使いました。使い始めは腟の中途半端な場所に挿入してしまってむちゃくちゃ違和感があったり、ヒモも経血で汚れたりするわで、今ではほとんど使っていません。

月経時に使用するものとして、ナプキン、タンポン、月経カップなどがありますが、実体験からも、個人の好みで使えば良いと思います。

Emapoket / Getty Images

ナプキンでもタンポンでも、生理用品は自分の好みで選べばよく、強制されるべきものではない


で、タンポンの強制についてです。

前述のように挿入するのに不安や恐怖を伴う人もいるになぜ授業で強制するのでしょうか? これがまず、私の怒りポイントでした。

タンポンを挿れられない人は、直接水着を着用することになるのでしょう。

体育の授業でジムや部活と異なるのは、教師の話をプールサイドで座って聴く場面など、水着のままで水中にはいない時間があるということです。水中にいれば、水圧で経血は漏れないかもしれませんが、水中から外に出た時間は経血が漏れて、周囲からわかってしまう可能性があります。

したたり落ちた経血をからかわれたり、その話が別のクラスまで噂話になってしまったりという事例も聞きました。

これは、思春期の女の子にとって「つらみ」以外のなにものでもないのではないでしょうか。

自分の意思を尊重されない教育の弊害

経血が気にならない場合で、体調に問題がなければ医学的に泳ぐことは可能です。泳ぎたい人は泳げばよいのです。感染症のリスクが上昇することもほとんどないでしょう。生理だからと言って水泳を一律に禁止するのはそれはそれで問題でしょう。

ただし、繰り返しますが、医学的に可能だと言っても強制になってはなりません。本人が水泳を避けたいならば、座学など別の選択肢があるべきです。

泳がないと単位を与えられない、あるいはレポートでも減点にはなる、炎天下での持久走が代替授業など、罰則が与えられるのは論外ではないでしょうか。

部活で水泳をしているなどといった事情がなければ、限られた回数のプール授業を逃したところでその生徒の人生にどれだけのデメリットがあるのでしょうか。

むしろ、自己の体調管理を尊重されず、月経中に苦痛なことを強制されるということのほうが将来的に悪影響なのではないでしょうか。これが私の怒りポイントその2であります。

日本の体育の授業は、いい加減、全員横並びで同じことをさせて、できない者に罰を与えるというやり方を卒業した方がいい。また、強制されている事例があれば、問題化していくことや、そのような学校がどれくらいあるのか明らかにすることが必要なのではないかと思います。

佐藤ナツ 産婦人科専門医

東京都出身。200○年、国立大学医学部卒。現在、総合病院産婦人科と総合周産期母子医療センターで勤務中。ツイッターでは「タビトラ」名義でつぶやいている。