京都の老舗茶筒屋さんとパナソニックが作ったスピーカー


全てが異例づくしのスピーカー
社内規則外のものづくり

「今この世代だけではなく、常に次を考えている」


パナソニックと京都の老舗茶筒屋が共同開発したワイヤレススピーカー「響筒(きょうづつ)」が話題です。100台限定で30万円。利益度外視で進めたプロジェクト全容を聞きました
パナソニックは、京都の手作り茶筒の老舗「開化堂」と共同開発したワイヤレススピーカー「響筒(きょうづつ)」を11月8日より発売します。開化堂店舗にて、100台限定で販売され、価格は税抜きで30万円です。
「響筒(きょうづつ)」は、一つひとつ手作りされた真鍮製の茶筒の中にスピーカーを搭載したもので、これまでにない全く新しい製品となります。
開化堂の茶筒の特徴である密閉製を生かして、蓋の開閉の瞬間と音のON/OFFを連動させることで、音の立ち上がりやフェードアウトを五感で感じることができます。
同プロジェクトは4年前からパナソニックのデザイナーが京都の伝統工芸の継承者と進めてきた「Kyoto KADEN Lab.」の一環で、製品化されたものです。
「創業者の松下幸之助が残した言葉の一つに”伝統工芸は日本のものづくりの原点である”というものがある。そこから、豊かさとは何かもう一度考えてみようというところからスタートした。
正直、当初は商品を作ろうとは思っていなかったが、響筒を様々な展示会に出したところ、思った以上に反応があった」(パナソニック アプライアン社 デザインセンター クリエィティブディレクター 中川 仁さん)
パナソニック アプライアンス社オーディオ総括の西川佳宏さんは、「最初に製品のことを聞いた時、正直無理だと思った」と語ります。
大手企業であるパナソニックはユーザーの安全を第一に考えるため、様々な社内規則が細かく決められています。伝統工芸と家電の融合という観点で製品作りを進めた場合、その規則に合わないケースが多々あったといいます。
「パナソニックの家電製品で、天然の牛革を使っているものはありません。しかし、今回どうしても底面に皮を使いたいということで、いろんな書類を書きまくりました(笑)」
また、響筒には出荷時からオリジナル音源がインストールされていますが、これもスピーカーとしては異例のこと。
「初めて蓋を開けた瞬間から音を楽しめるオルゴールのような存在を目指した」(西川さん)と言います。
開化堂の茶筒の大きな特徴が、経年劣化による色や感触の変化を楽しめること。140年の歴史がある伝統工芸ならではの味わいを感じることができます。
開化堂の代表取締役社長 八木隆裕さんは、「普通の茶筒を作るよりも10倍以上の時間と手間がかかった。最終的にはスピーカーをセットする宇都宮のパナソニック工場に親父と一緒に出向き、3時間かけて調整をした」と話します。
「今回の仕事は、いますぐの反応とか利益だけではなくて、開化堂のこの先、次の世代のことを考えたら絶対にプラスになることだと思っている」(八木さん)