「漁師のモーニングコール」を仕掛けた漁師集団に聞く 目指すは新3K「カッコイイ、稼げる、革新的」

    東北の若い漁師はたちは前を向いている

    東北の漁師集団フィッシャーマン・ジャパンが仕掛けた、“漁師が朝起こしてくれる”モーニングコールサービス「FISHERMAN CALL」が話題になっている。

    Fisherman japan / Via youtube.com

    朝に強い漁師が、朝が苦手な若者の早起きを手助けすることで、両者の交流を少しでも増やそうという試み。しかし、なぜ「漁師と若者」なのだろうか。

    FISHERMAN CALLの企画者で、フィッシャーマン・ジャパン事務局長の長谷川琢也さんに聞いた。

    「僕、誕生日が3月11日なんです」

    長谷川さん、じつは漁師ではなく、ヤフー社員である。もともとはYahoo!ショッピングなどのサービス企画を手がけていた。

    narumi / BuzzFeed

    フィッシャーマン・ジャパン事務局長の長谷川琢也さん

    だが3.11で、震災と誕生日が重なったことに使命感をおぼえた。同社の企業理念は「課題解決エンジン」。ならば被災地の課題解決もすべきと、ヤフー東北支社の設立を社長に訴えた。

    2012年7月、石巻に支社を開設。宮坂学社長からはこう言われた。

    「これはCSRではない。事業部だ。ちゃんと継続的に事業を成功させてこい。IT企業代表として黒字になるまで帰るな」

    「で、まだ帰れてない(笑)」と長谷川さん。

    まずは東北の拠点「ヤフー石巻ベース」を作り上げた。地域の人が集まって共創する場所。「おばちゃんとか子どもが自由に入ってくるんです」。ここを拠点にさまざまな復興支援事業に挑戦してきた。

    「以前はYahoo!ショッピングで、いろいろな商品を、誰が作っているかも知らず、とにかく売ることだけを考えていた。でも東北で一次生産の尊さと豊かさを学んだ。食べ物を作ってもらっている、生かされていると教えてもらった」

    いまの長谷川さんの口癖は「安く売ってはいけない」。これまでの、とにかく売ろうという立場から、値下げを止める立場に変わった。地方の人ほど土地の生産物の価値に気づいていないという。たとえば1月〜3月の「春採れわかめ」。

    「ネットで売れないのでは」と難色を示すショッピング担当者を説得し、ヤフーのトップページに「シーベジタブル」という名前で掲載した。数百万円の売上があった。

    漁師の新3K「カッコイイ、稼げる、革新的」

    しかし復興はまだ途上だ。長谷川さんは漁師と接していて、ショックだった言葉があるという。

    「漁師の親が自分の子どもに『たくさん勉強して自分の仕事をつぐな』と言うんですね。まだまだ苦労している」

    漁師の数は減る一方だ。農林水産省の統計によれば1992年には32万人いた漁師が、2016年は16万人へと半減。他国からの輸入に負けつつあるのが現状だという。

    そこで2014年、地元の若い漁師と一緒にフィッシャーマン・ジャパンを立ち上げた。水産業における新3K「カッコイイ、稼げる、革新的」が活動理念だ。

    「かっこよくて稼げる漁師になって、次の世代に漁業を伝えたい」。そんな若者が集まった。最初は東京で試食会を開催したり、プロモーション活動を行ったりした。いまや事業は拡大し、漁業の担い手育成事業からBtoB事業まで幅広く展開する。

    たとえば漁業を体験したい人が一緒に働いて暮らすシェアハウスを作った。7箇所あり、そこで漁師が暮らしたり、体験にきた人が泊まったりしている。研修プログラムを経て、すでに漁師になった人もいる。

    話題になっているFISHERMAN CALLは、そうした若者と漁師の交流や出会いを増やすために、「まず若者の役に立とう」という考えから出てきた。漁師に何ができるか? 若者は朝が苦手、漁師は得意だ。

    そこで世界初の漁師が作ったモーニングコールサービスが生まれた。サービスローンチ後、メディアからの問い合わせが殺到し、いまやスペインやタイなど海外でも話題になっているそうだ。

    好きな漁師を選んで起こしてもらえるのが面白いところだが、東京都・中野にあるフィッシャーマン・ジャパン直営の居酒屋「魚谷屋」なら、実際にこれらの漁師に会えることもある。

    店頭には「本日漁師出勤日」の文字

    narumi / BuzzFeed

    ここは漁師に会える居酒屋。毎月1回イベントを実施しており、食と漁業で都市とつなぐ役割を果たしている。

    明日は我々直営の魚谷屋 @uotaniya_FJM にてマスノスケナイト!普段食べることのなかなかできない高級魚が味わえるチャンス。ぜひご予約を!あの神経〆師の大森も参戦します

    長谷川さんはこう語る。

    「白黒だった漁業のイメージをカラフルなものにして、仲間を増やしたいと若い漁師は言っています。地方でがんばる若者たちの想いを1つでも多く形にしていきたい」

    フィッシャーマン・ジャパンは始まったばかり。一緒に漁師の課題、地域の課題に立ち向かう仲間を募集中だそうだ。

    情報開示

    BuzzFeed Japanは、米BuzzFeedとYahoo! JAPANが出資する合弁会社です。